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2008年6月16日 (月)

『日本語の作文技術』

外国語から日本語への翻訳をするなら必読の書。なにせ、この本の「目的はただひとつ、読む側にとってわかりやすい文章を書くこと」というのだから。

いや、読んだだけではダメ。書かれていることを一つずつ、一定期間、練習して身につけるべきだ。

身につけるべき内容は、第一章から第六章まで。あと第八章も、ときどき読み返したほうがいいだろう。その他の章は、翻訳という観点ではあまり役に立たない。原文という形で我々の目の前に提示された段階で決められており、翻訳者の裁量でどうこうできる部分ではないからだ。

そうして練習してみるとまごつくのが第四章にある「テンの打ち方」。

本多さんは、テンの打ち方には二つの原則があると言われる。

  • 第一原則-長い修飾語が二つ以上あるとき、その境界にテンをうつ。(重文の境界も同じ原則による。)
  • 第二原則-原則的語順が逆順の場合にテンをうつ。

このほかに、「筆者の考えをテンにたくす場合として、思想の最小単位を示す自由なテンがある」とされている。

それぞれの説明を読むと、ああ、そうだなぁ、そういえば、無意識にテンが必要だと思うところってこういうところだなぁと思う。

ところが、これを翻訳に応用しようと練習を始めてみたら、困ったことになった。二章、三章の原則を守って訳文を組みたてると第二原則のテンがなくなるのだ。結果、極端にテンが少なくなる。それはいい。問題は「読む側にとってわかりやすい文章を書く」原則を守って書いたのだからいい訳文になっているはずなのに、これがなんとも読みにくいという点だ。

なぜか。

二章、三章の原則は、あくまで文、一つずつを取りあげたときの語順に関するものにすぎないからだ。これに対して翻訳者が訳すのは文ではない。翻訳者が訳すのは文章……文が集まって文脈を形作ったものだ。

日本語の場合、文脈が流れるようにするため、文は既出情報から新出情報へとつなぐように書く(英語もそれに近いが、冠詞がある分、この縛りがゆるい)。また、大枠からズームアップするようにつないでゆく(こちらは英語と日本語で逆)。

このあたりは日本語の書き方とかテクニカルライティングとかの本によく書かれている。

この流れを作ろうとすると、二章、三章の原則に反する語順となったりする。そのとき優先すべきはもちろん文脈。そして、第二原則のテンをうつ。

なお、最後の部分を最初からやろうとしないほうがいいと思う。まずは二章、三章の原則を練習して身につけるべきだ。ここが身についていないと「逆順のテン」はうてないと思う。

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コメント

Buckeyeさん、こんにちは(^^)。

今、「日本語の作文技術」を読んでいる最中です。なかなか考えさせられる内容で、読み進めるのは結構大変(^^;;ですが、面白くためになっています。普段無意識に打っている点には、こういう理屈が成り立つのですね。ご紹介ありがとうございましたm(__)m。

投稿: Aki | 2008年7月 1日 (火) 18時14分

Akiさん、

おや、こちらでもよろしくm(_ _)m

読み終わったら、ぜひ、しばらくの期間、「練習」してくださいませ。で、そういうことをあまり気にしなくなったころ、また、読み返して、自分の訳文をチェックしてみてくださいませ。くり返しやって身につけるものだと思います。

私もまだまだ発展途上で、身についたとは言いがたい状態です。

投稿: Buckeye | 2008年7月 2日 (水) 17時11分

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