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2008年9月13日 (土)

Googleを利用した訳語選択のポイント

訳語の選択にGoogleをどのように利用するのかをざっとまとめてみよう。この問題はパラメーターがあまりに多く、かつ、ケースバイケースでどこにどの程度の比重を置くべきなのかも変化するため、あまりきれいにまとめられないとは思うが。

■目的

まずはウェブを調べる目的を確認しておこう。

  • 原語における意味内容の確認(類似表現との意味的な差異の有無を含む)
  • 当該用語には、どのような訳語があるのか、あり得るのか、あるいはないのかの確認
  • ターゲット言語における訳語・表現の使われ方の確認

要するに、翻訳をするにあたり、バランスよく実現しなければならない3つの基本作業(↓)と同じである。

  • 内容を追って読む作業
  • 原文と訳文の過不足等をチェックしつつ読む作業
  • 訳文を訳文だけで読んだ場合の文章としての完成度をチェックする作業

■理想と現実

理想的には、前述した3つの目的、すべてを細かくきちんと実現すべきである。

しかし現実には、納期の問題などから、必ずすべての段階を細かくチェックするだけの時間がない。よって、3つの作業のどこは軽く流し、どこに力を入れるべきなのかをケースごとに判断し、意識しつつ進める必要がある。

これを意識せずに漫然と調べ物をすると、適切な訳語が選べないという結果に陥ることが多い。

■原語における意味内容の確認(類似表現との意味的な差異の有無を含む)

翻訳フォーラムなどでの質疑を見ていると、ときどき、内容がよく分かっていないのに「定訳」を知ろうとして「見つけられない」と言う人をみかける。原語を読んで内容をきちんと理解できなければ翻訳なんてできるはずがない。だから、まずは、原語が表現しているものをきちんと把握する必要がある。

実際的な方法としては(↓)などがある。

  • 「definition」「terms」「用語」「解説」「入門」などを掛け合わせて検索してみる
  • 当該用語(+関連用語)で検索し、サイトをいくつか拾い読みしてみる
  • 画像検索を活用する

とにかく、内容を確実に理解したと思うまで、無理に訳語を探そうとしないこと。

■当該用語には、どのような訳語があるのか、あり得るのか、あるいはないのかの確認

次は訳語候補のリストアップである。

  • 英日なら、「"aaa bbb" の」などとすると、対訳的に英語と日本語が出ているサイトが引っかかったりする(日本語のサイトのみを検索というオプションを使う手もあるが、私はやらない。オプションで処理すると、英語側の検索をしようとしたとき戻し忘れてミスったりするので)
  • 辞書(通常の辞書だけでなくシソーラスも便利)記載の訳語などを参考にしながら、可能性がありそうな用語をいろいろと検索してみて、ヒットしたら、内容が原語で表されているものと同じかどうかを確認する
  • 検索中に引っかかった用語などからの連想も活用し、検索のバリエーションを増やす
  • 複数言語で展開しているメーカーサイトがあれば、そこで対応する用語を探す
  • 問題となっている用語が使われている分野で専門用語となっているらしい用語、複数をキーワードに検索し(調べている用語は入れないことも多い)、原語で検索したときとターゲット言語で検索したときのサイトを読み比べ、内容的に対応するものを拾う

などなどの方法で、候補をリストアップする。

なお、こうして候補のリストアップをしようと試みた結果、いわゆる「訳語」が存在せず、ターゲット言語側では開いて説明的に訳すしかないらしいと分かることもある。

■ターゲット言語における訳語・表現の使われ方の確認

訳語の候補リストについて、ターゲット言語で検索をくり返し、どのように使われているのか、どの程度使われているのかなどを確認し、最終的にどの候補を使うべきかを決める。

いわゆる「定訳」と言えるほど定着した言葉があれば、基本的にそれを使うことになるだろう。そこまでの用語がないときには、総合的に判断して、目前の文章に一番適切な訳語を選ぶ。

ここで気をつけるべきポイントがいくつかある。

まずは分野。対訳だけを探す翻訳者に多いのだが、分野違いの用語を使ってしまうケースをよくみかける。原語で同じ用語であっても、分野が違えば、ターゲット言語でまったく異なる用語を使うことも少なくない。ここは基礎中の基礎と言えるポイント。

次に、翻訳文書の読者に合わせた判断基準を重視すること。一般向けならニュースサイトなどを重視するのがいいだろう。技術者向けなら、いわゆる技術文書や技術者が技術の説明をしているサイトなどを重視する。

翻訳文書の種類にも気を配る必要がある。くだけたタイプなのか論文などのようにおかたいものなのか。それによって、使われる言葉も当然に変化する。なお、この場合、我々が使う言葉は少し保守的に選ぶべきだということも念頭に置いておくこと(文学系なら冒険するケースもあるのだろうが……)。

固有名詞や製品名などはメーカーサイトを重視する。特に固有名詞は、ほかがどう表記していようと、それがどんなに多かろうと、その固有名詞が示すモノの持ち主・提供主などが使っている表記が優先である。

一般的な言葉であっても、企業ごとの方言のようなものがある場合もある。翻訳対象文書が、ある特定企業のものであれば、その企業における使い方が優先となる。

ヒットしたサイトが翻訳物なのか、ターゲット言語で書き起こされたものなのかにも注意を払う必要がある。翻訳されたものは「怪しい」と思っておいたほうがいい。自分と同等以上の力を持つ翻訳者が訳したのだとしても、適切である保証はない。まして、自分よりも実力が下の翻訳者が訳したものかもしれないし、翻訳なんてほとんどしたこともない人がやったものかもしれないのだ。念のため、眉につばをつけておくのが得策である。翻訳者が下手でも企業なりが確認して出しているのだから……などと思わないこと。仮に確認しているのだとしても、その確認が実効を上げられていない実例など、いくらでも存在する。特に、ターゲット言語における使われ方をみる場合には、翻訳ものは、なるべく外して検討すべきである。

ブログの記事などを自動的に収集するウェブアプリがあったりするせいで、ある1箇所における記述なのにすごい数のヒット数になる場合もある。とうぜん、こういうものによるバイアスは排除すべきだ。ただ、これは3行表示を読んで行けば、単純なコピーによるヒットなのか異なる記述によるヒットなのか、それなりに判断ができるので、あまり大きな問題にはならない。

まだまだあったと思うが、とにかく、こういう多くのことを念頭に置きつつ、Googleのヒット件数を確認し、3行表示を少なくとも数十個くらいは流し読みし、必要に応じてヒットしたサイトのキャッシュを読む(検索ワードがハイライト表示されるのでキャッシュのほうが便利)。

このくらいやれば、どの候補を選ぶべきかはだいたい、判断がつくはずだ。どれか一つが断トツで迷わず選べるケースもあれば、複数の表現が間違いとは言えず選択に悩むが選ぶならやっぱりこっちかなぁというケースもある。最終的に2つ、あるいは3つの候補が拮抗し、決め手を欠くこともある。その場合は、自分の好みで選べばいいだろう。前述のパラメーターをいろいろと勘案しても拮抗するのであれば、世の中での使われ方として拮抗していてどれを選んでも大差ないはずだからだ。

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コメント

訳語が漢字のときには、中国語のサイトがヒットしていることがあります。これも注意すべき点の一つでした。

これも、3行表示をざざっと見ていけば様子が把握できます。

投稿: Buckeye | 2008年9月17日 (水) 11時03分

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