ワード数のカウント
単価設定が原文を基準としている場合でも訳文を基準としている場合でも、文字数・ワード数はカウントしなければならない。その場合、一般的にはWordのカウント機能を使うことが多いようだ。
英語なら「単語数」、日本語なら「全角文字+半角カタカナの数」+「半角英数の単語数」あたりを使うようだが、どの数字を採用するのかは少しゆれがあるようだ。
しかし、このWordのカウント機能、人間の感覚よりも少ないカウント結果が出たりすることは意外に知られていない。
以下、私の手元にあるWordによるカウント結果を示す。Vista登場後に出た最新のWordは持っていないので、そちらでどうなっているかの確認はしていない。
●ケースバイケースでどちらが正しいとは言えないもの
- Electrical/Electronic architecture → 2ワード(3ワードにならない)
- partnering (who/when/how) to design → 4ワード(6ワードにならない)
- The XXX includes a battery-backed time-of-day module → 7ワード(10ワードにならない)
- With microcomputer-controlled kilowatt-hour meters → 4ワード(6ワードにならない)
- a you-can't-get-fired-for-saying-no attitude might prevail → 5ワード(11ワードにならない)
要するに、"/"や"-"で結ばれたものは1ワードと数える仕様になっているのだ。
もちろん"9/11"などのように1ワードと数えていいと思うものもあるし、行末ハイフネーションなんかは"-"で結ばれていても1ワードと数えるべきなので、"/"や"-"で結ばれたものを必ず複数ワードと数えることが正しいわけではない。そういう意味では、どっちでもいいとする考え方もある。
いずれにせよ、単価とカウント方法がセットとなって取引条件が決まるのだから、そういうカウント方法なんだと理解した上で条件に合意するならそれでいいとも言える。
問題は……"/"や"-"で結ばれていても上のような例では別ワードと数えるはずだとみんな思いこんでいる点。カタログやデバイス技術資料などで、機能が10も20も、えんえん、"/"で区切られて並んでいたりすることがあり、お金を払うほうももらうほうも、その分、料金に入っていると思っているのに、実は入っていない……それはちょっとあんまりかなと思う。実際問題、それで消費税分の5%くらいカウントがずれる原稿もあるからだ。そういうこともあり、私は、自作して公開しているSimplyTermsに、"/"や"-"で結ばれているとき別単語としてカウントする機能を実装している(Wordとほぼ互換のカウントもできる)。
●どう考えてもカウントすべきところがカウントされないもの
テキストボックス、脚注(ページ末の脚注も文末脚注も)などは翻訳対象となることが多いが、Wordのカウント機能において、ここはカウント対象とならない。Excel表、グラフなどが埋めこまれており、それが翻訳対象となることもそれなりにあるが、こちらもカウントされない。
カウント結果が多いとか少ないとかではない。カウントされないのだ。どんなにたくさんあっても、ゼロ、である。
"/"や"-"の問題は、日本語側でのカウントをベースとする場合には関係がない。しかしテキストボックスなどは、日本語・外国語、どちらでカウントする場合にも影響が出る。
Word上で作業をしているなら、テキストボックスとかExcel表、グラフなどは作業がやりにくいはずだ。その分の割増がないのは、ときどき入るそういう作業をふくめて、えいやぁの平均単価だと思えばいい(というか、単価とはそういうものだ)。でも、そこがカウントされないのは……明らかに間違いだろう。
もちろん、きちんとした翻訳会社なら、このあたりを踏まえてカウントしているはずだ。だが、私は過去、それなりに大きな翻訳会社との取引で先方と自分のカウント結果が大きく食い違い、その原因がテキストボックスだったという経験をしたことがある。要するに、それまでそこはこの問題を知らなかったわけだ。
ソースクライアントと直接、取引をしているなら、ソースクライアント側がこの問題を認識している可能性は限りなくゼロに近いと思った方がいい。
テキストボックスが多い案件を請けたら、一度、確認してみることをお勧めする。
ちなみに、テキストボックスを一つひとつ、選択してはコピーペーストしてカウントするのは手間である。そのため、SimplyTermsでは、テキストボックスや脚注などについて、カウントするかしないかを選択できるようにしてある。
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