ツール・ド・おきなわ2017(100kmオーバー40)-本番
目覚ましで3時45分起床。
朝時点でCTL 86、TSB 11。去年はCTL 87、TSB 16だから、去年とほぼ同じ、かな。体重は66キロ、体脂肪率9%くらいのはず。調子はいいと思う。目標は、なるべく先頭集団についていく(普久川の登りは後先考えずに踏み倒してもいい)、タイムは去年より5分短い3時間15分。パワーについては、3時間ちょいならNP 230Wくらいまで行けるはず。ちなみに、NPは去年218W、一昨年223Wだ。
雨は降らない予報なので、上はアンダーなしで夏用ジャージのみ。朝は涼しいので、アームウォーマーとレッグウォーマーも装備した。朝食のボックスをもらって、5時15分、ツアーバスでホテル発。
■朝食ボックス
内容は去年と同じ。これを奥のスタート地点につくまで少しずつ食べる。
奥には去年と同じく一番乗りで、テーブルと椅子を確保。自転車を受け取り、最初の上りを上まで軽く走ってアップとする。あと、朝一、いまいち出切れてない感じだったので、早めに列に並んでトイレへ。結果は、いやぁ、行ってよかったわって感じ。
自転車歴もそれなりになってきたおかげで、知り合いが何人もいたので挨拶をしてまわる。
■スマートコーチングの仲間と
■けっこう早くに列ができた
今年はシードに滑り込んだので、列の前に入れてもらえる。
■シードの人たちと後ろに並ぶシード以外の人たち
■今年はアンダー39が先、我々オーバー40が後
10時18分スタート。道幅いっぱいに広がった瞬間、わっと前に出て行く人たちに合わせて私も前へ。500W前後。そのあとは動きが落ちついたので、流れに乗る。2段階で上り切るまで10分45秒、平均273W、NP 284W。
先頭が見えるくらいの位置でピークを越え、下りへ。まあ、悪くないだろう。小さな上り返しは330~360Wくらい。
海岸に出る直前、かなり大きな落車現場を通る。アンダー39だろう。
海岸に出たところで、右車線まで広がりわっと前にあがる人たちがいたので、その流れに乗って前へ。道幅一杯で動きがなくなったまま、しばらく走る。
スタートから約22分。三つ目のトンネルに入る。私は集団のかなり前のほうの右端。暗くなり、全体にすっと動きがなくなったとき、ほぼ真横にいた人が少し前に出た。と、「うわっ」という声とともにこちらに転倒。私の前輪にその人の体が倒れてきたくらいの位置関係だったと思う。(回りにいた知り合いの証言によると、前との車間を詰めすぎてハスったらしい。ちなみに、ハスられたのも知り合い)
これはどうにもならない。当然、巻き込まれで私も転倒。時速40キロメートルでの転倒だ。舗装路をざざ~っと滑っていく。ヘルメットが縁石の角に当たっているらしく、がりがりとすごい音がする。「ヘルメットかぶってなかったら、おれ、死んでるな」と思ってしまった。下手に身動きせず、体に力を入れるでなく抜くでなく、自然体で止まるのを待つ。変に動いてもんどり打つようなことになると大ケガするのは必至だし、力をいれて体を硬くするとどこかに負担が集中したりする。このあたりは、大昔、フィギュアスケートで転びまくっていたころ、身についた動きだ。
幸い、後ろから突っ込まれることもなく止まった。
立ち上がる。うん、立ち上がれた。特に痛むところは……ない。体をあちこち動かしてみる。これまた動くし、特に痛むところはない。見える範囲の擦過傷も確認。肉まで削られてはおらず、皮膚だけですんでいるように見える。これなら走れそうだ。
自転車を起こす。倒れた右側をざっと目視で確認。フレームに傷は見当たらない。後ろに回ってハンガーも確認。曲がっているようには見えない。これなら行けるかも。
ところが車輪が回らない。チェーンは……外れていない。後輪を持ち上げてクランク回すと後輪はきれいに回る。前輪か? あっ引っかかってる。ブレーキのずれかとブレーキをぐいっと回すと前輪も回った。が、ちょっとでまた引っかかる。ブレーキじゃない。あらま、スポーク折れてんじゃん。終わった~(--;)
このあたりで、同じく倒れていたふたりが自転車に乗って走り出す。私の自転車に倒れ込んできたアホは無事かい。ちくしょー。
もうどうにもならない。トンネル内にいるのはよくないだろうと、自転車の前輪を持ち上げて入り口側に戻り、トンネルを出たところで歩道に自転車を上げる。
回収車を待つのか。そうだよな、そういうことになるんだよな。ニュートラルカーに前輪がもらえれば走れるけど……でも、いまさら走ってどうなるんだ? 目標も記録も来年のシードもぜんぶおじゃんになったのに。傷の手当てはしたいなぁ。救急車というほどの傷じゃないから、回収車でゴールまで行って救護室、かな。回収車は最後尾の後ろ。ここで10分止まってもスタートから3時間半でゴール到着。あれ? そのほうが救護室には早く行けるのか。そらそうだ。完走できるならそのほうがかなり早い。じゃ、NP 230Wを狙って走ってみるか。もちろん、ニュートラルカーがこんなところにいれば、だけど。なにせ、オーバー40はスタート最後だもんな。
そんなことを思っているあいだに、集団がいくつか通り過ぎた(140キロなどの集団だったようだ)。
ニュートラルカー、こないのかとあきらめかけたとき、黒い車がハザードをつけて止まってくれた。見ると、アンカーのメカニックさん。やった、ニュートラルカーだ!
助手席から降りた人に「前輪やられました!」と申告。運転席の人がホイール貸し出しのタグを書いているあいだに、助手席側の人が前輪をつけてくれた。「ブレーキシューが違うので気をつけてくださいね」「がんばって!」の声を背中に走りはじめる。
ただ、なんか違和感がある。なんだろうと思いながらゆっくり気味に少し走ったところで気づいた。ハンドルが曲がってるんだ。トンネル内で止まると後ろから突っ込まれそうなので、トンネルを出るまでそのまま走り、出たすこしあと、修正する。
改めて走り出したところでもうひとつ気づいた。左のブラケットが少し内側に入っている。といっても、ホントに少しなので、このくらいなら修正などせず走っても問題ないだろうと判断。
さあ、あとは全編一人旅を覚悟だ。下ハンドルを持ち、時速40~45kmで巡航。きつい。7分ほど走ったところで、右から抜いていく人がいる。え、後ろから速い人が来るとは思ってなかったんだけど? あ、後ろにひとりついててふたりトレインだ。ここは踏ん張りどころと必死で食らいつく。
メンツは、140kmの人とアンダー39の……ゼッケン1番??? アンダー39って我々より前のスタートだし、ゼッケン1番って優勝候補じゃん。なんでこんなところ走ってんの?
「もしかして、海岸線直前のあの落車ですか?」
「はい、やられました……」
ああ、やっぱり。
海岸線から分かれ、ゆるい上りに入ったところで140kmのひとはちぎれ、アンダー39ゼッケン1番とふたりになる。このあたりはまだついて行けるが、坂が急になったらたぶんついていけない。なにせ生きのいいアンダー39、しかも、ゼッケン1番なのだ。
「このあと、ついて行けないと思うので、いまのうちにお礼、言っときます。ありがとうございました。後ろから速い人が来るはずないとあきらめていたのですが、おかげでずいぶん楽をさせてもらいました」
「いえいえ、こちらこそ助かりました」
そんな会話をした少しあと、斜度がきつくなる。そうなったら一瞬で見えなくなるかと思ったら、意外についていける。私の調子がいいのか、ゼッケン1番の調子が悪いのか(落車でどこか痛めた、とか)。でも、しばらくしたら、地力の違いが出たのか、じりっじりっと離れていく。まあ、仕方ないわな。
というわけで、ある意味たんたんと、でも、一応、ひとりで走れるぎりぎりを狙って上っていく。
海岸線から普久川のピークまで22分くらい。NP 268W。私のFTPは264Wだから、ほぼ限界値だったと言える。これ以上は集団に食らいつき、アドレナリン補正がかからないと無理だろう。
普久川の給水所では、飲み上げたボトル1本を捨て、水のボトルをもらう。残っている1本がスポーツドリンク系だからだ。さらに、もう1本、水をもらい、ちょっと飲んで中身が水であることを確認した上で(前日、藤田さんに言われたこと。たま~に中身が違ってたりするそうだ)、まず、擦過傷部分にぶしゃーとぶち当てる。痛いわ~。後半の廃棄場所までまだちょっとあったので、首筋などにもかけておく。
普久川の下りは踏む。踏める瞬間は必死で踏む。50/11じゃ、ギア足んないじゃん。去年は足りると思ったんだけどな。かなりの人数を抜き、学校坂前の平坦部分へ。少し前に集団がいたので、そこまで踏んで追いつく。
休む間もなく学校坂へ。ピークまで19分30秒くらい、NP 236W。
ピーク後のアップダウン区間だったと思うが、140km主体のグルペットに吸収された。ひとり、みんなに声をかけている人がいる。「乗っていきませんか~?」「きつかったら、引くの5秒でも1秒でもいいからね~」「もうちょい落として。まだ先は長いんだからもたないよ~?」という具合だ。ちょい遅い気はするのだけれど、じゃあ、先行してどうなるのかって言えば、しばらくしたらまた吸収されるであろうくらいには速い。というわけで、ローテーションに貢献しつつ、このグルペットのお世話になることを決める。
学校坂後の平坦区間、慶佐次の補給所、安部前の4連ピークまで、それなりにメンツが入れ替わりつつ、5~15人くらいの集団で走り続ける。途中、100キロの人がひとり、左右にふらふらしながら走るのには閉口したが、その人以外は、それなりにローテーションができる人ばかりで助かった。あああと、15人くらいになると前数人から7~8人までのローテーションになっていたけど、それは仕方ないんだろうな。しばらくすると後ろはちぎれてたりしたし。
4連の下りでふと気づいたら、このグルペットを置き去りにしていた。それならそれなので、平坦部分はあたりの人数人とまとまって走る。ただ、ペースが遅い。だが、これまた、ひとり先行してもたいして違わないはずで、仕方ないなぁと足を休めることに。と、この最後の海岸線の真ん中あたりで、さっきのグルペットの人たち4人ほどが抜いていった。けっこうな速度差なのだが、これは乗る一手。ダンシングで500Wくらい振り絞り、ブリッジする。さすがにきついので、ローテーションは少しさぼらせてもらった。
右折して海岸線を後にすると、緩い上りに入る。ここを時速35~40kmで駆け上がる。きつくて頭が下がりがちになる。例のよく声をかける人から「少し落としますか? きついですか?」と言われたが、「ついていくだけならなんとかなります。前は引けませんが」と答える。
そんなこんなをしているうちに、最後の山場、羽地ダムの上りにかかる。去年の高岡さんのデータを思い出しつつ、私にしてはダンシング多めで上っていく。データを見ると、シッティング235W、ダンシング236Wと、軽い踏みのダンシングはうまくできたようだ。ケイデンスは、高岡さんと違い、シッティング76rpm、ダンシング67rpmと変動しているけど。
トンネルから右折したあとの斜度がきついあたりは、ダンシングオンリーで上がっていく。340Wほど。最初のピークまでの時間は7分弱だった。NP 244W(時間が短いのであんまりあてにはならない数字)。
このあとはアップダウン。下りで極力スピードに乗り、上りの前半はギアを落としながら高ケイデンスでスピード維持を心がけるという形で越えていく。得意なパターンなので、上り返しになった瞬間、何人もがんがん抜いていく。小さなピークふたつは勢いが死ぬ前に越えることができた。去年はこんなに楽に走れなかったぞ、ここ。
3~4連ピークがある感じなのだが、すべて越えたあとの下りは一人旅。ここもぎんぎんに踏んでいく。ギア、足りないなぁ。
ちょっと平坦になるあたりで少し前に数人の集団が見えたので、平坦もがんばって踏んでそこに追いつく。210kmと140kmの混走グルペットだ。この人たちと残りを下り、川上関門まで突っ走る。
川上の交差点を左折後は、さっきのグルペットを中心にあたりにいた人10人くらいがまとまって走る。時速40~45km。
このグルペットはイオン坂で崩壊。私は3番手くらいで坂にかかり、先頭で越えたように記憶している。下りに入り、前にいる人たちを眺めるが、みんな遅くてついていっても仕方ない感じ(下り、踏もうよ~)。どうしようかなと思った瞬間、後ろからぶち抜かれた。210kmの選手だ。と、少し前の140kmの人が張り付く。これは乗る一手だろう。400Wくらいでブリッジ。これで3人トレインだ。そのまま、残りの下りは時速50km前後、平坦になっても45km強で走り続ける。けっこうきつい。後ろにつけば230Wくらいだが、先頭に出ると300W超。だれか加わったようで、気づいたら4人になっていたが、4人いても先頭の疲れがとれないうちにまた先頭が回ってくる感じ。
カーブを曲がるとゴールが見える。うーん、前に100kmは見えないなぁ。あとはいくらがんばっても順位は変わらずかぁ。
最後、140kmの人ふたりは腰を上げたが、私は、シッティングのまま速度維持でゴール。競るべき相手もいないし、じゃましても悪いし、なにか下手をうったりしたらアホなだけだし。
といっても、4人トレインがひとりになるわけで、出力は、最後、400W前後まで上がっていた。
ゴール直後、サイコンを止める。3時間26分かぁ。もらい落車で止まったの、何分だったんだろ。5分ということはなく、10分くらいあったんじゃないかと思うのだけれど、人間の時間感覚ほどあてにならないものはない。でも、去年並みの実質時間では走りきってるわけだ。
(記録を見ると、7分30秒+ハンドル修正40秒の合計8分10秒止まっていた)
チップ返却のあたりで「いつもブログ読んで参考にしています」と、やはり、100km参加の人に声をかけられた。このブログ、自分の心覚えというのが基本なのだけれど、けっこう読んでくれている人がいるらしい。
ツアー仲間がいるあたりにいくと、みんなが声をかけてくれた。もらい落車の瞬間を後ろから見ていた人がふたりほどいて、かなり激しく転んだ、あれは大丈夫だろうかと心配してくれていたらしい。しばらくしたら、抜いていくのも目撃されていて(私は必死で回りに目が配れていなかった^^;)、走れるならそんなにひどいことはなかったんだろうという話も仲間内に回っていた。
■ゴールのわりと直後
自転車をそのあたりに置き、救護室へ。といっても、水道水で洗ってガーゼを当てるくらいしかできることはないんだけど。
ツアー仲間に整形外科のお医者さんがいたので、状態を軽く確認してもらう。肩鎖関節脱臼もなさそうだし、肩のなんとかいう筋肉が切れていることもなさそうだ、たぶん、擦過傷と多少の打ち身だけだろう、不死身だねと言われた(^^;)(このお医者さん、私のすぐ後ろで転ぶところを目撃したらしい)
前輪が壊れていて自転車に乗れないので、ホテルへはタクシーで戻ることに。途中、ドラッグストアに寄ってもらい、傷の手当てに必要なものを買う。整形外科のお医者さんには、フィルムタイプのものがいいと言われたが見当たらず、ガーゼのついた大きな絆創膏みたいなものを多めに購入。擦過傷はじくじくと水分が出てくるので、夜と朝と翌日の昼間とくらいは交換しないといけないだろうから。
自室に戻り、改めて鏡で自分を確認してみた。ぞっとした。
■首筋のすぐ後ろがぼろぼろ
これ、よくジャージだけですんだな。首やられてたらよくて救急車、下手すりゃ○○車だぞ。
■ヘルメットもぼろぼろ
擦過傷は、右肩、右腕、右腰、右すねの4カ所。あとは、両手の甲に小さな傷がいくつかあるだけ。ただ、救護室でつけてもらったガーゼからしたたるほどウェットになっていたので、打ち上げまでに、一度シャワーで洗い、ガーゼを変えておく。ぬるま湯にしたのに、シャワーが当たると痛いこと。
■打ち上げはホテル近くの沖縄料理店
ツアー参加者のなかで、藤田涼平くん(藤田さんの息子さん)が100kmアンダー39で優勝。写っているのはチャンピオンジャージだ。
打ち上げ後、藤田さん親子など数人とホテルのバーで2次会。去年に引きつづき、裏話的なことをいろいろとおうかがいした。
部屋に戻ったあとは、自転車のパッキングなど、すべて翌朝回しにしてベッドに倒れ込む。
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コメント
はじめまして、
吉祥寺のCWSで自転車に乗っている太田と申します。
落車にも関わらずリカバリーされての完走凄いですね。
以前から何度かブログは拝見した事があったのですが、この記事は同じ位の目標タイム設定されている方の視点からのレースの振り返りとして興味深く読ませて頂きました。
今回はツールド沖縄のスタート前の写真に自分が写っているので、参加の思い出にコピーを頂けないかなと思い連絡させて頂きました。
突然の依頼で恐縮ですが、ご検討お願いします。
投稿: 太田 真 | 2017年12月 4日 (月) 18時30分
写真、いいですよ。ここにアップしてあるのは縮小したものなので、メールアドレスをお知らせいただければ元サイズをお送りしましょう(プロフィール欄の一番上から私宛のメールが送れます)。「シードの人たちと後ろに並ぶシード以外の人たち」というほうの写真かなと思っていますが、それでまちがいありませんか?
CWSは、イベントでご一緒してお友だちになった方も入られてます。私も、どこかのチームに入れてもらおうと検討したとき、CWSとなるしま立川でだいぶ迷ってなるしまさんにお世話になることにしたなんて経緯があります(車のときなるしま立川さんのほうが行きやすいのが決め手になりまして)。
投稿: Buckeye | 2017年12月 5日 (火) 22時15分