補給のやり方
2015年夏と1年以上も前に書いて忘れていた記事があった。遅ればせながら、アップロードしておく。
冒頭、「先日来、補給食がおいしいのまずいのと書いているが」とあるのは、(↓)だ。
ちなみに、最近の補給食は、「フルーツたっぷりのケーキバー」と「ひとくちういろう」が中心。レース時はゼリー。
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先日来、補給食がおいしいのまずいのと書いているが、ついでなので、その摂り方についても書いておこう。雑誌やネットの情報をもとに私がこう考えている、というもの。
考慮すべき点がいくつかある。
■パフォーマンス
どういうパフォーマンスが欲しいのか。それによって補給の仕方も変わってくる。基本は(↓)といったところか。
- レース……走行時間中、常に自分の最大パフォーマンスを発揮したい。補給は足りないより少し多いほうがいい。
- ロングライド……ハンガーノックにならなければいい。体重コントロールの一環としても活用したいので、補給が多すぎてカロリー収支が黒字になるのは避けたい。
■消費カロリー
消費カロリーによっても、最適な補給量は異なる。
消費カロリーは、いまの私だと、だいたい以下のレベル。
- ヒルクライムレース……800kcal/hr弱
- エンデューロレース、ロードレース……500kcal/hr前後
- ロングライド……400kcal/hr前後
運動強度にもよるが、この半分くらいが炭水化物由来(というかグリコーゲン)、半分くらいが脂肪由来になるはず。ただし、もともと体内に1000~1500kcal分はグリコーゲンが蓄えられているので、1.5時間などの短時間なら補給はしなくていい。
■消化吸収
補給というのは、口から入れたら終わりではない。消化、吸収して必要な栄養が体の各部に回って初めて補給ができたことになる。つまり、その分の時間を考え、早めに補給する必要がある。ハンガーノックの前兆が感じられてからでは遅い。
また、消化、吸収して血糖値が上昇するスピードは食品によって異なる。ちなみに、そのあたりを示すGI値というものがある。グリセミック指数というもので、食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを示すもの。ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇率を100とした相対値なので、これが80とか90とか高ければ血糖値がさっと上がるし、逆に、30、20などと低ければ血糖値がゆっくりと変化する。砂糖はブドウ糖と果糖が結合したショ糖なのでGI値高めである。ハチが花の蜜を分解してできるはちみつもGI値は高めになるが、アカシアなど、種類によっては低めになるものもあるらしい。メープルシロップは樹液を煮詰めたもので糖分の分子量が大きく、GI値は低めだという。機能性飲料などに使われるマルトデキストリンはGI値が低い(というか、だから機能性飲料などに使われる)。
野菜のなかにもGI値が高いものがある。そもそも根菜類は炭水化物多めだが、なかでもじゃがいもとにんじんはGI値が高く、そういう意味で要注意らしい。
血糖値の変化以外にも、消化吸収については考えておくべきことがある。消化吸収による内臓への負担だ。固形物をたくさん食べると内臓に負担がかかる。レースなど、体力ぎりぎりで動いているとお腹が受け付けないことも考えられるし、消化吸収のために血が内臓に集まり、パフォーマンスが落ちることも考えられる。脂質多めの補給食(お菓子的なバー類は脂質多め)も内臓に負担がかかる。レースなどではゼリーのような流動食がいいと言われるゆえんだ。
■インスリン
血糖値が上がったときの生体反応も考えておくべきポイント。
安静時に血糖値が上昇するとインスリンが分泌され、血中の糖分を脂肪に変えて蓄えようとする。血糖を一定範囲に保とうという制御が効くわけだが、制御系の常としてオーバーシュートが起きる。インスリンが効きすぎて低血糖になってしまうのだ。ご飯を食べたあと眠くなるのは、オーバーシュートで血糖値が下がることも原因らしい(だから、炭水化物を食べないと眠くならない)。
インスリン分泌は、体脂肪を増やすという面でもありがたくないし、だいたい、血糖値を上げるために(高めに保つために)補給をするのに低血糖になるなんて本末転倒としか言いようがない。インスリンが分泌しにくい食べ方を工夫すべきだ。
インスリンは、体が臨戦態勢に入っていると分泌されない。ウォーミングアップがきちんとできているときや走り始めたあとなど、アドレナリンが出てからなら、糖分たっぷりの食品をとっても血糖値の急上昇はない。
■具体的な補給の方法
●前日まで
長時間走行でパフォーマンス重視の場合、前3日ほどカーボローディング(グリコーゲン・ローディング)を行う。ご飯を1杯増やすなど炭水化物を多めにして、脂質カットでカロリーの帳尻を合わせる。脂質を減らすため肉類を減らすなどタンパク質も減るなら、その分はプロテインで補うなどする(タンパク質の摂取が減ると筋肉が落ちる)。目安としては、カロリーの70%を炭水化物にするという話もある。
本式のカーボローディングでは、その前3日ほど炭水化物を減らして炭水化物飢餓状態を作り、その反動を利用してめいっぱいグリコーゲンをため込む、あるいは1週間かけてじっくりローディングするなどとするらしいが、アマチュアのなんちゃってレースならそこまでせず、直前に炭水化物多め、その分脂質少なめを心がけるくらいでいいのではないかと思う。
1.5時間くらいまでのヒルクライムレースなら、特にカーボローディングをする必要はない。ただ、ふだん、糖質カットのダイエットをしているなら、直前3日くらい、普通の食事に戻すべきだろう。糖質カットダイエットをしていると体内のグリコーゲンが少ない状態で推移しているものと思われるからだ。
なお、カーボローディング時も食べ方には注意すべきだろう。炭水化物からががっと食べると血糖値が急上昇し、インスリンが分泌されて脂肪化が進んでしまう。血糖値がゆるやかに変化し、グリコーゲンとして体の各所にため込まれるよう、繊維質のものから食べるなどの工夫が必要だ。
詳しくは(↓)あたりを読むといい。
「グリコーゲン・ローディングに関する情報の整理」(じてトレ)
●当日
当日の食事は脂質を避けて糖質中心とする。ただし、ご飯やパンなどの炭水化物は、血糖値の急上昇に注意しながらスタート2時間前までに食べてしまうこと(消化負担が終わってからスタートできるように)。30分前にはバナナやリンゴなどの果物。15分前にゼリーなどの流動食。
スタート直前の補給はウォーミングアップができていることが前提。アップなしで甘い物を補給すると、インスリンが分泌され、かえって低血糖になったりするおそれがある。特に、GI値が高いものをアップなしで補給するのは危険。
番外編となるが、スタート前1時間ほどかけて500ccのウォーターローディングをしておくといいらしい。
●走行中
消費カロリーの半分前後を補給するイメージ(残り半分は脂肪から提供される)。
補給するものは、体の負担が小さいロングライドなら好きなものでいい。ぎりぎりまで絞り出すレースなら、最低限、脂質の少ないものがいいし、できれば消化吸収が速いものがいい。具体的にはゼリーなどの流動食。どうしても固形物がよければ、脂質の少ないようかんあたりか。
前述の消費カロリーをもとに補給量を考えてみる。
ロングライドなら1時間にエネルギーゼリー1本/バー1本/おにぎり1個+αくらいでいいだろう。エンデューロレースやロードレースは時間あたりの消費カロリーも多いし、運動強度が高い分グリコーゲンの割合が高いのでもう少し多めの補給にしたほうがいいかもしれない。具体的には、エネルギーゼリー1本/40分くらいか。少々過剰補給になるはずだが、覚えやすくエネルギーゼリー1本/30分としてもいいだろう。
なお、もともと体内に1000~1500kcal分はグリコーゲンが蓄えられている。だから、1.5時間くらいまでのヒルクライムレースなら、途中の補給はなくてもいい。体内グリコーゲンを勘案すると、エンデューロレースやロードレースでも、よほど長時間でなければ、エネルギーゼリー1本/1時間で大丈夫かもしれない。
●走行後
走行中の補給量にもよるが、走行後も補給して枯渇した体内のグリコーゲンを回復させたほうがいい。そうしないと筋肉の分解が進むらしい。
走行後の補給は、タンパク質も摂ったほうがいい。壊れた筋肉の修復に必要だからだ。
タンパク質の摂取は、運動後30分以内がゴールデンタイムだと言われているが、何時間かたってからでも同じだとの研究結果もあり、よくわからない。
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