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2008年7月 7日 (月)

規模による翻訳会社の違い-翻訳者から見た場合

翻訳会社は、それこそ社長一人というような極零細のところから株式を上場しているところまで、規模にかなりの幅がある。この規模による性格の違いをおおざっぱにタイプ分けしてみた。あくまで傾向であり、会社ごとの違いのほうが大きいであろうことには注意が必要。また、私が見聞きした範囲から独断と偏見で分けたものなので情報が偏っていたり私の判断が誤ってたりする可能性もある。

まずは翻訳者側から見たときの違いを検討する。翻訳者としてどこにアプローチすべきかを考える一助になるのではないかと思う。規模はえいやっと、大手(20人超)と中小(5~20人)、零細(1~5人)くらいとイメージしている。

■規模による翻訳会社の違い-翻訳者から見た場合

◎大手(20人超のイメージ)

いろいろな意味で、よくもわるくも平均的。翻訳者への対応も、よくもわるくも会社的。比較的ビジネスライクで気楽かもしれないが、きめ細かい対応は期待しにくい(コーディネーターによる差はもちろんある)。レートも、極端な安値もないかわり、高値もあまりない。大量の仕事が流れているのが翻訳者から見て一番の魅力か。

仕事量が多いのはいいが、登録翻訳者の数も多い。翻訳の力でも対応のきめ細かさでもいいが、そこに埋もれない努力が必要だろう。

◎中小(5~20人のイメージ)

会社による差が大きい。品質重視で丁寧な仕事をするところもあれば、安値を武器に営業し、翻訳者に丸投げするだけのところもある。安値が武器という中小は、大手翻訳会社の下請けがメインというところもある。

会社の体質がそれほど企業的でないことから、翻訳者への対応は、大手よりも「ベタ」になることが多い。また、稼働している翻訳者数が大手よりも少ないこともあり、無理なケースでも頼み込んでやらせてしまうことが多いか? ただし、つきあう翻訳者数が少ないということは、コーディネーターに能力さえあれば、きめ細かい対応ができることにもつながる。このあたりも、会社やコーディネーターによる違いが大きく出てくる。

支払いレートは仕事の仕方によって大きく違うので、これまた会社による差が大きい。

◎零細(1~5人のイメージ)

会社による差がさらに大きい。悪いほうのレベルは中小の悪いほうと同じ。逆に、品質重視などていねいな仕事をするところは、中小以上にきっちりやる。彼ら自身、ニッチで仕事をしているので、その分野なりが自分にはまれば、とてもいいパートナーとなりうる。

1社あたりの登録翻訳者の数も少ないことが多く、何かの拍子にうっかり埋もれてしまって仕事がこないというケースは少なそうだ(仕事が必ず来ると言っているわけではない。実力が不足していれば、当然、仕事は来ない)。その代わり、自分と同じ分野で自分よりも使い勝手のいい翻訳者が1人、登録されただけで、自分の仕事が全部なくなるおそれもある。自分が担当するソースクライアントと零細翻訳会社との関係が切れたときも、それを代替する仕事がないことが多く、一気に仕事量が減る可能性がある。

■違いが生まれる理由

こういうふうに分かれるのは、ある意味、必然だろう。

いろいろな翻訳会社の社長さん、5~6人ほどとこういう話をしていたとき、「規模が大きくなってくると量を重視せざるをえない」という話が繰り返し出ていた。ある中小翻訳会社の社長さんは「これ以上、規模を拡大すると質を落として量に走らざるをえないから、今の規模にとどめる」とも言われていた。

会社も最初は小さいわけで、デキの悪い会社は零細に留まる。高品質・高価格のようなニッチから出たくないところも零細に留まる。ビジネス的な才覚のあるところは、会社が成長する。中小規模で次第に質より量優先となってゆく。これ以上、質を下げたくないと思うと、中規模でストップ。ビジネス的な才覚の限界により、中規模でストップするところもある。ビジネス的な才覚がとくにすぐれ、量で稼ぐことに後ろめたさを感じないところが大手まで成長する。ステレオタイプ的には、そんなイメージだろう。

会社を大きくするビジネス戦略としては「量で稼ぐ」のが当然だと思う。それと「高品質・高価格」を並立できれば最高だが現実には難しいわけだ。

もともと翻訳会社というのは、設立理由が大きく分けて二つあると思う。

  • 翻訳者がいつの間にか翻訳会社となった
  • もともと起業メインで対象業種として翻訳を選んで会社設立

翻訳者として優秀な人が翻訳会社となったケースは、品質重視の零細が多いように感じる。品質を重視するには社長の目が利くニッチに留まる必要があるという側面もあるだろうし、会社を大きくする経営の才覚がそれほどないといったケースもあるだろう。比較的経営の才覚もある翻訳者だと中小規模まで行ったりするが、その場合も一定レベル以上の品質を保とうという姿勢が感じられることが多いように思う。

これに対し、初期投資が少なくてすむなどの理由から起業の対象業種として翻訳を選んだケースでは、1行、1行、訳す現場をよく知らなかったり知ろうともしないケースがあるのかもしれない。「とにかく安ければ客は買う。品質うんぬんは営業力でなんとかする」という方針を、昔、聞いたこともある。もちろん、高品質をウリにするという経営方針もあり得るので、みんながみんなということはないはずだと思う。

いずれにせよ、根っこが経営者という人のほうが会社を大きくしたいと思うだろうし、その才覚もあることが多いはずなので、大手の翻訳会社は経営系の人が中心だろう。

■どのような翻訳会社とつきあうか

翻訳会社とのつきあい方は、自分が何を目指すのか次第。

◎「高品質・高価格」を目指す場合

高品質・高価格を目指すのであれば、最終的には、相性のよい零細から中小をコアとし、仕事量確保のための中小・大手を併用するというところだろう。

ステップアップしていく道筋は、以下のようになると思う。少なくとも、私の場合はこれでうまく行った。

最初は、とにかくどこでもいいから仕事をとる。

なんとか仕事ができるようにはなったが仕事量が少ないという状態なら、大手を活用して仕事量を確保する。量をこなすことで勉強できる部分、身につく部分というのもあったりするので、これはこれで一つの方法。第一、食べていけなければどうにもならない。

力がついてきたら、自分に合う翻訳会社を探す。合うところとなると、基本的に、中小・零細になるはず。下請けメインの中小・零細は翻訳者への支払いも安くなるので、この段階では基本的に避けるべきだ。零細でぴったりくるところがあればベストだろうが、零細は見つけにくいので気長に探す(インターネットのお陰で、まだしも見つけやすくなったはずだが)。また、零細であるほど仕事量の変動が大きくなりがちなので、中小などと併用したほうがいいかもしれない。

自分に合うところが見つかり、そちらである程度の仕事量が確保できるようなったら、大手とのつきあいを減らしていく。

私自身、最初につきあいをやめたのが大手だった。よく覚えていないが、2カ月くらい、オファーを全部断ったら打診がなくなったと思う。その半年後くらいに、そこでやったプロジェクトの続編があるとのことで打診が来たが、それを断ったのが最後だったように記憶している。

◎「量で稼ぐ」を目指す場合

「量で稼ぐ」という方向性はあまりお勧めしないが……その場合はやはり大手が中心になるかと。とにかく仕事量が確保できなければいけないわけだから。大手では競争相手が多すぎると感じれば、中小のうち、質より量で稼ぐタイプのところを探すのだろう。

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