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2009年9月20日 (日)

ABUロボコン2010ルール日本語版

来年2010年のABUロボコンはエジプト大会。公式サイトができてルールブックが公開されています。ちょっと気が向いたので、このルールブックをざっと訳してみました。

  • 本業が技術・実務の翻訳というプロなのですが、今回のルールブックは仕事のときほど力を入れていません。その点、お含み置きを。
  • 競技ルール後半を中心に、2009年東京大会のルールブックの訳を取り入れています。これ、もともとが英語からの翻訳なのか、日本語が不自然な部分もあったりするのですが、基本的に手を入れていません。
  • 英語版ルールブックには、あちこちタイポ(タイプミス)や間違いがあります(少なくとも私がダウンロードしたバージョンにはありました)。気づいたものについては「(訳注:~)」として文中にメモを入れてあります。
  • 「歴史的背景」でピラミッドのサイズや配置について語っている部分は、なんともはやです。図も描かず、言葉だけでなんとかしようとしないで欲しいですねぇ。まあ、競技とは関係ない部分なのでいいっちゃいいんですが。
  • 図のファイルは翻訳していません。以下のルールと一緒にみればわかるはずですから。

目次
歴史的背景
1. 競技の概要
2. 「競技フィールド」の構成・仕様
3. 三大「ピラミッド」とそのベースの仕様
4. 「ピラミッド」用ブロックの仕様
5. 試合の進め方
6. 「リトライ」
7. 勝敗の決定
8. ロボット製作上の制約・注意点
9. 違反
10. 失格
11. ロボットの安全について
12. チーム構成
13. その他
図3~12

歴史的背景

ギーザのピラミッドをはじめとするギーザ台地の遺跡は、世界的に貴重な宝だと言えます。ピラミッドは代表的な世界的遺産として広く知られています。ギーザには、2km四方の地域にクフ王、カフラー王、メンカウラー王の墳墓とスフィンクスがそびえています(図1)。3人は、いずれもエジプト第4王朝の王で、クフ王のピラミッドが完成したのは紀元前2560年ごろでした。グレート・ピラミッドとして親しまれているこのピラミッドは、「クフ王のピラミッド」とも呼ばれます。ピラミッドの場合、建設した人ではなく、埋葬された王の名前を呼ぶのが一般的なのです。現存するピラミッドは70基あまりですが、その中で最大かつおそらく最も有名なのが、ギーザのグレート・ピラミッドでしょう。世界の七不思議と呼ばれる古代の巨大建造物のうち、唯一、現存する建造物でもあります。[John A.R. Legon, http://www.legon.demon.co.uk/]

図1. ギーザのピラミッドがある地域のバーチャル・イメージ

Merriam-Webster辞典はピラミッドを「底面が多角形、1点を頂点とする複数の三角形が側面を構成する多面体」と定義しています。グレート・ピラミッドは底面となる多角形が正方形です。その一辺は、建設時には230.362mでしたが、建設から数千年で風化が進み、現在は227mとなっています。側面を形成する4つの三角形が集まる頂点は、ピラミッドの頂上と呼ばれます。底部から頂上までの高さは、建設時には146.65mであったと頂上に立てられた鉄製標柱に記されていますが、現在の高さは約137mです。

このピラミッドは、250万個ほどの石材で構築されています。長い年月の間に浸食が進み、外被部分の石材が取り除かれたりしているため、この数字にはかなりの幅があります。石材は平均で1個3トンほどですが、一部には15トンもあるものも使われています。体積は平均で1立方メートルです。グレート・ピラミッドは、この石材を209層(ピラミッドの場合、コースと呼びます)積み上げて作られています。なお研究により、ピラミッドは一般に、上層になるほど石材が小さく、下層ほど大きいことが多いと分かっています。つまり、下層は上層よりも1層が高いことが多いのです。

建築学的観点:ナイル川流域からギーザの三大ピラミッドがそびえる岩の台地に向かうと、最も大きく見えるピラミッドがグレート・ピラミッドではなく、第2のピラミッドであることに驚かされます。グレート・ピラミッドは最初に建設されたはずなのですが、その場所は台地の一番高い部分でも中央部分でもなく、なぜか、切り立った北端近くの低い部分に建てられているのです。ここにピラミッドを建てるためには、谷に近い東側に30mあまりもがけを登る道を作る必要があります。台地の好きなところにピラミッドを建てられたはずなのに、自然な傾斜で登れて便利な中央部分、第2のピラミッドが建っているところを選ばなかったのはなぜなのでしょうか。

第2のピラミッドが建設された部分はグレート・ピラミッドよりも10mほど高く、高さという点では優れた場所ですが、もう少し北西にあるもっと高くてもっと平らな場所をなぜ選ばなかったのか、不思議です。実際に第2のピラミッドが建設された部分は南東に向かって地面がかなり傾斜しており、傾斜をなくす工事が行われています。具体的には、北側と西側の地面を深く掘り下げるとともに、南東側にはピラミッドを支持する基礎を巨石で構築してあります。

第3のピラミッドも、ピラミッド北東部と東側の祭殿は岩盤が低くなっているため、最大で5mもの高さを持つ基礎を建設し、ピラミッドと祭殿を支えています。もう少し西に移動すればもっと平らになるのに、なぜ、ここを選んだのでしょうか。建設が容易という建築学的な観点よりも重要な理由があって、三大ピラミッドは今の位置に建設されたと見るべきでしょう。もう一つ、この台地に建設れさた三つのピラミッドはいずれも一定の配置となっているという特徴があります(図2)。まず、正方形の底面が東西南北の基本方位にきっちり合っています。グレート・ピラミッドと第2のピラミッドはズレが2分(2/60度)以内です。次に、北から南、東から西という2本の軸に沿って、底面の辺とピラミッド間の距離が一定の関係を持つように、北東から南西へと対角線に沿って建てられています。これらの点から設計の底には首尾一貫した考え方があると推測されます。つまり、三大ピラミッドはもともと、全体が計画された上で順次建設された可能性があるわけです。どうすれば、その真偽を検証できるでしょうか。

図2. ギーザの三大ピラミッドの配置

1880年、グレート・ピラミッドを詳しく調査するため、英国から若い考古学者がエジプトにやってきました。目的は、英国単位系とよく似た「ピラミッドインチ」によって設計されたという学説の正しさを証明することでした(ピラミッドインチ学説は後に否定されています)。グレート・ピラミッドの測量だけではもったいないとばかり、この考古学者、W.M.フリンダース・ペトリは、第2、第3のピラミッドなどを含む台地全体について三角測量を行いました。重要ポイントについては、50個所以上を誤差0.1インチ(約2.5mm)以下の精度で測定するという大変な作業でした。この調査では、3基のピラミッドについて基部の発掘も行われ、こののちペトリはエジプト学の道を進むことになります。ペトリの報告書には、3基のピラミッドの寸法と配置、ピラミッド間の距離(基部中心間の距離)、測量の座標といった詳細分析に必要なデータが記録されています。測量された各部の寸法から、全体的な計画が浮かび上がりました。計画は、とてもシンプルかつ正確であることに驚かされます。基本単位となったのは、エジプト王朝のキュービット。これは、ペトリによるグレート・ピラミッドの測量から、20.620インチであると求められています。水平面における平均距離は、以下のように、2~3インチ以内という精度で設計されています。

グレート・ピラミッドは「πの比率」となっています。つまり、基部外周の1760キュービット(1キュービット=0.52メートル)を高さの280キュービットで割ると、円周を直径で割った値(π=22/7)の倍数になるのです。底辺は1辺が440キュービットとなりますが、πの比率を正確に表現するため、280 x π/2 = 439.8キュービットへと微調整が行われています。

グレート・ピラミッドに対し、第2のピラミッドはシンプルな法則で位置が定められています。ただし、第3のピラミッドの配置を考慮して若干の修正も行われています。第2のピラミッドの北面は、グレート・ピラミッド南面からちょうど250キュービット離れた直線上にあります。そして、第2のピラミッドの南面はグレート・ピラミッド南面から1.5 x 440 = 660キュービット離れた直線上にあります。つまり、北面からは2.5 x 440 = 1100キュービット離れています。東西方向についても同様に、第2のピラミッドの西面はグレート・ピラミッド西面から2.5 x 250 = 625キュービットの線上にあります。理由は後述しますが、実際には、1キュービットを625キュービットから引き、1100キュービットに加えられているため、第2のピラミッドの底辺は、1101 - 250 - 440 = 411キュービットとなっています。

第3のピラミッドで、全体の配置が完了します。第3のピラミッドは、東から西へ1417.5キュービット、つまり、おおよそ1000√2キュービット、北から南へ1732キュービット、つまり、正確に1000√3キュービットの位置にあります。この数値は、理論的には以下のように得られます。一辺1000キュービットの正方形を描き、その対角線をとれば1000√2が得られます。次に、1000キュービットと1000√2キュービットの長方形を描き、その対角線をとれば1000√3が得られます。実際の設計では、第3のピラミッドについて「円の正方形化」を行い、それを第2のピラミッドへ相対的に配置するという方法が取られています。一辺500キュービットの正方形を全体計画の座標軸に対して斜め45度に置き、そこに外接する円を描きます。このとき、円の半径は250√2、つまり353.5キュービットとなります。この円の円周、2220キュービット(π = 22/7なので)と外周が等しくなるように第2の正方形を作ります。つまり、第2の正方形は一辺が555キュービットとなります。なお、第2の正方形は、中心が第1の正方形と同一、敷地全体の座標軸に辺が平行となるように置きます。第2の正方形の辺が第1の正方形と交わる点が第3のピラミッドの辺の位置を示します(訳注:intersection "wit"は"with"のタイポ。また、交点は8点存在するが、そのうち南側の2点が第3のピラミッドの南面と同一線上にあるということを指していると思われる)。なお、第3のピラミッドの大きさは、555 - 353.5 = 201.5キュービット四方です。円の半径、353.5キュービットは、第2のピラミッドの西面から第3のピラミッド西面までの距離となります。この距離は、敷地全体の同じく東西方向の計画サイズ、1000√2、つまり1414キュービットのちょうど1/4です(実際の全体サイズは、353.5 + 624 + 440 = 1417.5キュービットとなります。)。南北方向については、第2のピラミッドの南面延長線が上記の円に外接するようになっています。つまり、第2のピラミッドの南面は第3のピラミッドの南面から353.5 + 555/2 = 631キュービット、北側にあります(訳注:原文は353.5 + 555/√2 = 631だが、"√"なしとしないと計算があわない。631はこの後に使っている数字なので、こちらは正しいと判断した)。この結果、全体サイズは631 + 1101 = 1732、つまり正確に1000√3キュービットとなります。だから、624と1101の調整を行い、全体サイズが正確になるようにしたわけです。

このほかにも、グレート・ピラミッドの北西角、第2のピラミッドの南西角、第3のピラミッドの南西角がほぼ一直線に並ぶなど、全体計画にはさまざまな要素が取り入れられています。また、第3のピラミッドは全体の座標軸に対して113度近く時計方向に回転した位置となっており、その結果、そうでなければ0.5キュービット大きいあるいは小さいはずの北東角と北西角から北側の寸法に十キュービット単位の自然数が導入されています。(訳注:the North East and North West "comers"となっているが、定冠詞がついていることから、また、文脈からも表記からも、これは"corners"のタイポだと思われる。「113度近く時計方向に回転」というのは、どこを中心、つまり座標軸の原点と考えているのか不明。「113度近く」から判断して、中央か北東角だと思われる)

1. 競技の概要

競技のメインテーマは、「ロボファラオ」が「ピラミッド」を建設するです。エジプトの巨大ピラミッドを建設した人々をタイムマシンで現代の大学教室に連れてきてしまおうというわけです。彼らに与えられる新たな使命は、三大ピラミッドを順番に完成させること。両チームとも、正確にすばやく、かつ、協調して作業を進める必要があります。なお、ブロック同士を一体化する物質を使うことは禁じられています。3基とも「ピラミッド」の割り当てられた部分を先に構築した勝者チームには、「ロボファラオ」の称号が与えられます。3分の試合時間で、赤チームと青チーム、どちらが速く、現存する唯一の「世界の七不思議」のミニチュアを完成できるのを競います。

2. 「競技フィールド」の構成・仕様

2.1. 競技フィールドは図3のとおりです(図3から図12は末尾に添付されています)。

2.2. 競技フィールドには、「自動ゾーン」が2つ、「手動ゾーン」が1つ、「ピラミッド」が3つ(クフ王、カフラー王、メンカウラー王)あります(訳注:英語はこのように書かれているが、実際のところ、手動ゾーンは赤チーム用と青チーム用の2つがある。チームとして競技できる範囲は自動ゾーン2つ、手動ゾーン1つだということが念頭にあって誤記してしまったのだろう)。「カフラー王ピラミッド」周囲を「自動ゾーンNo.1」、「メンカウラー王ピラミッド」周囲を「自動ゾーンNo.2」とします。

2.3. 競技フィールドの形状とサイズは図4に示すとおりです。「自動ゾーンNo.1」、「自動ゾーンNo.2」、2つの「手動ゾーン」は、高さ100mm、幅30mmの木枠で囲まれています。ただし、FおよびGとマークされた部分の木枠は幅が140mmです。(訳注:FとGは赤チーム側にしか存在しない。常識的に考えて青チーム側も同じ構造であるはずだと思うが、英語と図を見る限り、赤チーム側にだけ厚い木枠がはめられていることになる)

注意)図4はサイズを詳しく示すことを目的の図なので、ガイド用白線は省略してあります。

2.4. 競技フィールドの床には白線が引かれています。白線は、図3に示すように、「カフラー王ピラミッド」と「メンカウラー王ピラミッド」の中心を基準として、中心間間隔500mmで引かれています。白線自体の幅は50mmです。

2.5. 「自動ゾーン」

2.5.1. 「自動ゾーン」は2つの台地に分かれています。2つの台地は、それぞれが2つのセクション、すなわち赤チーム用セクションと青チーム用セクションに分かれています。赤チームと青チームのセクションは、高さ100mm、幅30mmの木製壁で隔てられています。

2.5.2. 「自動ゾーン」(「第1台地」:「クフ王ピラミッド」と「カフラー王ピラミッド」のエリア)には、自動ロボットが使用する「スタート・ゾーン」が4つ、「ストック・ゾーン」が2つあります。RA1、RA2、SRA1/2は赤チーム用、BA1、BA2、SBA1/2は青チーム用です。

2.5.3. 「自動ゾーン」(「第2台地」:「メンカウラー王ピラミッド」のエリア)には、自動ロボットが使用する「スタート・ゾーン」が2つ、「ストック・ゾーン」が2つあります。RA3, SRA3は赤チーム用、BA3, SBA3は青チーム用です。自分のストック・ゾーンにブロック複数をどのように配置するのは、チームが自由に決めることができます。

2.5.4. 「スタート・ゾーン」

2.5.4.1. 「スタート・ゾーン」のサイズは図4に示すとおりです。

2.5.4.2. 床面は、赤チームがRGB (255, 0, 0) の赤色、青チームがRGB (0, 0, 255) の青色に塗られています。

2.5.4.3. 床面は、自動ゾーンの一部であるとみなします。

2.5.5. 「ストック・ゾーン」

2.5.5.1. 「ストック・ゾーン」のサイズは図4に示すとおりです。

2.5.5.2. 床面は、赤チームがRGB (255, 0, 0) の赤色、青チームがRGB (0, 0, 255) の青色に塗られています。

2.5.5.3. 床面は、自動ゾーンの一部であるとみなします。

2.5.5.4. 各チームのストック・ゾーンには、それぞれ、以下のブロックを置きます。

  • 「カフラー王ピラミッド」用……7+2=9個のブロック
  • 「メンカウラー王ピラミッド」用……1+1=2個のブロック
  • 「ピラミッド」ごと……トップ1+1=2個の「ゴールド」・ブロック

2.5.5.5. 各チームは、一部のブロックをロボットに積みこみ、残りのブロックを「ストック・ゾーン」内に自由に配置することができます。

2.5.6. 「自動ゾーン」の色:床面はRGB (0, 255, 0)の緑色で、50mm幅の白線が引かれています。

2.6. 「手動ゾーン」

2.6.1. 床面は赤チーム用がRGB (255,192,192)、青チーム用がRGB (192,192, 255)に塗られています。

2.6.2. 「スタート・ゾーン」

2.6.2.1. 「スタート・ゾーン」の位置とサイズは、図3と図4に示すとおりです。

2.6.2.2. 「スタート・ゾーン」の床面は、赤チームがRGB (255, 0, 0) の赤色、青チームがRGB (0, 0, 255) の青色に塗られています。

2.6.3. 「ストック・ゾーン」

2.6.3.1. 手動ゾーンには、チームごとに1つ、合計2つのストック・ゾーンがあります。

2.6.3.2. 各ストック・ゾーンには、(7+2=9)個のブロックと(トップ1+1=2)個のゴールド・ブロックがあります。

3. 三大「ピラミッド」とそのベースの仕様

図5に、「クフ王」、「カフラー王」、「メンカウラー王」、3つの「ピラミッド」の完成図を示します。ブロックの色は、RGB (255, 210, 110)です。ただし、各チームが使うブロックの上下面は「赤」あるいは「青」に塗られています。ピラミッドの「トップ・ブロック」はRGB (192, 192, 0)の「ゴールド」とします。「ピラミッド」のベースは、図6a、図6b、図6cに示すとおりです(訳注:原文はロボット・ベースとなっているが内容からピラミッドのベースだと思われる)。3つのベースはいずれも、4つの側面のそれぞれ中央に幅50mm、色がRGB (186, 91, 6)の縦線が入っています。

3.1. 「クフ王ピラミッド」

3.1.1. この「ピラミッド」は、ベース(図6a)、中間3層、トップで構成されます。

3.1.2. 下から1番目の中間層には10個のブロックがあらかじめ設置されています(図7)。

3.1.3. 下から2番目の中間層には3個のブロックがあらかじめ設置されています(図7)。

3.1.4. 下から3番目の中間層には2個のブロックがあらかじめ設置されています(図7)。

3.1.5. 各チームは、「手動ロボット」を使って以下のようにピラミッドを組み上げます。

  • 下から1番目の中間層に3個のブロックを置く。
  • 下から2番目の中間層に3個のブロックを置く。
  • 下から3番目の中間層に1個のブロックを置く。
  • 「ゴールド」のトップ・ブロックを置く。

3.2. 「カフラー王ピラミッド」

3.2.1. この「ピラミッド」は、ベース(図6b)、中間3層、トップで構成されます。

3.2.2. 下から1番目の中間層には10個のブロックがあらかじめ設置されています(図7)。

3.2.3. 下から2番目の中間層には3個のブロックがあらかじめ設置されています(図7)。

3.2.4. 下から3番目の中間層には2個のブロックがあらかじめ設置されています(図7)。

3.2.5. 各チームは、1台あるいは2台の「自動ロボット」(A1、A2)を使って以下のようにピラミッドを組み上げます。

  • 下から1番目の中間層に3個のブロックを置く。
  • 下から2番目の中間層に3個のブロックを置く。
  • 下から3番目の中間層に1個のブロックを置く。
  • 「ゴールド」のトップ・ブロックを置く。

3.3 「メンカウラー王ピラミッド」

3.3.1. この「ピラミッド」は、ベース(図6c)、中間1層、トップで構成されます。

3.3.2. 中間層には2個のブロックがあらかじめ設置されています(図7)。

3.3.3. 各チームは、1台の「自動ロボット」(A3)を使って以下のようにピラミッドを組み上げます。

  • 中間層に1個のブロックを置く。
  • 「ゴールド」のトップ・ブロックを置く。

3.4. 両チームが動いてよい領域は、「ピラミッド」を貫く対角線に設置された厚さ30mmの壁で分離されています。「ピラミッド」を貫く対角線を越えて相手チームの領域(相手チーム領域床面の上空を含む)に入ることは、「ゴールド・ブロック」を置く場合以外、禁じられています。

3.5. 「ギーザ・ピラミッド」の「競技フィールド」全体は、図8に示すイメージとなります。

4. 「ピラミッド」用ブロックの仕様

4.1. 「ピラミッド」用ブロックについては、図9に示す仕様で全面がRGB (255, 210, 110)のサンプル・ブロックを主催者側から提供します。

4.2. ベース(図6)には直径18mmの硬質ガイド・バーが複数本、固定されています。ガイド・バーは、それぞれ適切な高さ(300mm、600mm、900mm)となっています。図7のブロックは、このバーを穴に通す形で組み立てます。

4.3. 主催者は、あらかじめ設置されているブロックの上に「ゴールドのトップ・ブロック」を置く際に必要となる軸を用意します(訳注:原文の"axe"は"axes"のタイポだと思われる)。その仕様を図10に示します。ガイド・ピンのボトム・プレート(厚さ2mm)は鉄などで作り、あらかじめ設置されているブロックに溶接あるいは接着します。

4.4. ロボットが使用するブロック(仕様は図11)は、主催者が用意します。

4.5. 「ゴールドのトップ・ブロック」は主催者が用意します(図11)。

4.6. ブロックのサイズと重量は、基本的にすべて同一です。

4.7. ブロックは発泡スチロールで作ります。重量は1個750g前後です。ブロックはサンプルを主催者側から提供します。

5. 試合の進め方

5.1. 試合は、1試合3分間です。

5.2. 試合は3つのフェーズに分かれています。

5.3. 手動ロボットには、試合開始前にブロックを最大で4個、積み込むことができます。

5.4. 自動ロボットには、試合開始前にブロックを何個でも積み込むことができます。

5.5. 1つのフェーズでは、「ピラミッド」1基だけを建設します。

5.6. 手動ロボットは1台のみとします。

5.7. 自動ロボットは1台から3台とします。

5.8. 第1フェーズでは、「手動ロボット」1台のみを使って「クフ王ピラミッド」を建設します。第2フェーズでは、「自動ロボット」を1台あるいは2台使って「カフラー王ピラミッド」を建設します。第3フェーズでは、「自動ロボット」1台で「メンカウラー王ピラミッド」を建設します。3つのフェーズに割り当てられる時間は、以下のとおりです。

  フェーズ1 フェーズ2 フェーズ3
ピラミッド クフ王 カフラー王 メンカウラー王
試合時間(秒) 90 60 30

5.9. 各フェーズは、以下のいずれかが満足されたとき、終了します。

5.9.1. いずれかのチームが下層の構築を終了し、「ゴールドのトップ・ブロック」を置いた場合。この時点で、相手チームはそのフェーズにおける建設活動を停止すること。両チームとも、次のフェーズへと進みます。なお、当該フェーズの残り時間は次のフェーズに追加で割り当てられます。

5.9.2. フェーズに割り当てられた時間がすべて経過し、終了の笛が鳴らされた場合。

5.9.3. 割り当てられた時間が経過する前にフェーズが終了となる場合、審判は笛を吹くとともに旗を上げ、フェーズの終了を告げるものとします。

5.9.4. 次のフェーズは、5.10に定めるように通常の笛が鳴らされたときにスタートします(訳注:原文は参照先が5.9.2となっているが、内容から5.10だと思われる)

5.9.5. 「手動ロボット」の場合、一層がきちんと完成したと審判が判断し、旗を上げたら次の層の建設に入ることができます。旗が上がらないうちに次の層の建設に入ることは禁止します。

5.10. フェーズの終了は笛で合図します。フェーズが残っている場合は次のフェーズの開始も笛で合図します。

5.11. 「ピラミッド」は層ごとに構築してゆくものとします。下層のブロックすべてを正しい位置に置くよりも前に上層のブロックを置くことは禁止します。「クフ王ピラミッド」については、審判が判断し、旗を上げます。カフラー王とメンカウラー王の「ピラミッド」については、試合終了後、各チームのポイントを算出します。

5.12. ロボットのセッティング

5.12.1. 各試合の開始前、ロボットのセッティング時間を2分間設けます。ロボットへのブロック積み込み、ストック・ゾーンにおけるブロックの配置もこの時間に行います。

5.12.2. ロボットのセッティングは、チームメンバー3人だけが行えます。

5.12.3. 2分間でセッティングが完了しなかったチームは、試合開始後にセッティングの続きを行います。

5.13. 試合中

5.13.1. 「手動ロボット」はチームメンバー1人がスタートと操縦を行います。

5.13.2. 「手動ロボット」の操縦者は、クフ王ピラミッドの建設中、操縦器を手にして手動エリア内を自由に動くことができます(訳注:"Manual Area"は原文中、ここしか出てこないため、どの範囲を"Manual Area"と称しているのか不明。「手動ゾーン」のことか?)

5.13.3. 操縦者は、「手動ゾーン」のどこかに「手動ロボット」を停止し、電源を切ったあと、「ゲーム・エリア」を離れるものとします(訳注:"Game Area"は原文中、ここしか出てこないため、どの範囲を"Game Area"と称しているのか不明。「競技フィールド」のことか?)

5.13.4. 「カフラー王ピラミッド」の建設において「自動ロボット」を2台使用する場合、2台とも、「カフラー王ピラミッド」(「第2のピラミッド」)の建設に割り当てられた時間が開始された瞬間以降に、手動でスタートしなければなりません。

5.13.5. 「カフラー王ピラミッド」の建設において「自動ロボット」を2台使用する場合、2台とも、フェーズ終了の笛が鳴った瞬間あるいはその少し後には、手動で電源を切らなければなりません。

5.13.6. スイッチ操作の完了後、自動ロボットのスタートを担当したチームメンバーは、すみやかに「競技フィールド」の外に出なければなりません。

5.13.7. 「メンカウラー王ピラミッド」の建設を行う「自動ロボット」の積み込みとスタートは、手動でも自動でもかまいません。

5.14. 各層にブロックが正しく設置されているか否かは、以下の基準によって、審判が判断します。

25mm以内のずれは正しいと判断します。

この許容範囲をこえてずれていた場合、そのブロックはポイントになりません。

「ゴールドのトップ・ブロック」がこの許容範囲をこえてずれていた場合、そのブロックに割り当てられたポイントの50%がそのブロックのポイントとして与えられます。

6. 「リトライ」

6.1. 「自動ロボット」の動作に不具合が生じた場合、審判の許可を得て、再スタート(「リトライ」)することができます。

6.2. 「リトライ」準備の際、チームメンバーは「ロボット」をスタート・ゾーンに移動することができます。

6.3. 「自動ロボット」にブロックを追加で積むことは禁止します。

6.4. 「リトライ」を行う場合、チームメンバーがスイッチ操作を行ってロボットをスタートさせます。スタートを担当するチームメンバーは、ロボットをスタートしたあと、すみやかに「競技フィールド」の外に出なければなりません。

6.5. 「リトライ」の回数に制限はありません。

6.6. 「リトライ」を前提とした戦略は禁止します。

7. 勝敗の決定

7.1. 「ゴールドのトップ・ブロック」3個を3基の「ピラミッド」の正しい位置に早く置いたチームが勝者となります。すべてのブロックが正しい位置あるいは許容範囲内に置かれた瞬間に試合は終了です。この完全勝利を達成した場合、勝者に「ロボファラオ」(図12)が宣言されます。

7.2. 3分間の試合が終了した時点で、「ゴールドのトップ・ブロック」3個すべてを3基の「ピラミッド」に置けたチームがなかった場合、以下の方法でポイントを算出し、ポイントが多いチームを勝者とします。

7.2.1. 「クフ王ピラミッド」(22ポイント)

  • 下から1番目の中間層はブロック1個が1ポイント
  • 下から2番目の中間層はブロック1個が2ポイント
  • 下から3番目の中間層はブロック1個が3ポイント
  • 「ゴールドのトップ・ブロック」は10ポイント

7.2.2. 「カフラー王ピラミッド」(44ポイント)

  • 下から1番目の中間層はブロック1個が2ポイント
  • 下から2番目の中間層はブロック1個が4ポイント
  • 下から3番目の中間層はブロック1個が6ポイント
  • 「ゴールドのトップ・ブロック」は20ポイント

7.2.3.  「メンカウラー王ピラミッド」(12ポイント)

  • 中間層はブロック1個が2ポイント
  • 「ゴールドのトップ・ブロック」は10ポイント

7.3. 3分間の試合が終了したら、以下のように試合の結果を発表します。

各チームのポイント合計(スコア)を発表します。なお、違反があった場合には、その分を引いたポイント合計がスコアとなります。

「ロボファラオ」の宣言を受けたチームは、追加で30ポイントを獲得します。つまり、チームが獲得できる最高スコアはof108ポイントです。

スコアが高いほうのチームが勝者です。

8. ロボット製作上の制約・注意点

8.1. 1チームが使用できるロボットは、「手動ロボット」が1台「自動ロボット」が1台から3台です。

8.2. ロボットの分離は認めません。

8.3. 「自動ロボット」同士の通信は認めます。

8.4. 大会で使用するロボットは、チームと同じ大学に所属する学生の手作りのものに限ります。

8.5. 「自動ロボット」

8.5.1. 「自動ロボット」は、スタートされたあと、スタートされたフェーズの間、自動で動かなければなりません。

8.5.2. 試合開始時、スタート・ゾーンに置く「自動ロボット」の大きさは、あらかじめ積み込んだブロックを含め、1,000mm(縦)×1,000mm(横)×1,500mm(高さ)以内とします。試合開始後の大きさには制限がありません。

8.6. 「手動ロボット」

8.6.1. 「手動ロボット」の操縦は、有線操縦、もしくは赤外線、可視光線、音波を利用した遠隔操作によって行うこと。電波による無線操縦は認めません。操縦者は、「手動ロボット」に乗り込んではいけません。

8.6.2. 有線操縦の場合、「手動ロボット」と操縦器を結ぶケーブルの長さは、1,000mm以上3,000mm以下とします。ケーブルをロボットに接続する位置は、「競技フィールド」床面から1,000mm以上とします。

8.6.3. 「手動ロボット」の大きさは、スタート・ゾーンにおいて1,000mm(縦)×1,000mm(横)×1,500mm(高さ)以内とします。ただし、上から見たときに、ロボットが直径2,000mmの円内に収まる範囲で、アーム等を伸ばすことができます。

8.7. ロボットの重量:1チームが大会を通じて使用するすべてのロボット、動力源、ケーブル、操縦器、その他の備品を含めた総重量は、50kg以内とします。ただし、同型、同重量、同電圧の予備バッテリーは、総重量に含みません。

8.8. ロボットの動力源

8.8.1. 各チームは、試合で使用するロボットの動力源を、自分で用意しなければなりません。

8.8.2. 各ロボットの電源電圧は、公称DC24V以下とします。

8.8.3. 主催者が危険、または不適切とみなす動力源は使用できません。

8.9. ロボットの安全の細則

8.9.1. 爆発物、火気および危険な化学薬品を使用してはなりません。

8.9.2. レーザーを使用する場合は、クラス2以下としなければなりません。レーザー関連の設計および準備では、どの段階でも現場にいる人間に危害が加わらないよう、細心の注意を払わなければなりません。特に、観客の目にレーザーが届かないよう、方向を調整しなければなりません。

8.10. 試合前日に行われる「テストラン」の前、および当日の大会開始前に、ロボットの検査を行います。検査に合格しないチームは、「テストラン」および大会に出場できません。

参加するロボットについては、本試合前日に検査を行い、本ルールブックに従っていることを確認します。当日の大会開始前にも再検査を行います。ロボットは、大会に参加するため、この検査に合格する必要があります。合格しなかったロボットは、大会に参加できません。

9. 違反

違反があった場合、罰則として2ポイントが差し引かれます。以下の行為があった場合、違反であるとみなされます。

9.1. トップ・プレートについて故意にじゃまをすること。

9.2. ロボットあるいはその操縦者の一部が相手チームのゾーンあるいはその上空に侵入すること。ただし、「ゴールドのトップ・ブロック」を置く場合を除きます。

9.3. 「手動ロボット」が、「自動ゾーン」あるいはその上空に侵入すること。ただし、「クフ王ピラミッド」にブロックを置く場合を除きます。

9.4. その他、失格に該当しない、ルールに抵触する行為。

10. 失格

試合中に以下の行為があったチームは失格とします。

10.1. 「競技フィールド」やその設備・備品、また、相手チームのロボットを損傷する、または損傷しようとすること。(訳注:原文をそのまま訳すと「競技フィールドや相手チームのロボットの設備・備品を損傷する、または損傷しようとすること」となるが、意図は去年の日本ルールと同じはずだと思う)

10.2. チームのロボットあるいはその操縦者が、地上・空中を問わず、「競技フィールド」の外縁から外に出ること。

10.3. 1回の試合で不正なスタートを2回行うこと。

10.4. フェアプレー精神に反する行為。

10.5. 審判の指示や警告に従わないこと。

10.6. 違反を3回、行うこと。

11. ロボットの安全について

11.1. 全てのロボットは、会場にいる全ての人に対して、いかなる場合でも危害を与えないよう設計・製作しなければなりません。

11.2. 全てのロボットは、相手チームのロボット、および「競技フィールド」を損傷しないように設計・製作しなければなりません。

12. チーム構成

12.1. 参加する国や地域は、代表1チームを参加させることができます。エジプトはホスト国であるため、代表2チームを参加させることができます。

12.2. 1チームは、同じ大学に所属する学生3人と教員1人で構成されます。ただし、試合に参加できるのは、学生3人のみです。

12.3. ピットクルー3人も大会に参加できます。ピットクルーは、ピット・ルームでロボットの調整を行う、ロボットを「競技フィールド」に運ぶ手助けをする要員であり、試合には参加できません。ピットクルーは、チームと同じ大学に所属する学生でなければなりません。

12.4. 大学院生は、大会に参加できません。

13. その他

13.1. 本ルールブックに記載されていない行為については、審判の決定にゆだねられます。

13.2. 本ルールブックに記載されている「競技フィールド」や設備・備品などのサイズ・重量は、特別に記載のない限りは、±5%以内の誤差があるものとします。

13.3. 本ルールブックについての質問は、公式ホームページ、「ABU Asia-Pacific Robot Contest 2010 Cairo」(http://www.roboconegypt2010.com)で受け付けます。数多く寄せられた質問については、FAQとして公式ホームページで発表します。

13.4. 本ルールブックに補足や訂正がある場合は、公式ホームページで発表します。

13.5. ロボットの安全性が不確かな場合は、審判が安全性の説明を求める場合があります。

13.6. 試合中、チームメンバー同士、あるいはチームメンバーと第三者が、無線での通話装置や、拡声器などで連絡を取り合うことは禁じます。

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