翻訳者の収入分析-4.分析詳細(単価妥当性の検討)
分析は主に2002年度版(2000年のデータ)について行います。母数が一番多く、その分、代表性が高いと思われるからです。
◎単価妥当性の検討
仮定に書いたように、単価は個別データがわからないので半ば機械的に割り振っている。特に高収入側で、こういう単価設定で本当に収入階級が実現可能なのかどうか、アンケートに集計された他項目を参照しながら検討してみる。
結論としては、単価2,000円で年収1,000万超はふつうの翻訳者が到達できる翻訳速度で達成可能。1,500万円超、2,000万円超を実現しているのは、翻訳速度がふつうの翻訳者が到達できるレベルを超えて速い人、単価が2,000円をはるかに超える仕事が多い人、あるいは、翻訳者兼エージェントといった人と考えられる。
平均受注単価が2,000円より多少低くても、年収1,000万超は実現できる可能性がある。このクラスでは、逆にソースクライアントとの取引により単価の高い仕事をしている可能性も高い。そういうプラスマイナスを考えると、年収1,000万超に2,000円という単価を割り当てることは当たらずとも遠からずと言えるだろう。
上記の結論にいたった過程は↓。
Q28「1日あたりの平均処理枚数」を見ると、「~20枚」までが多く、それを超える人はそれほど多くない(20枚を超える人は16人/152人=11%)。年収の多いひとほど処理量が多いと考えられるが、ここでは、20枚を基準に考えてみる。集計表の一番右、「枚数/人」を見ると、1,000万超、単価2,000円として年間処理量は6,000枚くらいという計算になる。月産500枚、月25日(アンケート欄外に1000万超は平均稼働日数25.9日/月とある)として1日20枚。「~20枚」が29%いることからも、十分に可能な数字だと言える(1日あたりの処理量を聞くと、私の経験では、5枚きざみで回答が返ってくる。ということは、「~15枚」「~20枚」の「~20枚」は大半が20枚と考えていい)。翻訳以外の作業もあることを考えると楽な数字ではないが。
2001年度版や2000年度版には、1,500万円超、はては2,000万円超という人もいる。ここを同じ条件で計算すると、1,500万円超で28枚/日、2,000万円超は35枚/日となる。2002年度版のQ28で1日40枚を超えると回答した人が3人いることを考えると(50枚超と回答した人もいる……平均処理量なんだけど、ホントか?)、不可能ではないと考えられる。人づてだが、ローカライズで(おそらくは単価は2,000円より低いにもかかわらず)年間売上2,000万という翻訳者がいたと聞いたこともある。
ただ、瞬間風速で40枚/日を超えられても、1年間、いや、何年間も毎日継続するのは難しいというのが普通だろう。つまり、1,500万円超や2,000万円超といった人は、単価が2,000円を大きく超えるような仕事を多くしている可能性が高いと考えるべき。ソースクライアントとの取引量が多く、他の翻訳者にかなりの量の仕事を頼んでいるという可能性もある(エージェント機能を持つ翻訳者)。
では、単価が1,500円だとどうなるか。1,000万超(1,150万)をたたきだすには年産7,666枚、上記条件で25枚/日……処理量データから見ても、やれないことはなさそう。1,300円だと年産8846枚、30枚/日……うーん、やれる人がいないとはいえない、かな。
1,000万超に割り当てた2,000円という単価が低すぎるかもしれないという見方(ソースクライアント直接取引など)と高すぎるかもしれないという見方(もうちょっと低くても実現可能)の両方があるということは、えいやぁと決める数字として悪くないと言える。
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