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2008年11月15日 (土)

『アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』

アチコチ、イロイロとあって意外なほど時間がかかってしまったが、ようやく刊行。

『アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』

アップルを創ったもう一人のスティーブ、スティーブ・ウォズニアックの自伝。

スティーブ・ウォズニアック、通称ウォズは、現場が好きで好きでしかたがないという根っからのエンジニアである。人前に出るのがあまり得意でないこともあるからか、パソコン創生期の有名人はほとんど伝記が出版されているのにウォズだけは出ていなかった。その彼が自らの過去を語るという形式で書かれたのが本書。ウォズが口述し、それをライターさんがまとめるという形式で書かれているし、書籍にまとめるにあたって語りの雰囲気を色濃く残した形でまとめられている。そのため、良くも悪くもウォズの昔語りとなっている。

記憶を呼び起こしての昔語りなので、同じ話があっちこっちに出てきたり、前のほうと後ろのほうで矛盾があったり、語りである分、内容的な密度が薄くなりがちであったりと、いろいろ問題があると言えばある。そのため、米国アマゾンの書評なども賛否両論だったりする。

私は、これはこれでアリだと思う。記憶にあいまいな部分があったりするところも含め、ウォズという人物がよくわかるからだ。ジョークといたずらが大好きな明るいオタクであるとともに、とても優秀なエンジニア。優秀であることを鼻にかけているわけではなく、客観的な認識として自分が優秀であると認めている。そんな人物、かな。

アップル創業者の片割れということでビジネス書的なイメージを持つ人が多いかもしれないが、そう思って本書を手にすると失望すると思う。本書は、あくまで「ウォズ本」である。ウォズとは、伝説のエンジニアとはどんな人物なのか。なぜ、あんなものを作ることができたのか。ウォズに代表される根っからのエンジニアとはどういう人種なのか。そんなあたりが本書のテーマだろう。

まあ、難しいことを考えず、ウォズの語りを楽しんでいただくのが一番かと。

翻訳という面では、今回、「ウォズが自分に語りかけてくれている気がする」ように訳すことを目標とした。気さくなウォズが語りかけてくるのだから、あまりきっちりした言葉にするのは変。そのため、あちこち、わざと崩した日本語にしてあったりする。やりすぎると単に変な日本語になってしまうので崩すのは怖いのだが、ここを逃げてしまうと本書のおもしろみが半減すると思ったので。

一般によく知られているほうのスティーブ、スティーブ・ジョブズの伝記(『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』)と読み比べると人物像の違いは驚くばかりだ。この二人がどうしてウマがあったのだろうと思うと同時に、ここまで違う二人だからこそ成功したのかもとも思う。

■追記

ウェブ上に書評を書いてくださっている方々がおられます。見つけたものについてリンクをはっておきます。私が評するとどうしてもひいき目になってしまうので、本の出来については第三者の書評を見ていただくのがいいかと思います。

今のところ、好意的な書評が多く、訳者としてはホッとしています。

紀伊國屋書評空間
ビジネスブックマラソン
takihiroの日記
「モノが好き」2

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コメント

原書が出たころ、ウォズはNPRの番組にいくつか出演していて、それを私は自分のブログの以下のエントリーで紹介しました。
http://d.hatena.ne.jp/himazublog/20061021/1161397202
ご参考まで。

投稿: himazu | 2008年11月16日 (日) 09時16分

ウォズの発言のうち今津さんが紹介されている部分って、私も訳者あとがきで取りあげたあたりだったりします。やっぱり、このあたりがウォズらしいところですよね。

それにしても……ウォズのような人生、いいなぁとあこがれます。何をしても幸せですから。

投稿: Buckeye | 2008年11月17日 (月) 11時08分

 いつも楽しみに読ませていただいています。

 が、最近は少し自慢臭が鼻に付くのですが……。実力は誰もが認めるところ。もう少し「どうだ」という気持ちを抑えて書いていただくと、私のような下級翻訳者にも好感が持てる、というか勉強になります。

 勝手なことを書いてすみません。が、そういう印象を受けるんですよね。

投稿: sugomori | 2009年2月 1日 (日) 21時55分

そうですか……それはよくないですね。気をつけます。

このサイトは「こうすべき」という話ばかりなので、わざとある程度「えらそう」に書くようにしているのですが、自慢ととられてしまう書き方になるのはよくありません。さじ加減が難しい話ではあるので、もう少し筆力を強化しないといけないんでしょうね。

投稿: Buckeye | 2009年2月 2日 (月) 16時14分

こんにちは。
こちらのブログでは初めてですね。(笑
本は、ずいぶん前に完読していたのですが・・ようやく「くまぶろ」に記事を書きました。
トラックバックさせていただきます。

投稿: くまぱぱ | 2009年2月23日 (月) 11時11分

書評のアップ、ありがとうございますm(_ _)m

あっちのブログには何度も書いていただいてますけど、たしかに、こっちのブログでは初めまして、ですね。ま、こっちは仕事関係の話ばかりで、普通の人が読むものじゃありませんからねぇ。

連休の例のイベント、今年もやられますよね? タイミングが合うことを祈りつつ、楽しみにしています。

投稿: Buckeye | 2009年2月23日 (月) 12時20分

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