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2008年7月10日 (木)

規模による翻訳会社の違い-ソースクライアントから見た場合

翻訳者から見た翻訳会社を大手(20人超)と中小(5~20人)、零細(1~5人)でタイプ分けしてみたが、同じことをソースクライアント側から見てやってみたい。翻訳者側から見たときと同じく、あくまで私の独断と偏見によるイメージであることには注意して欲しい。翻訳者の中では、あちこちの翻訳会社の社長さんや社員さんと仕事のやりとり以外でお話する機会が多いので、翻訳会社の実態などを比較的よく知っている方だろうとは思うが。

◎大手(20人超のイメージ)

よくもわるくも比較的、安定している。品質管理に手間暇をかけられるだけの余裕があるところが多い。もちろん、品質管理の手間暇をなるべくかけないというところもあるし、担当者によって対応が変わることもある。

驚くほど悪いものが出てくることもあるが、それほど多くはない。驚くほど悪いものが出てきた場合、やり直しをさせたりできることは比較的多い。翻訳者をたくさんかかえている、全体が大きいということは資金的にも余裕があることが多いなど、お金に目をつぶってやり直してもなんとかなるという事情が翻訳会社側にあることが多いからだ。一方、驚くほどいいものが出てくることも少ない。驚くほどいいものが安定して出てくることはほとんどあり得ない。登録翻訳者の数が多いということは、逆に、仕事をする人がゆれる危険性が高いということでもあるからだ。指名で出すにしても、大手翻訳会社だと自分のところが小さな取引先でしかなく、いい翻訳者を優先的に回してもらえる可能性は比較的、低い。

大手の強みはもう一点、大量・短納期の仕事。これは、大人数の翻訳者にわーっと仕事をばらまける大手でないと処理できない。品質は、文書のあっちとこっちでさえもバラバラになるおそれがあるが、ともかく、横が縦に、縦が横にはなる。

翻訳会社の営業に聞けば、「ツールと品質管理でそのあたりはばっちりです」と返事が返ってくるかもしれないが、そういうノウハウの塊であるはずのローカリ系でも実現できないことが単発の一般翻訳でできるわけがない。もちろん、何もしないよりはずっとマシではあろうが。

◎中小(5~20人のイメージ)

会社による差が大きい。品質重視で丁寧な仕事をするところなら、かなり高品質のものがそこそこ安定して出てくる。逆に、安値を武器に営業し、翻訳者に丸投げするだけのところだと、まともなものが出てくる可能性は低いし、悪い訳が上がってきたとき、やり直しにも応じない(企業としての体力がないから応じられない)ということも多い。安値が武器という中小は、大手翻訳会社の下請けがメインというところもある。

中小なら、翻訳会社にとっての自社が比較的大きなクライアントとなり得るので、大手よりは優先的な取り扱いをしてもらえる可能性が高くなる。とは言いつつ、中小は売上が2億~3億くらいが多いはずで(社員10人×社員1人あたり売上2000万で2億。これで粗利1億円、社員1人あたりの給与が300~400万レベルか)、年間1000万程度の発注量(翻訳会社の売上の5%以下)では優先的な取り扱いが難しいというケースも考えられる。

◎零細(1~5人のイメージ。ただし個人ではなく会社組織を基本としている)

会社による差がさらに大きい。どうしようもないところのレベルは中小と同じ(やり方も同じだから結果も同じ)。逆に品質重視の零細は、エース翻訳者1人が支えているようなケースもあり、ぴったりのところが見つけられれば、非常に品質の高い訳が常に出てくるという理想的なパターンが得られる。理由は簡単。だいたい品質管理といっても、翻訳時に高い品質の訳文を作るのが一番の品質管理であり、品質の低い訳文ができてしまったあとに手を入れてもそれほど品質はあがらないからだ。ただし処理量が限られるので、大量・短納期の仕事だと逆に断られたりする。

零細だと、年間500万くらいも発注量があれば優先的な取り扱いになるはず(年間売上が3000万以下が多いと思われるので)。1人会社のように実態が個人のケースでは、年間200万、300万の発注量でも優先的な取り扱いになることが多いはず。処理量が限られる点は、事前に予告して優先的に処理してもらえば、それなりのことができる。逆に、年間発注量が1000万を超えるようだと、高品質型の零細翻訳会社1社では処理しきれない可能性が高い。そのような場合は、複数社に発注するなどが必要になる。

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こういうふうに分かれるのは、ある意味、必然である。理由は、「翻訳会社の規模による違い-翻訳者側から見た場合」と同じ。

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コメント

Buckeyeさん、こんにちは(^^)。
ブログ更新、お疲れ様です。
この「ブログの」ファンです(笑)。
いろいろ情報ありがとうございますm(__)m。
たくさん足あとをつけてすみません(^^;;。
他意はない、人畜無害のいちファンですので、どうかお許しください(笑)。

投稿: Aki | 2008年7月10日 (木) 11時12分

Buckeyeさん、こんばんは。

なんだか今夜は引き寄せられるように、このブログにたどり着きました。
翻訳会社に関するすばらしい見解を共有していただき、本当にありがとうございます。

「翻訳者から見た場合」、「ソースクライアント」から見た場合、
共に非常に興味深く、また「なるほどなぁ」と思いながら拝見させていただきました。
翻訳会社を選択する際に、今後何度も何度も読み返させていただくことになると思います。

うまく言えませんが、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます。

めぐり

投稿: めぐり | 2008年7月11日 (金) 01時45分

Akiさん、

はいな、こちらでもよろしく。このブログは仕事関連ってことでお堅いことしか書きませんが……こんなんでよかったら、どうぞごひいきにm(_ _)m

投稿: Buckeye | 2008年7月11日 (金) 06時06分

めぐりさん、

ぶっちゃけ、「翻訳会社は玉石混交。目の前の相手がどうであるかを自分の目で見極めるべし」って当たり前のことを言ってるだけのような気もしますが(^^;)

まあでも、いろいろな人の話(特に駆けだしたばかりの人たちの話)を聞くと、「翻訳会社はどこもしっかりしてるはず」と考えているらしいって印象を受けますから、こういう話を書いておくのも大事なのかもしれません。

投稿: Buckeye | 2008年7月11日 (金) 06時13分

以前、とある翻訳会社のそれなりの立場にある人がこんなことを言ったことがあります。
「翻訳会社って、危なくなってもそれほど簡単には潰れないんですよね」

翻訳業界の一面を、この言葉は語っていると思いました。
翻訳の需要が(質・量とも)実にさまざまなので、供給される訳文のレベルもピンからキリまで多種多様。
いろんなレベルでそれなりの需給バランスが成り立っているようです。
そういう状況なので、中小でも安定した品質を維持していれば一定の取引を確保できるということになり
ますし、大手が粗製濫造しても量を提供できればそれでいいという状況も生まれる。

トータルに見ると、なんとも混沌とした業界というイメージです。

投稿: baldhatter | 2008年7月11日 (金) 22時02分

baldhatterさん、

そうですね、全体としては混沌。これに対し、個人翻訳者、特に一般的な産業翻訳者は各人がニッチで仕事をしているわけで。混沌としているからこそ、あっちこっちにさまざまな種類のニッチが存在するわけで、これはこれでそれなりってことなんだろうなぁと思ったりもします。

投稿: Buckeye | 2008年7月14日 (月) 18時16分

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