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2005年7月24日 (日)

誤訳とは?

誤訳というのは、我々職業翻訳者にとって一番こわいことだ。これだけは避けたいと思うが、そこは人間がすること、完全に避けることはできない。だから、実力をつけましょうねって話になるのが普通なのだが……そもそも誤訳とはなんだろうか。

翻訳者は、原著者の代弁者として、原著者の意図が読者に正しく伝わるように橋渡しをすることが仕事だ。言い換えれば、単語の対応がどうであれ、見た目がどうであれ、原著者の意図が読者に正しく伝われば、結果として、翻訳者としての仕事がきちんとできたことになる。逆に言えば、どんなに「正しく」訳されていようと、訳文の読者が原著者の意図を正しく読み取れなかったら……その読者にとっては「誤訳」に等しい。

「おいおい、読み手の力不足は翻訳者の責任じゃないぞ」と思うひともいるだろう。そのとおりではある。それでもなお、翻訳者に責任の一端があると私は思う。

誤読を誘う訳文は、限りなく誤訳に近いのだ。よくよく読んでみれば、たしかに間違ってはいない訳文、でも、すんなりとは読めない訳文というものがよくある。一方、同じ文を上手な人が訳すと、さらっと内容が頭に入ったりする。この2種類の訳文を100人に読ませたらどうなるか。上手な人の訳文でも、1人や2人、もしかすると10人が誤読するかもしれない。でも、間違ってはいないというレベルの訳文なら、すぐに10人、20人、下手すれば半数以上が誤読するだろう。

このように考えると、誤訳という問題は、0か1か、○か×かという2進数的な話ではなくなる。その訳文が誤訳になる人の割合が100%なのか、80%なのか、50%なのか、10%なのか、1%なのか、0.1%なのかという問題になる。

従来の○×的な判別では、100%のみが誤訳であり80%は誤訳ではないという主張が一応はできるし、訳した翻訳者側からはそのような主張がされることが多い。でも、誤訳になる(誤読する)人の割合をたとえば10%以下にしたいなら、50%が誤読する訳文は誤訳である。誤訳していないのに誤訳だと言われたという話をみかけることがときどきあるが、その中には、このようなケースも含まれている(もちろん、逆のケースも)。

「誤読されたら誤訳だ」と思うと、訳文を書くのが怖くなるはず。その怖さがあれば、「誤訳をしない」をさらに進め、「誤読される危険性をなるべく低くする」まで行けるのではないかと思う。

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