トレーニングの量について
知り合いのところで、オーバートレーニングの話が盛り上がっている。それを見ていて、思った。そうか、このあたり、意外に知られていないんだ、と。
私は、わりと早い段階でコーチについてパワートレーニングを始めたし(2015年末からPeaks Coaching Groupのゲンさんにメニューを組んでもらっている)、それもあって、PCGのパワートレーニングセミナーなどもなるべく聞くようにしているので、「休むのも大事なトレーニング」は基本のひとつになっている。
まあ、振り返って考えれば、休むのも大事なトレーニングだよって、(PCGに限らず)セミナーのたびに言われたり、ゲンさんから送られてくるメニューの休足日にも同じことが必ずといっていいほど書いてあったりするのは、一般に、あまり知られていない、あるいは、頭でわかっていても、つい、休まず体を動かそうとしちゃう人が多いってことなのかもしれない。
ゲンさんのメニューは、(↓)が基本。
- 週に2日は休足日(完全オフあるいはアクティブリカバリー)
- 3週オン、1週オフ(3週がんばって1週軽め)
で、実際にどうしているかというと……
ゲンさんについた最初のころ(2016年)は、メニューどおりを心がけていた。休足日は休むし、もっと乗りたいなと思っても、時間も強度も指定内に納める。ま、トレーニングメニューそのものが完遂できなかったりもよくあったくらいで、余裕もあんまりなかったんだけど、さ。
半年か1年くらいたつと(2017年)、トレーニングメニューは基本的にこなせるようになった。内容によって下限ぎりぎりだったりするが、ものによっては上限近くでできる場合も。このころから、週末にだれかと一緒に走るときなどは、指定より時間やTSSが大きくなっても気にしないことにした。月曜日は休足日のことが多く、そこで回復して、翌週のメニューがちゃんとできる範囲ならいいやということで。
その翌年、2018年は、ゲンさんにも相談の上、CTLを高めに保ってみた。具体的には、それまで80前後だったものを100弱くらいまで高めた。年が年なので、オーバートレーニングになるかと思ったら、そのほうが調子がよく、力が上がったとはっきり感じられたので、以降は、がんばる期間はCTL 100前後がひとつの目安になっている。
私は通勤がなく、自転車以外はほとんど体を動かさないから、その分、自転車によるTSSが高めでも大丈夫ということなのかもしれない。
2019年は、2018年と同じでCTL 100前後を目安に。
そして、今年、2020年は、CTLを一段高くしたらどうなるのだろうと、110前後を目安にしてみようと思っている。
この記事は量に焦点を当てているし、質については、ゲンさんにお任せ気味なのだが……今年は、年初からLSDなどベースライドに力を入れてみた。その後も、コロナで実走が少なく、ベースライド寄りが多くなっているように思う。高強度はZwiftのレースが中心、かなぁ。まあ、高強度は比較的短期間で戻るらしいから、実走できるようになればおっつけ回復するだろう。
ともかく、そんな感じで、少しずつトレーニング量を増やしているわけだが、その際、注意しているのがオーバートレーニングだ。
■週間TSSを目安に
TSSは、Training Stress Score。つまり、体にかかった負荷を数値化したものだ。トレーニングの内容や体質、体調などによっては体感的な負荷とずれたりするが、それでも、かなりいい目安になる。
いまは、CTL 110前後を狙っているので、週間TSS 800前後を目安にしている。
■休足日は守る
ゲンさんからのメニューだけだとCTLがあんまり上がらないので、様子を見ながらあちこち少しずつ積み増ししているのだが、休足日だけは守るようにしている。だれかに誘われてどうしても走りたい場合など、休足日を前後にずらすことはあるけれど、なしにしてしまうことだけは避ける。
休むのも大事なトレーニングなので。
■ゲンさんのメニューがこなせなくなったら量を減らす
10本のインターバルが7本でへたったり、それこそ、3本でへたったりしたら、あるいは、10分キープの出力が7分とか5分で耐えられなくなったりしたら、それは、たぶん、疲れすぎだ。PCGではトレーニング後にはコメントを書くことになっていて、私は面倒くさがりで省略しがちなのだけれど、どうにもだめなときは、そのあたりを書くようにしている。そのとき、ゲンさんから返ってくる指令は「休め」だ。メニューも、そのあとしばらくは、軽め中心に変わる。
■体の声を聞く
メニューがこなせないほどじゃないけど、なんか疲れた気がするとか、なんだかんだで走り過ぎたらしく疲れたなぁと感じたとか、そういうときは、ちょっと控えめにするなどこまめに調整する。
後者については、たとえば、先週末のASIA 120kmのあとがまさしくそれだった。前日金曜日にがっつり乗ったので軽く走るつもりが、予想と違って3時間びっちり走ることになってしまったため、翌日、もともとは朝晩2回乗ろうと思っていたのを午後1回に減らし(朝、販売店のミートアップを走ろうと思っていたのに)、月曜日の完全休足日をはさみ(月曜日、おもしろそうなミートアップに誘ってもらったけど、休足日だからとお断りした)、火曜日も朝メニューに夕方もう1回と思っていたのをメニューのみにして、なんとか復活することができた。
■CTLの推移
昨年12月からこっちくらいはこんな感じ。
80から100に向けて上げてくるあたりが一番きつかったかな。Zwiftが増えたころで、休みなく足を回すのにまだ慣れていなかったし。
この週末はCTLが108と当面の目標値に達したので、このくらいの量をしばらく保ってみようかと思っている。その結果、力がついていくのか、それとも、体が疲れて落ちていくのか。さてさて、どちらになるんだろう。
■FTPについて
余談かもしれないが、FTPについてもちょっと書いておきたい。
TSSが目安として機能するには、FTPが正しく設定されていなければならない。でも、ねぇ、FTPって測り方もいろいろあるし、脚質と試験方法の相性もあるしで、それによってけっこう違う値が出たりする。正しく設定って、言うは易く行うは難しなのよね。
私の場合、FTPは、このところずっと260Wということにしている。これで、FTPの××%で×分という形で組み立てられているゲンさんのメニューが、ものによっては下限ぎりぎり、ものによっては上限より上でできるので、トレーニングの基準としては悪くない数字なのだと思っている。
対して、Zwiftレースの記録からZwift Powerが算出した推定FTPは、いま、247W。
両者は、13W、5%も違う。そんなだから、あまり神経質になることもないのだけれど、でも、なにがしかの方法でFTPテストをやってみるくらいのことはしておいたほうがいいだろう。どうにもFTPの設定がおかしい話もよく耳にするので。
で、上記のように、トレーニング基準として適切な範囲に入っていれば、それでいいんじゃないかと。
その上で、つまり、そのFTP設定で、自分にとって適切なCTLはどのくらいなのかを各人が探ることが必要なんじゃないだろうか。目的はCTLを高めることではなく、速く走れるようになることであり、CTLが高いほうが速いわけでもなんでもないのだから。
量は少なすぎれば効果が上がらず、多すぎればオーバートレーニングで体が壊れるわけで。で、どのくらいが適切なのかは、体質にもよるし、自転車以外の生活にもよるしで、人によって大きく違うのだと思う。
参考過去記事:「ホビーレーサーのCTL値はどのくらいなのか」
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コメント
ゲンさんからコメントをいただいた。
経験積むと、私程度でも、FTPの設定が正しいか否か、体感的にわかるはず、とのこと。ちなみに、WKO5という解析ソフトのモデルで算出すると256Wだそうだ。というわけで、トレーニング指標としては、260Wの設定でいいということなのだろう(これが大きく外れてくれば、ゲンさんから、少し下げよう・上げようという話が来るはず、というのも、私の場合はある)。
Zwift効果でテンポ~SSTを長く保つ練習ができたのはよかったのではないかとの指摘もあった。単なるローラー台では拷問で精神的に折れてしまうし、実走だとそういう走りができるところまでの往復に時間がかかってそうそうしょっちゅうはできないしで、いままで、おろそかになっていた部分だ。実際、やり始めたころは、Alpe du Zwiftのせいぜい1時間で足とか体幹とか、あちこちきつくなったのに、最近は、ASIA 120kmみたいに2.5~3時間も走り続けられるくらいになってるもんなぁ。鍛えられていなかった分、効果が出やすかったというのもあるだろう。
それと、ゲンさんの指摘で思い出したのだが、もうちょっとしっかり書こうと思っていたのに忘れた点があった。「週間TSSを目安に」のところで軽く触れているが、CTLというかTSSというかも、どういう走りをしたのかでけっこう違うという点だ。
じっくり鍛えた部分を使う走りだとTSSが大きくてもけろっとしているが、あまり鍛えられていない使い方をするとTSSの割に疲労感が大きく、しっかり休まないといけなくなったりする。Zwiftを始めたころは、足を回し続けるのがつらかった。いま、そこは大丈夫になったわけだが、先日の高強度インターバルはしんどかった。
脚質との相性もあると思う。
投稿: Buckeye | 2020年5月11日 (月) 13時11分