翻訳者の収入分析-3.分析のために置いた仮定
公表されたアンケート結果のみから推測するために、いろいろな仮定をおいています。仮定のおきかたひとつで結果が大きく異なるので、一応、ざっと書いておきます。興味のない人は読み飛ばしてください。
◎年収階級
各年収階級は中央値を平均とする。例外は上下端の階級。
- 0-100万は70万とする→0という人は数字に出てこない(アンケートに答えない)から高めにする(70万とした)。
- 1000万超は、階級が他と違って500万幅となるので、低めに設定。具体的には、その年の人数を見ながら調整(1000-1500万なら、1150あるいは1200とした)
◎単価
0-100万にスタートレートとして1000円/仕上がり400字、1000万超にトップレートとして2000円を割りあて、その間は比例計算とした(各100万ブラケットごとに100円ずつあがっていく)。これは、仕事の全量が英日であると仮定したことになる。
◎上記仮定が持つ問題点
一番大きい問題は、単価設定で英日の単価のみを設定したこと。今回は、英日・日英(それどころか英語以外の言語)をわけて処理できるだけのデータがないので、一番マーケットが大きい英日にまとめて分析することにした。
もう一点、大きな問題として、年収階級ごとに単価を定めた点がある(下記参照)。本当は個別データレベルで年収と単価を入力して分析すべきなのだが、そこをつなぐデータは公開されていないため不可能。
0-200には二足組がかなりの比率で存在する。この中には、実力があって単価が高めだが翻訳にかけられる時間が制約されているため、この年収ブラケットにいる人が存在する。これについては、最近、400字1000円を切るジョブもあるらしいこと、また、1人1人の年収が小さいため、業界分析という観点から全体に大きな影響を与えにくいと判断し、単価1000円、1100円でまとめてしまうことにした。
逆に高収入側には、クライアントとの直接取引で翻訳会社経由よりも高い単価の仕事が比較的多い人がいると思われる(ソースクライアントとの直接取引をしている人の割合は、全体平均でも50%弱と高い)。また、翻訳会社から翻訳者に出される仕事のレートとして、2000円を超えるものも存在する(2002年度版ムックの翻訳者アンケートの次にある翻訳会社へのアンケートなどから)。ただ、訳者側から見ると、このクラスの人でも2000円よりも低い単価の仕事もあるはずで、そういったものと直接取引の高い単価を平均すれば、2000円から大きくはずれる人はそう多くないだろうと判断した。ただし、ここは個々の年収が大きいだけに全体に大きな影響を与える部分で、かなりの誤差が生じている可能性は否定できない。特に、各単価の市場シェアに狂いが生じる危険性がある。つまり、単価が高めの仕事が実際よりも多くあるように見える。
収入が中間の人たちの中にも、実力・単価ともにトップクラスながら、なんらかの理由で翻訳にかける時間・エネルギーを抑えている人がいると思われる。ここは対処のしようがないのであきらめることにした。この結果、各単価の市場シェアに狂いが生じている危険性がある。こちらでは、単価が高めの仕事が実際よりも少ないように見える。上記、高収入側の狂いと反対になるので、全体では大きく狂っていない……ことを期待したい。
| 固定リンク
「翻訳-業界」カテゴリの記事
- 私が日本翻訳連盟の会員になっている訳(2019.02.27)
- 河野弘毅さんの「機械翻訳の時代に活躍できる人材になるために」について(2019.02.22)
- 産業系の新規開拓で訳書は武器になるのか(2019.02.21)
- 『道を拓く』(通訳翻訳ジャーナル特別寄稿)(2019.02.15)
- 翻訳者視点で機械翻訳を語る会(2019.01.23)
コメント