翻訳の業界における自分の位置というものを考えるとき、その評価軸はひとつにならない。してはならないと言ってもいい。
「翻訳業界なんて業界は存在しない。さまざまな業界において翻訳の需要が発生しているだけ」という考え方もあるが、それはとりあえず、横に置いておく。
一つの評価軸で比べるということは、山にたとえれば、一つの大きな山(いわゆる独立峰)のどのあたりにいるのかを考えるということになる。しかし、現実の仕事の世界は、数え切れないほどのピークがある山脈というか、むしろ平野に点在する山脈と小山と丘と……みたいなものだと思う。自分がいるところが周りよりも少し盛り上がっていれば、その小山においては第一人者として外部からそれなりの評価をされるだろうし、その部分に需要がある限り、食いっぱぐれる心配がない。自分がいるところよりもはるかに高いピークが自分から少し離れたところにあっても、自分に影響が出ないという意味では関係がない。自分の周りというのは、普段の仕事でいえば、自分が登録している翻訳会社の自分が登録している分野、と考えていいだろう。
翻訳者として、その中で何ができるか、すべきかを考えれば、やはり、薄紙を積むようにして自分の力を高めていくことだと思う。自分がいる小山を高くしておけば、海面が上がってきたとき(不況など)、水没せずにすむ可能性が高くなるからだ。
結局、どこにいようと、自分を取りまく現状がどうであろうと、薄紙を積んでいくのが一番大事だと私は思うし、それしかやれることはないとも思う。そして、そういう意味では、翻訳業界が独立峰であっても山脈であっても関係ないようにも思う。
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