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2008年9月

2008年9月26日 (金)

「and、or」と「と、か、や、も、……」

"and"と"or"の訳し方について、少し検討してみよう。

産業翻訳とライティング」に“「and」と「or」”というエントリーがあった。このエントリーがもともと意図した部分と違うことは分かった上で、これをネタに、文脈というものについて少し考えてみたい。

内容は以下のような話で、「たしかに」って感じである。

You can get some good authentic Mexican food in California and Texas.
You can get some good authentic Mexican food in California or Texas.

上記の2つは意味としてはどう違うのでしょうか。

前者は、一般的な話の場合に使われ、後者は具体的な話の場合に使われます。
これは、日本語でも同じようなことが言えると思います。

前者は、一般的な話として、「本格的なメキシコ料理は、カリフォルニア州『と』テキサス州で食べることができます。」という具合に使います。

後者は、より具体的な話で、例えば、「本格的なメキシコ料理を食べるにはどこへ行ったらいいかな?」という質問に対して、「本格的なメキシコ料理だったら、カリフォルニア州『か』テキサス州で食べることができるよ。」という具合に使います。

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2008年9月24日 (水)

専門用語と一般的な単語の訳

翻訳関連の雑誌記事やブログなどでは「専門用語の訳をきちんとすることが大事」などと書かれていることが多い。それはそれで正しいのだが、実は、「専門用語は楽な部分。難しいのは一般的な単語」だと私は思う。

このあたりは、「辞書-信じるはバカ、引かぬは大バカ」に続くコメントや「電子辞書の選び方・使い方」などでも軽く触れている。

専門用語の訳は決めなければならないし、文書内で統一しなければならない。「決めなければならない」「統一しなければならない」と言うと難しく聞こえるが、実は、翻訳者にとって専門用語ほど楽なものはない。それが専門用語であるとわかりさえすれば、一定の訳語を当てはめてお終い。それ以上のことを考える必要は、基本的にない(クライアント支給の用語集にも不適切な訳が入っていたりするので、鵜呑みにしないという注意は常にすべきだが)。

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2008年9月22日 (月)

電子辞書の選び方・使い方

イカロス出版『通訳翻訳ジャーナル』に連載された『会社勤めと翻訳者の二足のわらじ変足4段活用 はけば、はくとき、はく、はくと…』の第11回(2001年10月号掲載)、『串刺し名人』である。かなり古い記事だが、CD-ROM辞書を選ぶとき、そのフォーマット(規格)に注意すべきであるなど、今も基本的に変わっていない。

最近は、電池で動く小さな電子辞書が充実しており、たくさんの辞書を搭載しているものがけっこう安い値段で手にはいるようになった。私も持っており、外出時などに活用しているが、プロの翻訳者がふだんの仕事に使うなら、この記事に紹介したようにEPWING規格を中心とした電子辞書をJammingなどの辞書ブラウザでまとめて引く方法がいい。

なお、この記事後の大きな変化として、山岡さんの『経済・金融英和/和英実用辞典』などをEPWING化してJammingで引けるようにするEBStudioというシェアウェアが登場したことを追記しておく。

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2008年9月19日 (金)

翻訳業界を狙った詐欺?-続報

半年ほど前、翻訳業界を狙った詐欺らしい話を耳にしたので、注意を喚起する投稿を翻訳フォーラムなどにした(このブログは休止中だったので書いていない)。さまざまな人がブログなどで取りあげてくれたので、読んだ記憶がある人も多いと思う。

その後、民事訴訟を起こした方がおられたり、警視庁の担当警察署や桜田門の本部に相談に行ったり(本部には私も同行した)といった対応をしてきた。債権が回収できる望みはほとんどないというのが関係者の一致した見方だったが、特に刑事事件として立件されれば、係争中であるという事実を名前を挙げて書けるようになるし、実刑判決でも出てくれれば、当分、新たな被害の発生がなくなることが期待できるからだ。

これについて、状況に変化があったらしいとの話を聞いた。

警告を発するきっかけになった、詐欺をしているのではないかと思われる方が亡くなったらしい。継続的に追っておられた翻訳会社さんがあるのだが、そこへ相手の弁護士から死亡診断書が送られてきたというのだ。

なんともコメントのしにくい幕引きとなった模様だが、少なくとも、今後、被害の拡大はなくなったと言えるのだろう。

ただし、同様の話がほかにないとは限らない。新規取引先を開拓するときには、いろいろと注意しながら進めるべきだ。

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2008年9月17日 (水)

Googleの活用-「ネットワークカード vs. ネットワーキングカード」を実例にして

先日の『ネットワーク vs. ネットワーキング』に関連して、「IT翻訳者の疑問」に「[翻訳者の疑問]Google検索結果の件数は「日本語としての正しさ」の判断基準になるか」というエントリーが書かれ、そこにさまざまな疑問が提示されている。それに答える形で、前エントリー、「Googleを利用した訳語選択のポイント」のうち、最後の「ターゲット言語における訳語・表現の使われ方の確認」の実例を提出しよう。

実例としてはあまりよくないのだが、あえてこれを実例とする。「IT翻訳者の疑問」の「[Linguistic Reviewerの疑問][カタカナ語]動名詞をそのままカタカナ表記するときのルール」や「[カタカナ語]enhanced storage networking=拡張ストレージネットワーク?」へのコメントにおいて、私が、「”ネットワーキングカード”」と「”ネットワーク接続カード”」は誤用と言うべき割合の使用例しかないと書いたことに関連して提出された疑問のようなので、一通り、答えておくべきだと思うからだ。

「Google検索結果の件数は『日本語としての正しさ』の判断基準になるか」と聞かれれば、「ヒット件数だけが基準になるはずがない。そこに各種の情報を組み合わせ、『日本語としての正しさ』の判断基準として活用することが、我々翻訳者に求められていることだ」と私は答える。

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2008年9月13日 (土)

Googleを利用した訳語選択のポイント

訳語の選択にGoogleをどのように利用するのかをざっとまとめてみよう。この問題はパラメーターがあまりに多く、かつ、ケースバイケースでどこにどの程度の比重を置くべきなのかも変化するため、あまりきれいにまとめられないとは思うが。

■目的

まずはウェブを調べる目的を確認しておこう。

  • 原語における意味内容の確認(類似表現との意味的な差異の有無を含む)
  • 当該用語には、どのような訳語があるのか、あり得るのか、あるいはないのかの確認
  • ターゲット言語における訳語・表現の使われ方の確認

要するに、翻訳をするにあたり、バランスよく実現しなければならない3つの基本作業(↓)と同じである。

  • 内容を追って読む作業
  • 原文と訳文の過不足等をチェックしつつ読む作業
  • 訳文を訳文だけで読んだ場合の文章としての完成度をチェックする作業

■理想と現実

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