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2008年5月20日 (火)

翻訳者の収入分析-1.サマリー

(2003年11月に書いた翻訳フォーラム掲示板「翻訳JOB」会議室への投稿をベースとしたエントリーです)

アルクの実務翻訳ガイドに掲載された翻訳者アンケートをもとに、翻訳者から見た翻訳業界がどのようになっているのか、その現状をざっと分析してみました(と言っても2000年末のデータが元なので古い現状ですが)。

アンケート結果からなので、評価軸は基本的に「稼ぎ」です。別に稼ぎが多いのがえらいわけでもないのですが、「『稼げる』ことにこだわる理由」でも書いたように、稼ごうと思えば稼げる業界でなければ稼がない選択ができません。この分析は、「稼がない選択」をするのか、できるのか、ということを考える一助にもなるのではないかと思います。

なお、少なく稼ぐ道を選んだ人はその人が本来現れるべき年収位置よりも下に来て、逆に、無理してでも多くを稼ぐ道を選んだ人はその人が本来現れるべき年収位置よりも上に来るので、両者プラマイした後は、ま、それなりの数字になるかな→分析としては各人の選択は無視してもそれなり、と考えております。

分析したデータは、主に2002年度版(2000年のデータ)とかなり古いものです。これ以降、それなりの人数によるアンケートデータがないので仕方ありません。また、このデータがどこまで代表性があるか(翻訳者全体の様子を反映しているか)というと、その部分は、正直、まったくわかりません。200人からの人数なのでそれなりだとは思いますが、無作為抽出などできていないわけですから。

以下、結果の概要や分析の仮定など、本分析に関する一連のエントリーは、基本的に、2003年11月に翻訳フォーラム掲示板「翻訳JOB」会議室に投稿したものです。

◆サマリー

◎翻訳者から見たマーケット(収入による区分け)

年収人数(%)稼ぎ(%)枚数(%)
0~200万の「稼ぎ少」組 30 7 11
300~600万の「稼ぎ中」組 34 37 40
700万超の「稼ぎ多」組 16 37 29

人数を重みとして加重平均をとると、平均年収は400万強。

あたりまえだが、年収が多い人は人数の割りにマーケットシェアが大きい。年収1,000万超も一桁の後半は存在するので、高収入の翻訳者はそれほど少なくないと言える。

全体的には、年収ベースで真ん中がふくらんでいる。中間層が多く上下が少ない形であり、マーケットとして大きな特徴はない。

人数ベースでは、年収300~500万をピークとしたゆるやかな山と、100万以下をピークとしたするどい山が重なっている。これは、専業翻訳者と専業翻訳者を指向する人(駆けだし)による山と、収入上限がかなり低い主婦・二足組による山だと考えるとつじつまが合う。

専業翻訳者と専業翻訳者を指向する人(駆けだし)による山が年収の低いほうに対してもゆるやかに下っているのか、低い年収階層に駆けだし組によるピークが存在するのかは興味があるところだが、主婦・二足組の人数が把握できないためアンケート結果から判断することはできなかった。

◎単価別

単価(円/仕上がり400字)金額(%)枚数(%)
1,000~1,100 7 11
1,300~1,500 37 40
1,700~ 37 29

単価を見ると、比較的高めの案件もかなりの量、存在することがわかる。ただし、単価自体が推定によるものなので、この部分の信頼性は低い。

◎タイプ別

タイプ人数(%)稼ぎ(%)枚数(%)
主婦組 (100万強以下) 6 1 2
二足組 (200万強以下) 20 5 7
年収 300万以下の駆出組 16 8 10
年収300~700万の中堅組 43 49 52
年収 700万超の上位陣 16 36 29

ここの数字はかなりの推測が入っており、信憑性は低い。

◎安値受注について

極端な安値で受注する人がいるから翻訳マーケットに下押し圧力がかかっているという論があるが、マーケット全体に占める安値案件の割合はかなり低い(全体の1%にも満たないと推測)。また、扶養の範囲を超えないように調整する主婦層に下押し圧力の原因を求める場合があるが、こちらもマーケット全体に占める割合は小さい。いずれも、マーケット下押しの可能性を否定はできないが、その主因となるには大きく力不足と思われる。

◎平均単価と年収

平均処理枚数のデータをもとに、平均単価によってどのように年収が変化するかを見た。その結果、かなりの割合(上位40%)が到達できる20枚/日程度の処理量があり、単価を1500円/400字程度(英日、仕上がり基準。原文課金なら分野によって10~13円というところ)まで引き上げることができれば、多くの人が目標とする500~600万の年収は十分に達成可能。

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コメント

山岡洋一さんが毎月出されている翻訳通信の2003年12月号に、アルクの翻訳者アンケートを使って私がやったこの分析が取り上げられています。

http://homepage3.nifty.com/hon-yaku/tsushin/ron/bn/hinkon.html

翻訳者の収入というものはもっと多くていいはずとか、翻訳者の収入が低い理由の一つが翻訳業界には本来的な意味合いのエージェントが存在しないことであるなど、今回、山岡さんが書かれていることには、共感する点が多々あります。その多くは私も今までアチコチで書いてきた持論といえるものでもありますし。

ただ、今回の分析ではなるべく多くの人に「現状の中で自分は何をめざし、どういう努力をしていくのか」を考えていただきたいという思いがあったもので、「こうあるべき」など、私の価値観をなるべく入れないようにしたつもりです。それに対して、山岡さんの記事では「こうあるべき」を切り口とした分析となっており、翻訳業界内だけでなく、世の中一般との比較などが行われています。

掲示板の記事と翻訳通信を併せて読んでみられると、また、違った印象が得られるはずです。読んでみられることを強くお勧めします。

投稿: Buckeye | 2008年5月20日 (火) 12時11分

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