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2008年5月

2008年5月28日 (水)

翻訳ツール-人間とパソコンの役割分担

■翻訳作業とツール

翻訳作業は、大きく二分することができる。

  1. 人間よりもコンピュータにやらせたほうがいい部分
  2. 人間がやらなければならない部分

この切り分け方と処理の仕方によって、大きな違いが出る。

20080525__44

人間よりコンピューターにやらせたほうがいい部分 人間がやらなければならない部分
頭よりも手が意味を持つ部分 手よりも頭が意味を持つ部分
(判断が必要な部分)
  • 入力
  • 辞書・用語集の検索
  • 機械的な統一
  • 訳文の案出
  • 訳語適否の判断
  • 訳語を統一すべきかどうかの判断

もう少し具体的に考えると、以下のようになる。

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2008年5月26日 (月)

人は下りのエスカレーターに乗っている

-人は下りのエスカレーターに乗っている-

子どものころ、親によくこう言われた。忘れっぽい私が覚えているのだ、ずいぶんとくり返し言われたのだろう。あるいは、そのとおりだと納得するような体験を何度もしたのか。詳しいことは覚えていない。

とにかく、これは言い得て妙だと思う。言い換えれば「立ち止まることは後退に等しい」。

人は忘れる生き物だ。だから、頭を使わなければ、どんどん忘れて後退していく。

意外に気づかないかもしれないが、体も「忘れる」。私は昔、フィギュアスケートの選手だったが、小さいころは半年しかスケートリンクが営業していない田舎にいた。夏の間、練習しないでいると、体が動きを忘れてしまい、できていたことができなくなってしまう。成長期でもあり、水泳部に入って夏の間も体は動かしていたので、その半年間で体はむしろできていたのに、である。

だから、「人は下りのエスカレーターに乗っている」のだ。周囲が進むのではなく、自分が本当に後退してしまう。

下りのエスカレーターに乗っている自分と違い、翻訳に関係する技術や世の中は日々、進んで行く。言葉も日々、進んで行く。あちらさん、みんなは上りのエスカレーターに乗っているのだ。だから、現状維持でいいやと思った瞬間、下りのエスカレーターに乗った自分と周囲はすさまじい相対速度で離れて行く。ゆっくり歩いてのぼっても、下手すれば上りのエスカレーターには置いて行かれる。つまりついていくだけでもかなりの努力が必要。その状況で相対的に先に進むのであれば、さらに多くの努力が必要になるし、必ずしも進めるわけではないとなる。

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2008年5月23日 (金)

好きな言葉

  • 為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり
  • 足るを知る
  • 人間万事塞翁が馬

この3つが並んでいるのは支離滅裂に感じると言われることがあるのでちょっと説明なんぞを。

人間、努力すればそれなりのことはできるようになるものです。できないことがあるのはできるようになろうとしなかったから。できないという現状が気に入らないなら、できるように努力すればいいだけのことです。ただし人間の一生は時間が限られています。何から何までできるようになれるほどの時間はありません。だから、「足るを知る」ことも大事です。こっちができるようになったのだから、あっちができなくてもいい、いや、こっちができれば満足だからあっちはやらないって考えるわけです。そうしないと、がんばりすぎて体をこわすのがオチでしょう。また、「為せば成る」といっても、その道のりは長かったり紆余曲折があったり、いろいろです。瞬間瞬間に一喜一憂せず、「人間万事塞翁が馬」と長い目で自分を見ることも必要です。

「足るを知」って現状に満足しつつ、「人間万事塞翁が馬」とゆったり構えながら「為せば成る」と次の目標に向けて一歩ずつ歩いていく……そんな人生がおくれたら幸せかなぁと思うわけです。

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夏目式

夏目大さんという翻訳家が、この4月から「夏目式」と銘打って翻訳を教えておられるそうです。

フェローアカデミーのメールマガジン、『Tra-maga』Vol.172、■INTERVIEW■ 翻訳家 夏目大氏 <後編>(3月頭に配信された記事なのだけど、今ごろになって読んだので^^;)

余談ながら……私は、書籍を中心にしている人を翻訳家、産業翻訳を中心にしている人を翻訳者と呼び分けています。だからどうというような違いはないと思っていますが。

この夏目さん、会って話をした回数は少ないのだけど、たまたま、夏目さんの生徒さんの中に私の訳を気に入ってくれた人がいて、その人が夏目さんに習ったときのことをウェブ上にまとめていたことから、夏目さんの翻訳に対する姿勢や方針といったものはかなりわかっているつもりです。それを一言で表現すれば……私と似てる。だからこそ、その生徒さんも私の訳を気に入ったのかもしれません。

それはさておき。

「夏目式」の紹介を読んで思った。似てるとは思っていたけど、ここまで似ていたのか、と。

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2008年5月20日 (火)

翻訳者の収入分析-8.分析詳細(平均処理量と単価から最大可能年収を算出)

分析は主に2002年度版(2000年のデータ)について行います。母数が一番多く、その分、代表性が高いと思われるからです。

◎平均処理量と単価から最大可能年収を算出

Q28「1日あたりの平均処理枚数」に一般的な単価をかけ、年収(売上ベース)でどのくらいに達するかを計算してみる。自分の平均単価と処理量、稼働率などをざっと考えて表に当てはめ、実際の年収と比較するとどうなるか、見てみるとおもしろいだろう。

1カ月の稼働日数は20日とする。これでほぼ週休2日+祭日などは休みという会社員と同じベース(除く、有給休暇)になる。年間労働日数で240日。

なお、来るときには重なって断らざるをえず、来ないときには来ないのが翻訳という仕事なので、20日が全部埋まるというのは珍しいはずだが、とりあえず、最大可能年収ということで計算をしてみる。(いわゆる「捕らぬタヌキの皮算用」です、ハイ^^;)

なお、()内は、別表の分析(「翻訳者の収入分析-2.使用データと集計結果」)において仮定した、単価(円/仕上がり400字)と平均年収(万円/年)の関係を示すものである。

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翻訳者の収入分析-7.分析詳細(安値受注について)

分析は主に2002年度版(2000年のデータ)について行います。母数が一番多く、その分、代表性が高いと思われるからです。

◎安値受注について

よく、不当に安売りする翻訳者(ここには「翻訳会社」と入ることもある)がいるからマーケット全体が下がるという話が出る。「不当廉売」などと言われたりするものだ。その点について、少し考えてみよう。

結論としては、マーケットという観点からはそれほど影響力は大きくない、というところだと思う。

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翻訳者の収入分析-6.分析詳細(兼業・専業など翻訳者のタイプ別分析)

分析は主に2002年度版(2000年のデータ)について行います。母数が一番多く、その分、代表性が高いと思われるからです。

◎兼業・専業など翻訳者のタイプ別分析

2002年度版、Q22「実務翻訳による年収」には専業・兼業が並記されている。ここから、どういう翻訳者がどのくらいいるのか、そのイメージを探ってみる。

かなり乱暴にまとめることになるが、その結果は以下のようになった。もちろん、かなり私の推測が入っており、信憑性は低いといわざるをえない。

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翻訳者の収入分析-5.分析詳細(年収階級の分析)

分析は主に2002年度版(2000年のデータ)について行います。母数が一番多く、その分、代表性が高いと思われるからです。

◎年収階級の検討

年収をいくつかまとめてグループ化してマーケットを見てみる。評価軸は稼ぎのみ。翻訳者としての能力が高くても投入時間を短く制限している人がいたりするので、能力による評価とはズレが生じることに留意のこと。なお、下記グループの間をあけているのは、典型的なイメージをとらえようと思ったからである。

  年収で  0~200万:「稼ぎ少」
  年収で300~600万:「稼ぎ中」
  年収で   700万超:「稼ぎ多」

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翻訳者の収入分析-4.分析詳細(単価妥当性の検討)

分析は主に2002年度版(2000年のデータ)について行います。母数が一番多く、その分、代表性が高いと思われるからです。

◎単価妥当性の検討

仮定に書いたように、単価は個別データがわからないので半ば機械的に割り振っている。特に高収入側で、こういう単価設定で本当に収入階級が実現可能なのかどうか、アンケートに集計された他項目を参照しながら検討してみる。

結論としては、単価2,000円で年収1,000万超はふつうの翻訳者が到達できる翻訳速度で達成可能。1,500万円超、2,000万円超を実現しているのは、翻訳速度がふつうの翻訳者が到達できるレベルを超えて速い人、単価が2,000円をはるかに超える仕事が多い人、あるいは、翻訳者兼エージェントといった人と考えられる。

平均受注単価が2,000円より多少低くても、年収1,000万超は実現できる可能性がある。このクラスでは、逆にソースクライアントとの取引により単価の高い仕事をしている可能性も高い。そういうプラスマイナスを考えると、年収1,000万超に2,000円という単価を割り当てることは当たらずとも遠からずと言えるだろう。

上記の結論にいたった過程は↓。

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翻訳者の収入分析-3.分析のために置いた仮定

公表されたアンケート結果のみから推測するために、いろいろな仮定をおいています。仮定のおきかたひとつで結果が大きく異なるので、一応、ざっと書いておきます。興味のない人は読み飛ばしてください。

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翻訳者の収入分析-2.使用データと集計結果

◆使用データと集計結果

●使用データ

データは、アルクの実務翻訳ガイドに掲載された翻訳者アンケートです。このうち一番新しいものから3年分、2002年度版から2000年度版まで、集計をしてみました。アンケートの実施時期から判断して、集計したデータは、2000年、1999年、1998年ということになります。

集計結果は、下に表としてまとめました。

分析は主に2002年度版(2000年のデータ)について行います。母数が一番多く、その分、代表性が高いと思われるからです。この元データは、アルクのウェブサイトにも掲載されています(2008年5月現在、下記にあります)。

http://www.alc.co.jp/eng/hontsu/enquete/

●集計結果

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翻訳者の収入分析-1.サマリー

(2003年11月に書いた翻訳フォーラム掲示板「翻訳JOB」会議室への投稿をベースとしたエントリーです)

アルクの実務翻訳ガイドに掲載された翻訳者アンケートをもとに、翻訳者から見た翻訳業界がどのようになっているのか、その現状をざっと分析してみました(と言っても2000年末のデータが元なので古い現状ですが)。

アンケート結果からなので、評価軸は基本的に「稼ぎ」です。別に稼ぎが多いのがえらいわけでもないのですが、「『稼げる』ことにこだわる理由」でも書いたように、稼ごうと思えば稼げる業界でなければ稼がない選択ができません。この分析は、「稼がない選択」をするのか、できるのか、ということを考える一助にもなるのではないかと思います。

なお、少なく稼ぐ道を選んだ人はその人が本来現れるべき年収位置よりも下に来て、逆に、無理してでも多くを稼ぐ道を選んだ人はその人が本来現れるべき年収位置よりも上に来るので、両者プラマイした後は、ま、それなりの数字になるかな→分析としては各人の選択は無視してもそれなり、と考えております。

分析したデータは、主に2002年度版(2000年のデータ)とかなり古いものです。これ以降、それなりの人数によるアンケートデータがないので仕方ありません。また、このデータがどこまで代表性があるか(翻訳者全体の様子を反映しているか)というと、その部分は、正直、まったくわかりません。200人からの人数なのでそれなりだとは思いますが、無作為抽出などできていないわけですから。

以下、結果の概要や分析の仮定など、本分析に関する一連のエントリーは、基本的に、2003年11月に翻訳フォーラム掲示板「翻訳JOB」会議室に投稿したものです。

◆サマリー

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2008年5月16日 (金)

会社員と翻訳者-収入の比較

(2001年7月に書いた翻訳フォーラム掲示板「喫茶夢の島」への投稿をベースとしたエントリーです)

今の世の中、よくも悪くも、職業としての価値は収入という物差しで測られる側面がある。それならばと会社員と比較して考えてみた。

実は昔、とある翻訳会社の社長さんに、「職務内容などから考えて、翻訳者の収入上位10%の年収はどのくらいあるべきだと思うか。また、そのレベルと現状の比較はどうか」と聞いてみたことがある。回答は「800~1000万は稼げていい職業。しかし、現実はもっと低いだろう」だった。

この質問をしたのは2001年。2008年現在、2001年当時よりも基本的に単価が下がっていることを考えあわせると、「現実はもっと低い」がさらに下がっていることが考えられる。

その後、仲のいい翻訳者3人で集まって飲んだので、その話をしたら……「稼ぎのトップ10%だろ? 1500万は稼げる業界であるべきだ」という話になった。

1500万はかなりえいやっの数字であるが、けっこういい線を行っていると私は思う。

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「稼げる」ことにこだわる理由

私は、「翻訳者とはどのくらい稼げるのか」にけっこうこだわる。

「頂は高くなければならない。すそ野は広いほうがいい。」で書いた「頂の高さ」は、あくまで翻訳の力を指すものであり、収入の多さを指すものではない。それなのに「稼げる」ことにこだわるのか、それは矛盾だと思う人もいるかもしれない。そんなことはない。私が言う「稼げる」とは「翻訳の力が高い人が稼ぐ気になれば稼げる」なのだから。

こだわる理由は大きくふたつ。ひとつは、「稼げる業界でないと優秀な人が入ってきてくれない」から。もうひとつは、「稼げないと稼がない選択ができない」から。

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2008年5月13日 (火)

頂は高くなければならない。すそ野は広いほうがいい。

専業翻訳者として独立後、1999年、@niftyにあった翻訳フォーラムというもののマネージャーを前任者から引き継いだ。その後、翻訳フォーラムの運営にずっとかかわっている。@niftyがフォーラムシステムを廃止したあとは、当時からの仲間とふたりで翻訳フォーラムを共同主宰している。

それはともかく。

コミュニティ運営をするとき、誰かのコミュニティで発言するとき、JTFの理事会などでアレコレ言うとき、私は、「翻訳者の福祉向上に役立つかどうか」を基準に物事を考えることにしている。翻訳者という職業をしている人たち全体にとって幸せを増やすことなら進めるし、減らすと思われることならやらないというわけだ。

全体と言うのは簡単だが、一部の翻訳者にとってプラスなことが他の一部にとってはマイナスだったりするので現実はややこしい。こういうとき、私が拠り所にするのが、次の考えだ。

-頂は高くなければならない。すそ野は広いほうがいい-

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2008年5月 9日 (金)

原文は親切に読む。訳文はいじわるに読む。

私が翻訳するときのモットーのようなものがある。それが表題の「原文は親切に読む。訳文はいじわるに読む」だ。別の言い方をすれば、↓のようになる。

翻訳者は、原著者の代弁者として、原著者の意図が読者に正しく伝わるように橋渡しをすることが仕事だ。だから、まず、書いた人が言いたかったことを最大限読み取る。その上で、原著者が言いたかったことが分かるように、できれば、言いたかったこと以外の解釈が成り立たないように書くということが翻訳者のやるべきことだと思う。

そのために、原文は、書いた人の立場でできる限り親切に読む。逆に、自分が書く訳文は、意図した意味合い以外にとれないか、なるべくいじわるに読む。

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