ABUロボコン観戦
8月22日は「ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト2009東京大会」を家族で観戦。
我が家4人のほか、にこばっかいのクラスメート(母子)、芝浦工大ロボットセミナー全国大会で一緒になったお家のご家族3人、そして、ウチが芝浦工大ロボットセミナーに参加するきっかけになった小学校の先輩(現在、サレジオ高専ロボコン部)とその弟(にこばっかいのクラスメート)という大所帯で見に行った。
我が家では、ロボコン観戦時の恒例がある。応援の横断幕だ。A4に一文字ずつ印刷して持参し、現地で貼りあわせて振るというもの。今回は日本代表ということで、金沢工業大学と豊橋技科大に対する応援とした。
今年の課題はとても難しかった。国内大会もそうだったが、予選を勝ちぬいてきたはずの各国代表でも、第一課題の乗り込みや第二課題の峠がクリアできないところが続出。決勝トーナメントに「ワイルドカード枠」があるため、予選リーグは相手がゴールしても3分間、競技が続く。その間、ずっとスタート地点でごちゃごちゃやってるだけだったりする。
もちろん、技術力が高いところはきちんとこなしていた。決勝トーナメントに出場したところは、乗り込み、峠、林、太鼓と全部の課題を30秒前後でクリアするところが大半。これだけ難しい課題をよくぞここまでという感じ。
ちなみに第二課題の峠は、ロボットが傾く&高さが変化するため、どうしてもカゴが揺れる。カゴが揺れれば、旅人ロボットが落ちたりカゴが前後のロボットにぶつかったりしてリトライしなければならなくなってしまう。ところが上位校は軒並みスムーズに通過する。これだけスムーズだということは……と思って、その部分の写真を撮ってみた。結果は、予想どおり。
●豊橋技科大
カゴの前(自動ロボット)も後ろ(手動ロボット)も、ロボットの傾きに合わせて柱を傾け、垂直を保つようになっている。高さも調整し、カゴの腕が水平に保たれる。だからカゴが揺れないのだ。
●中国
豊橋技科大と中国を比べると、豊橋技科大は下りで少しだけカゴの腕の前が下がる。中国もわずかに下がっているようだが、下がり具合が豊橋技科大よりも小さいように思う。こういう小さな差が安定して19秒をたたき出せたかどうかの違いにつながったのかもしれない。
なお、そのような調整をいくらしても、曲がり角などではカゴが大きく振れる。
●中国の曲がり角
この曲がり角、安定して曲がっていたので、写真で見るまで、こんなに振れているとは思わなかった。
それにしても……カゴの腕が水平に保たれるように柱の傾きや長さをコントロールしていることはわかる。じゃあ、どうやってコントロールしているのか、何を元にコントロールしているのかはわからない。センサなのか進んだ距離なのか……。センサだと加速度で狂いを生じそうだし、振動の影響をどうやって消すのかなど課題が多そうだ。一方、進んだ距離を元にすると、最初に置いた位置が少しずれただけで大きな影響が出そう。マシンを置く場所には縦横の線が引かれているので、それを元に正確に置き、進んだ距離からやってしまうのが比較的楽で精度もそこそこ、かなぁ。手動マシン側の制御もどうやっているのか不思議。あのスピードだからなぁ。
■試合結果
日本の2チーム(金沢工業大学と豊橋技科大)は、両方とも決勝トーナメントに出場したが、金沢工業大学は初戦敗退(ベスト8)、豊橋技科大は準決勝敗退(ベスト4)。決勝は、中国対香港という中国勢同士となった。といっても、安定して19秒の中国対ベストで23秒の香港だから、結果はやる前からほぼわかっているようなもので中国が優勝となった。
ロボコン大賞がどこになったのかは、表彰式の途中で抜けてきてしまったのでわからない。ただ、今回はどの国もマシンがよく似てしまう課題だったことから、その中でピカイチの完成度を誇った中国が取ったのではないかと思う。
■今年の課題について
前述のように、今年の課題はとても難しかった。そのため、観戦という意味からはおもしろくなかった。ごちゃごちゃやっているだけでロボットが動かないのでは、見ていておもしろいはずがない。また、課題が難しいだけに、完成度の高いロボットは毎回、ほぼ同じタイムを出すことになり、これまた観戦という意味でおもしろくなかった。
また、うまく動かなかった国は例年、上位争いに食いこめていないところ。そういう国のレベルが上がってこないと全体的な底上げにはならない。無理な課題にチャレンジしても技術力はつかないので、そういう意味からも課題が難しすぎたと思う。
技術力による差が大きく出る課題だったと言えばそうなのだが、もっとやさしい課題でも、結局、技術力による差は出る。19秒でゴールと第一課題クリア不能というほどの差ではなく、ゴールタイムが20秒と120秒みたいな差かもしれないが。
■運営について
最近のロボコンは高専も大学もNHKがやっているのだが、全体に運営がよくない。特に大学ロボコンはよくない。
現地の音響が悪く、アナウンサーでさえ何をしゃべっているのかよく聞き取れない。まして、インタビューされた学生さんや審査員の言葉なんて、まったくと言っていいほど聞き取れない。高専ロボコンできちんと聞き取れた回と聞こえなかった回があったことを考えると、今回のように聞き取れないのは音響担当者の質が悪いからだろう。
また、今回はABU大会で外国人選手が多かったわけだが、言葉の問題に対する配慮などがなさすぎたと感じる。
1秒を争う競技なのに、審判からの指示を選手に伝えるのに20秒もかかったのではお話にならない。特にリトライさせるかどうかと、リトライのスタート指示が不明確で何度もトラブっていたように見えた。そういう定番のものについては文字で指示するなどの工夫があればもう少しスムーズだったはずだ。
そういう意味で日本チームに乱れがなかったことも気になった。日本チームに対する指示は何語で行われていたんだ? まさか日本語じゃないよね? 開催国にアドバンテージがあるのはいろいろな意味で当然だけど、今回、審判から日本チームへの指示が日本語で行われたのであれば、それは開催国アドバンテージというような話ではないだろう。日本人なら日本語訛りの英語を理解しやすいので、単にそういう話だったのなら、それはそれだと思うが。
運営関連でかわいそうだったのがタイ。予選リーグ第2戦で韓国とあたり、先にゴールしたと見えた(お世話係は「副審の旗が上がったのを見た記憶がある」と言っている)。そのまま、スタート地点で選手は遅れている韓国の動きを見ていた。そのすぐ横には副審。ところが、韓国が太鼓課題に失敗し、リトライを始めたあたりで、あわててリトライをはじめ、結局、韓国が先に太鼓課題をクリア。タイの最初のゴールについて、副審は太鼓が3つとも鳴ったと判断したが、主審は鳴らない太鼓があったと判定した、ということらしい。それならそれですぐにリトライしていればタイがそのまま勝って決勝トーナメントに進んでいた可能性があるが、ゴールしたつもりでのんびりしていたために韓国が勝ったかのようになってしまった。結局、再試合となったが、タイは動揺したらしく、再試合はミスの連発。韓国に敗れて予選敗退となってしまった。
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コメント
先日はお世話になりました。
ブログのトラックバックありがとうございます。
こうして、こちらのブログで写真と専門的コメントを読むと、
あの時のあの状況を詳しく把握できて楽しいですね。
今年の課題は難しかったのでしょうか?
韓国とタイ戦のように接戦が多いと楽しかったと思いますが、
ゴールの設定と判定がはっきりしないと私も思いました。
大差でゴールすればゴール太鼓は一個でも良いと思いますが、
接戦で最後の課題の突入した時、どう判定するか、
決まっていなかったのでしょうか・・・
来年のピラミッドも楽しみですね。
投稿: ゆうたん | 2009年8月24日 (月) 13時14分
かなり難しかったと思いますよ>今年の課題
しかも不確定要素が入りにくいんですよね。スポーツで言えばアイスダンスみたいな感じで、順位がどうなるか、対戦結果がどうなるかといったハラハラドキドキにはなりにくいですね(私は昔フィギュアスケートの選手だったもので、つい、こんなものが浮かんでしまいました^^;)
判定の仕方は決まっていたはずなんですけどね。判定結果を選手に伝えるという部分に問題があったと思います。タイ・韓国戦のすぐ後の試合は、ゴール時、主審がフエを大きく吹き鳴らしてましたけど、かならずフエを吹くってするだけでもずいぶんと違ったでしょう。
投稿: Buckeye | 2009年8月24日 (月) 21時21分
おはようございます。
やはり今年の課題は難しかったのですね。
テーマとしては日本っぽくて面白かったのですが。
(会場の装飾は予選大会の方が、日本的だったと思います)
フィギュアスケートの選手だったのですか!!
すごいですね。
フィギュア見るのは大好きですが、
小学校の時から「体育2」の私ですから、
滑ることすらできません。
投稿: ゆうたん | 2009年8月25日 (火) 07時35分
豊技のロボコンチーム(観客席で応援)の人に聞いたのだけど、
日本:手動ロボットを人間が操縦
中国:手動ロボットなのにほぼオート稼働
だったそうで。国内と海外で異なるルールしちゃったという非道い運営組織ですね。勝てるわけないじゃん!
9月の放送では謝罪するのか、それともまた隠してごまかすのか?
投稿: けーてん | 2009年8月25日 (火) 15時51分
ゆうたんさん、
そうなんです、詳しいプロフィールにもちらっと書いてますが、昔はそんなことをしていました。10年以上やっていましたし、マイナースポーツなので、戦績もそこそこには。
体を使うことはわりと得意ですけど、運動神経がいいからではなく、フィギュアスケートで体の使い方を覚えたのでそれなりにいろいろできるようになったという感じです。
投稿: Buckeye | 2009年8月25日 (火) 22時01分
けーてんさん、
それって、日本では明確に禁止されていたことが中国では許されていたってことでしょうか。
同じルールのもとで選んだ方法が異なるということならいいですけど、もし、ある国ではダメと言われた方法が他の国ではOKとなっていたのなら、大きな問題ですね。競技である以上、ルールだけは同じでないと。
投稿: Buckeye | 2009年8月25日 (火) 22時01分
すみません。映画及びドラマのハゲタカファンなもので変な名前で。
けーてんさんの言われていることは、2ちゃんねるで見ました。
残念ながら、英語のルールブックやQ&Aでは、全面禁止にしてなかったことで抜け道をつくられたような感じですね。
でも、競技の趣旨が「人間とロボットの協調」ですから、手動を限りなく自動化するのはやっぱ確信犯でしょう。
香港もそうだといいますので、ほとんど手動操縦の豊橋が負けても仕方がない。むしろ5秒くらいハンデをもらうべきでした。
投稿: 剥げた化男 | 2009年8月26日 (水) 17時15分
剥げた化男さん、
英語のQ&A、終わってしまったことなので仕方がないかと読んでないんですが、職業柄、英語版の作りが悪かったのかなぁというのが気になります。私に発注してもらえれば、バッチリやったんですけどねぇ(なんちゃって)。
競技は勝ちを目指すものだという考え方も、まあ、一理あるっちゃあるわけで、抜け道を作っちゃったほうのミスと言わざるをえないでしょうね。言わざるをえないんですが……そんなんで負けたなんて、日本代表になった金沢工業大学と豊橋技科大の選手たちがかわいそうです。
投稿: Buckeye | 2009年8月26日 (水) 21時54分
Buckeyeさん ありがとうございます。
私が見た2ちゃんねるはこちらです。
http://science6.2ch.net/test/read.cgi/robot/1244172413/
ルール問題も盛り上がっています。元々 国内大会向けルールブックやQ&Aも抜けはあるのですが、書類審査段階でチェックできたから問題は起きなかったのでしょう。
ルールを徹底させるなら、各国の国内大会に審判を送り込んで、びしっと厳しくやらないと今回のようなことは今後もおこりえます。
アメリカ、ヨーロッパからの出場校を増やしていって、洗練された運営を目指していかなければならないでしょう。
Buckeyeさんご指摘の、タイ、韓国戦の審判結果はほんとひどかった。再試合で逃げたつもりでしょうが。
投稿: 剥げた化男 | 2009年8月27日 (木) 04時19分
続けてどうむすみません。
Buckeyeさんの写真が中国選手の手の動きをとらえてくれているので、いくらかわかるかもしれませんが、ほとんど変わってないですね。ビデオなら指の動きまでわかるはずですが、峠や林でもほとんど動かす必要がなかったのでしょう。
さあ 何回操作したのでしょうかね。
香港もノーミスだったから同じような動きだったのでしょうが、対豊橋戦での、林に入ってからの加速ぶりにそこが現れています。
放送の時にどう説明するのか?正直に言った方がいいと思うのですが。
投稿: 剥げた化男 | 2009年8月27日 (木) 09時22分
私の写真だと豊橋も指が動いているように見えないので、写真からだけではなんとも言えない気がします(枚数の問題はありますが)。
2ちゃんねるのスレッド、アチコチの大学のロボコン部など関係者が書いているようですね。書かれている内容や書き方からして、中国の手動マシンがほとんど自動制御だったというのは、それなりに信じてよさそうな気がします。推測だけではなく、二次情報程度の伝聞は根拠としてありそうです。
運営については、いらんところにカネかけて、コアな部分を削っちゃってると思うんですが……語り始めるとキリがなくなりそうなので、このあたりでやめておきます(^^;)
投稿: Buckeye | 2009年8月27日 (木) 11時13分
Buckeyeさん こんにちは。
そうですね。写真だけではなんとも。私も会場にいましたが、上の席からは、手元ははっきりわかりませんでした。
放送で手元のアップをお願いしたいところですが、あとは来月21日を待つといたしましょう。
噂では、ベトナムまでもが、手動ロボの自動化を図っていたとか。
予選リーグはいまひとつでしたが、決勝トーナメントは早かった。対中国戦はみごとでした。すがすがしい負けっぷりだっただけに、同じようなことはやってないと信じたいが。
投稿: 剥げた化男 | 2009年8月27日 (木) 13時41分