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2014年8月11日 (月)

ボクサーロボ、スパイダーロボの工夫

我が家の子どもたちは、芝浦工大ロボットセミナーでタスカー、ボクサー、スパイダーといろいろなロボットを作ってバトル大会を楽しんだ。どうせバトルをするなら勝ったほうが楽しいわけで、勝つための工夫もいろいろとした。その工夫について、当時、明確には公開せずにいた部分について書いておこう。

ちなみに、子どもが知らないような知識を利用した部分もあってその部分は親が手助けしたことになるが、基本的に、なにをどうするのかは子どもたちと話し合い、彼らにアイデアを出させるという形をとった。そうでなければ、私がマシンを作って子どもたちはゲーム感覚で戦うだけになってしまい、物作りや問題解決の体験ができずに終わってしまうので。

■脚部の抵抗低減

タスカー、ボクサー、スパイダー、いずれの場合も脚回りの仕上がりが勝負を大きく左右する。タスカーやボクサーのように1対1で勝負する競技は当然だ。脚回りの仕上がりがよければ動きが速くなるので、下を取られても後退して逃げられるし、こちらが下に入れば相手を逃がさず追いつめられる。

どうすれば動きのいい脚が手に入るのか。

まずは正しく組むこと。組み方がまちがっていたのではどうにもならない(バトル大会では、組み方がおかしいケースをけっこう見かけた)。

次は調整。可動部を締めすぎれば抵抗が大きくなるが、緩めすぎてもガタが出て動きがぎくしゃくする。ナイロンナットの締め方を調整し、ガタつかず、スムーズに動くようにする。このあたりは感覚的なものなので、くり返し調整して感覚を身につけるしかない。

ここまではセミナーでも説明されるところ。我が家は、もう一工夫してみた。金属同士が滑るところにテフロンのワッシャーをはさんだのだ。テフロンは摩擦係数が一番小さい物質として知られているので、こうすればしゅう動部の摩擦がかなり小さくなるはずだ。

まあ、油を差すっていう方法もあるわけなんだけれど(スパイダーは脚部しゅう動部をグリスアップとなっている)。ただ、オイルは締めておきたい部分や摩擦係数を大きくしたい床と接する部分にまで飛んだりしかねないので、できれば避けたいと思った。

使ったのは、東急ハンズで買った1tのテフロン板。革細工などに使うポンチで10mm直径の円を打ち抜き、その中心に3.5mmだかの木工用ドリルで穴をあける(金工用ドリルだと最初が滑ってあけにくい)。最初はこんな感じで自作したのだが、最後のころは、秋葉原のネジ専門店にテフロンワッシャーが売られているのをみつけたのでそちらを使った。

テフロンワッシャーは金属ワッシャーより厚いため、固定ネジを少し長くする必要がある。タスカーやボクサーは普通のネジなので交換すればいいだけだが、問題はスパイダーで、頭がない棒状のネジが必要になる。だから「ビスの頭を切り落とす」なんてことをしたわけだ。

■高速ギアボックスのギア欠け防止

スパイダーでは、ギアボックスを高速パターンにするとギア欠けの心配がある。理由は、「ロボットセミナー@未来館-バトル大会当日のどたばた」で書いたように、「4段階減速までは低速バージョンと同じで、そこから1段、加速する構造」となっているからだ。欠けるのは最後に加速するときの大径ギア。かなり強い力がギアの歯にかかるのだから当然だ。いろいろなパターンに対応できる安価なキットとするため、こうなったのだろう。

このギアが欠けないようにするにはどうしたらいいのか。実は簡単なことで、「4段減速+1段加速」を「3段減速」にしてしまえばいい。減速・加速の割合は同じなので(同じギアを使っているので)、これで高速パターンと同じ減速比になる。

スパイダーのセミナーでは「支給されたギアボックスを使うこと」となっていて、自分で用意したギアボックスを使うことは禁じられている。「3段減速」の場合、使っているのは支給されたギアボックスなので減速比が変わってもいいのかもしれないが、こういうレギュレーションがある理由は、速度などを自由に変えられないようにすることで、法の精神を考えるなら減速比が変わるのはまずいだろう。「3段減速」なら減速比も変わらないので、そういう意味でもぎりぎりセーフかなというところ。

問題となるのは、「3段減速」の場合、最終となるギアの軸受けが貫通でないこと。貫通軸受けでないと、脚を動かす長い軸が取り付けられない。

どうするか。簡単だ。3段減速最終ギアの軸受けを貫通にしてしまえばいい。ギアボックスの筐体はプラスチックなのだから、ドリルで簡単に穴があく。ずれたり斜めになったりしたら筐体がおしゃかになるので注意が必要だが、加工そのものは難しくない。

脚との関係は、取り付け位置の調整でOK。4段減速の低速パターンと4段減速+1段加速の高速パターンで長い軸が出てくる位置がずれるが、そのずれ幅と同じだけずれるので(同じギアで同じように加減速するからそうなる)、低速パターンと高速パターンが取り付け位置の調整でOKなら、当然、3段減速の高速ギアも取り付け位置を調整するだけで大丈夫なわけだ。

■リモコンボックスの改造

ボクサー、スパイダーは4chのリモコンボックスを使う。マシン全体を歩かせるのと同じスティックでほかの動作もコントロールするわけで、あわてると、動かしてはならないタイミングで脚以外を動かしてしまったりする。こばっかいの友だちが地区予選で苦戦したのもこれが原因だし、2010年全国大会の決勝、引き分けが続いたあとのVゴール方式で相手の子がミスったのもこれが原因。

これについては、スティックが左右に動かないようにストッパーを挟む(2010年全国大会決勝の相手が取っていた対策)のほか、リモコンボックスを改造してスイッチを増やし、特定のとき以外は動かさない(特定のとき以外に動かすとまずい)回路はそちらのスイッチでコントロールするといった改造が考えられる。我が家も2009年の全国大会用マシン、「コッコチャン」ではスイッチ増の改造をしていたし、ほかにも同じような改造を施している参加者が何人もいた。

■プラスチックネジの採用

スパイダーはピンポン球の取り込み機構などが意外なほど重く、重量の上限を超えてしまうことが多い。そのため肉抜きなどが必要になるのだが、軽量化策のひとつとしてプラスチックビスを採用した。プラスチックなので金属ビスより軽い。強度も落ちるが、どうせそんなに大きな負荷がかかることはないので十分なレベルは保てる。

■レギュレーションで禁止された改造

以下は、少なくとも我が家が参加しているあいだにレギュレーションで禁止されてしまった改造。その後、またレギュレーションが変わってOKになっていなければ使えないパターンだが、なにをどう考えたのかの記録として書いておく。

●脚部先端の改造

タスカー、ボクサーは、脚部先端のゴム足を大きなものにするだけでかなり強力になる。ゴム足の半径が大きくなるので接地しやすくなることと、足の長さが実質的に伸びるので移動速度が速くなることが大きいのだと思う。ゴム足表面に摩擦係数が大きいものを貼り付けるのも効果的だ。我が家の場合、脚の両側にゴム足をつけるとともに、そのあいだ、つまり脚部そのものにもゴムを取り付け、機体が左右に揺れてもゴムのどこかがそれなりに床面につくようにした。

2008年の全国大会で大問題となった脚部は、これをさらに発展させたもの。なるべく長時間、広い面積が床につくよう、脚の運動に合うようにカーブさせたアルミ板で脚底部を作り、そこにゴムを貼ったのだ(ゴム以外の摩擦係数が大きいものを貼り付けるのはすでに禁止されていた)。

芝浦工大ロボットセミナー全国大会-雑感」でも書いたように、このあたり、いろいろと工夫しがいがあるところだし、その結果がはっきりと性能に現れるので、子どもにとってはやりがいがある部分だと思うのだが……少なくとも我が家が参加していた最後のほうは「脚部の改造は全面禁止」となってしまった。

●電源の工夫

最後は「単一電池2本の3V」と規定されたので電源を工夫する余地がほとんどなくなってしまったけれど、最初のころは規定が「支給されたリモコンボックスを使うこと」だけだったので、いろいろな工夫があった。

まずは電池。我が家もボクサーではやっていたのだが、スペーサーを入れて単三など軽い電池を使う人がけっこういた。大きめの電流を取り出したときの電圧降下を考えると単一のほうがいいのだけれど、重量制限をクリアするなどの目的で軽い電池を使うケースがけっこうあったのだ。

我が家の場合、小さな電池として本数を増やし、スイッチで電圧を切り替えられるようにしたことがある(2008年全国大会のマシン検定でダメと言われた改造)。ここぞというときだけ電圧を高め、モーターの回転を上げようというわけだ。高電圧でずっと使うとモーターが焼けるので、ニトロによるブーストのようにごく短時間しか使えない。

我が家はやらなかったが、ボクサーでは、ロボット本体に電池を積む形がけっこうあった。リモコンボックスは4chだが、実際の操作は3chのみなので、1ch分空いているコードを使ってロボット側から電源を引いてくるわけだ。ボクサーの場合、本体は重いほうが押しまけなくていいし、引き分けたときには重量が軽い方が勝ちなので、全体を軽くしつつ本体を重くという意味では優れたやり方だろう。これはいまのレギュレーションでも使えるかもしれない。電線の長さが倍になるのでその抵抗も倍、つまり電圧降下も倍になるのをどう見るか(かなり細い線でもあるし)という問題はある。

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コメント

Buckeye様、こんにちは。
今年の芝浦工業大学ロボットセミナーで、息子がボクサーを作っています。チャックと申します。
息子さんが何度も全国大会に行かれた強豪ということで、とても勉強になります。
お聞きしたいのですが、テフロンのワッシャーというものがあるのですね。失礼ながら真似させていただきたいのですが、それを挟む場合、金属のワッシャーは使わないのですよね?
というのは、部品の全てを使わなくてはいけないというルールがありまして。私は全くの門外漢なもので、教えていただければ助かります。

投稿: チャック | 2016年3月 8日 (火) 23時15分

チャックさま、

少なくとも我が家は、テフロンワッシャーのみを挟む形で組んでいました。擦れ合う部分の摩擦を小さくするという意味では、金属ワッシャーが入っていて悪いことはないはずなのですが、ワッシャー部分の厚みが厚くなりますし、ここが厚くなると不要なガタにつながる恐れもありますしで、基本的には、テフロンワッシャーのみのほうがいいはずだと思います。

>部品の全てを使わなくてはいけないというルール

芝浦工大ロボットセミナーのルールもいろいろと変わっていくようですからね。上記ワッシャーをどう考えるべきかは、現状のルールがどうなっているか次第であり、その部分については、私ではなんともわかりません。

「部品の全て」というのもなにをどこまで指しているのかわかりませんし。たとえばギアボックスなどは複数の組み方ができるようになっていて、どう組んでもなにか部品が余るはずで、そういう部分まで含めて「部品の全て」と言っているとも思えませんが……。あと、部品を使わなければならないとして、それをどこでどう使えば使ったことになるのかもルールでどう定められているか次第ですよね。テフロンワッシャー採用で余った金属ワッシャーを飾り部分に使ったら使ったことになるのかならないのか、とか。

定められたルールの中でどこまで新しいアイデアを思いつけるのかというのも、モノ作りとしてとてもいい勉強になると思うので、息子さんと、ルールを読みながらどこまで許されているのかなど、いろいろ考えてみられるのがいいのではないでしょうか。

投稿: Buckeye | 2016年3月11日 (金) 12時07分

久しぶりにこの記事を読んで、書きわすれていることがあったのに気づいた。

スパイダーでゴールする際、ふつうは、ゴールに対していい位置になるように操縦で調整する。これが時間はけっこうかかるし微妙な調整になるしで、残り時間が少なくなると焦って失敗したりしがちだ。対して、こばっかいの最後のマシンは、細かな操縦調整なしでシュート位置にぴたっとつけるようになっていた。時間も節約になるし、ミスの心配もいらない。親としては、特殊ケースにも対応できるよう、さらに一歩進めてほしかったのだけれど、まあ、あそこまで工夫できれば御の字だったと言えるだろう。

(ここについては、具体的な記述、やめておきます。汎用性のある話ではないし。ここを検索してみつけた親の功績で格段に強くなるといったことが起きかねませんし)

投稿: Buckeye | 2019年1月16日 (水) 15時10分

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