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2008年9月22日 (月)

電子辞書の選び方・使い方

イカロス出版『通訳翻訳ジャーナル』に連載された『会社勤めと翻訳者の二足のわらじ変足4段活用 はけば、はくとき、はく、はくと…』の第11回(2001年10月号掲載)、『串刺し名人』である。かなり古い記事だが、CD-ROM辞書を選ぶとき、そのフォーマット(規格)に注意すべきであるなど、今も基本的に変わっていない。

最近は、電池で動く小さな電子辞書が充実しており、たくさんの辞書を搭載しているものがけっこう安い値段で手にはいるようになった。私も持っており、外出時などに活用しているが、プロの翻訳者がふだんの仕事に使うなら、この記事に紹介したようにEPWING規格を中心とした電子辞書をJammingなどの辞書ブラウザでまとめて引く方法がいい。

なお、この記事後の大きな変化として、山岡さんの『経済・金融英和/和英実用辞典』などをEPWING化してJammingで引けるようにするEBStudioというシェアウェアが登場したことを追記しておく。

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 先月、翻訳作業自体は二足も専業も同じと書いた。しかし、少しは違いがあるのだ。二足のわらじでは時間的制約が厳しくなるので、いかに無駄を省いて効率を上げるかが特に重要になる。もちろん、専業の人にとっても効率は高いほうがいいわけだが。
 ポイントはいくつかあるが、今月は、電子辞書をとりあげる。

■電子辞書の効用
 キータッチひとつで、たくさんの辞書を一瞬で引いてくれる……翻訳者には夢のような世界だ。これを実現してくれるのが電子辞書。
 電子辞書の利点は、効率が上がるだけではない。ノートパソコンさえあればどこでも仕事ができるようになることも、特に二足のわらじには大きな利点だ。二足では、すきま時間の活用が重要。出先で空いてしまった20分や30分の時間が活用できるようになるのは大きい。私は、通勤電車の行き帰りと昼休みに翻訳の仕事をしていたが、これができたのは、電子辞書があったからと言える。辞書なしで翻訳するのは不正確になるので避けるべきだし、紙の辞書を何冊も持ち歩くのは不可能だからだ。

■電子辞書の選び方
 電子辞書にはいろいろな規格があり、同じタイトルの電子辞書が複数の規格で出ていることがある。定番と言われる辞書ほど、この傾向が強い。
 規格によって使い勝手が異なるので、買うときには注意して欲しい。問題は、規格によって使える辞書ブラウザが異なることだ。バッテリ駆動のノートパソコンで使うなら、動作が軽くてパソコンへの負担が小さいDDWinやJammingといった辞書ブラウザが使えるものを選んだ方がいい。
 具体的には、EPWING規格の電子辞書が一番のお勧め。電子ブックもDDWinやJammingで使えるが、漢字のインデックスがないので、日英の逆引きをするときにひらがなで引くことになる。日本語は同音異義語が多いため、これはかなり不便だ。システムソフト辞書は、新しいものならJammingで引ける。どのシステムソフト辞書なら引けるのか、Jammingのヘルプを確認してから購入したらいいだろう。
 パソコンにRobowordがプリインストールされているなら、それを使うのもいい。Ver.5からEPWING規格や電子ブックも一緒に引けるようになったからだ。Roboword版しか出ていない辞書を使いたい場合も、こちらを中心にした方がいいだろう。
 独自規格の辞書は、バッテリ駆動のノートパソコンではなるべく使いたくない。たいていは動作が重くてバッテリの消耗が激しくなるからだ。
 ただし、必携の辞書が独自規格であるときは仕方がない。たとえば、『経済・金融英和/和英実用辞典』(山岡洋一編、日経BP)はDTONICという規格を使っている。辞書に添付されてくる辞書引きソフトはとても重いが、この辞書は経済や金融の翻訳をする人なら必携。あきらめて使うほかないだろう。

■電子辞書のインストール
 電子辞書をハードディスクに搭載するのは簡単。EPWINGや電子ブック規格の辞書なら、ハードディスク上にフォルダを作ってまるごとコピーすればいい。たとえば、「Dictionaries」というフォルダの下に「RR+」、「Unno」、「McGraw」というフォルダを作る。この「RR+」には研究社の『リーダーズ+リーダーズプラス』を、「Unno」には日外アソシエーツの『ビジネス/技術実用英語大辞典』(通称、海野さんの辞書)を、「McGraw」にはマグローヒルの『科学技術用語大辞典』をコピーする。基本的には、Catalogsファイルがあるフォルダの内容をすべてコピーすればいい。よくわからなければ、CD-ROMの内容を全部コピーしてしまってもかまわない。この場合、使わないプログラムがコピーされてしまうが、最近はノートパソコンでも大容量のハードディスクを搭載しているので、問題はまずない。コピーが終わったら、DDWinやJammingのヘルプを参照しながら、これらのソフトで辞書が引けるように設定する。
 独自規格の辞書は、ハードディスクにインストールして使うものとCD-ROMがないと使えないものがある。前者は、CD-ROM付属の説明に従ってインストールすればいい。後者は、仮想CD-ROMソフトを使って仮想化した上で仮想CD-ROMからインストールすると、CD-ROMドライブがなくても使えるようになる。
 やり方がよくわからなかったり、やってみたらうまくいかなかった場合には、翻訳フォーラムなどで詳しい人に聞いたほうがいいだろう。

■電子辞書の引き方
 ベーシックな引き方は、辞書ブラウザを立ち上げておき、その検索窓に調べたい単語を入力するという方法だ。1回の入力だけで、たくさんの辞書を一度に検索してくれる。
 さらに便利なのがマクロという簡単なプログラムを使う方法だ。原文が電子ファイルになっていて、秀丸エディタやMS-Wordを使って上書き形式で翻訳を進めている場合なら、引きたい単語を選択して、辞書引マクロを割り当てたキーをたたくだけで、DDWinやJammingが起動し、その単語を引いてくれる。なお、このようなマクロは、翻訳フォーラムなどのウェブサイトで公開されている。
 キータッチひとつで複数の辞書が引ける……この環境を手にすると、もう、紙の辞書には戻れない。この便利な環境が使いたいというのも、私が、原稿が紙しかない場合にスキャナとOCRを使って翻訳原稿を電子データ化している理由のひとつだ。

■辞書と翻訳
 このように便利な環境で翻訳の仕事をしていると、ものすごい回数、辞書を引くことになる。ちょっとでも不安に思ったら辞書を引く。知ってるつもりの単語でも、なんとなくしっくりこない気がしたら辞書を引く。辞書引きに手間がかからないので、念のために辞書を引いて確認することが苦にならないわけである。
 辞書を引いたら定番辞書の内容をざっと読む。リーダーズランダムハウスといったいわゆる定番辞書と、翻訳者にとっての定番辞書である海野さんの辞書は、分野に関わらず、とりあえず読んでおく。次に、当該分野に関係のありそうな専門系の辞書をざっと見ていく。これだけのことを紙の辞書でやろうとしたら大変だが、電子辞書なら簡単である。串刺し検索の結果、いろいろな辞書の内容が並んで表示されるからだ。
 辞書を使うときのポイントをひとつ。辞書に書かれている内容を優先するケースと、辞書は参考にとどめ自分の頭で訳語を考えるケースを明確に区別することが大事だ。専門用語や固有名詞は、定番辞書やその業界における表記が優先。自分としては好まない用語だったとしても、それは辞書などの記載内容を優先させなければならない。逆に、一般的な単語の場合、辞書に載っている訳語はあくまで訳語の例にすぎないと考えたほうがいい。自分が翻訳している案件の文脈にあった訳語が載っているとはかぎらないのだ。じっさい、一般的な単語では、いろいろな辞書を見比べ、英英辞典などもチェックした上で、最終的にどの辞書にも載っていなかった訳語にすることがよくある。「辞書に載っていた」というだけで安易に訳語を決めると、わかったようなわからないような訳文になってしまうことがよくあるのだ。

■不明な用語が残ったら
 辞書に載っていなかった、あるいは載っていたけれどもその訳語を使っていいものかどうか不安がある場合には、インターネットで調査・確認を行う。
 自宅で仕事をしている場合には、その場でインターネットに調べに行くことも可能だが、出先でノートパソコンを使っている場合にはそうはいかない。そのような場合には、不明単語のところに自分なりの特殊な記号を入力しておく。たとえば、「??」とクエスチョンマークを連続させてもいいし(ひとつだと文章中に現れる可能性がある)、「◎」のような記号を入力しておいてもいい。
 自宅に戻った後、不明点を調査するときには、この記号を検索する。このようにすれば、すべての不明点を、あとで確実に処理することができる。

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Buckeye さんが、主に EPWING 規格の電子辞書の話をエントリなさって [続きを読む]

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