携帯用ヘッドホンアンプの製作-3(完成)
nabeさんの「高品質な低電圧ヘッドホンアンプ(単3×2本)」、オペアンプ1発の簡易型を単四3本用電池ケースに入れてしまおうという無茶な企画も、いよいよ最終段階。ケースの加工と基板外の配線に入る。
ここまで来たらやるっきゃないという感じで、ついつい、朝早く目が覚めてしまった(^^;)
■準備
まずは単四3本用ケース(スイッチ・リード付き)ケースをばらす。
●単四3本用ケース(スイッチ・リード付き)
左のスイッチが見えているところは、もともとプラ板でカバーされていた。
とにかくまずはバラす。
●バラした単四3本用ケース
バラしたあと、部品と電線を置いてみて、どんな具合に入れ込むのか、どんな感じで固定するのかなどを考える。ケースが狭いので、いつもは細く見える配線が意外なほど太くて通せなかったりする。現物を当ててみながらどこをどう通すのかを考え、配線が通る部品と配置を考えないといけない。
■イヤホンジャックの選定
イヤホンジャックはこれというのがなかったので、いくつか買ってきてある。どれを使うかだが、基板とOS-CON、スイッチ、イヤホンジャックを並べて検討した結果、基板取付用のイヤホンジャック(秋月で購入)を使うことにする。海神で買ったもの(「携帯用ヘッドホンアンプの製作-その2」の材料大集合の写真で並んでいるイヤホンジャックの左側2つ)も入るのだが、配線が通る隙間が不足しそうであきらめた。ジャックとしてはこちらのほうが高品質なのだが。材料大集合の右端にあるものはサイズ的に入らない。
なおジャックは出力用のみ。入力は3.5mmステレオプラグがついた線を外に出す形とする。あくまで携帯用に特化ということで。というか、ジャックを2つも付けるだけのスペースはとてもじゃないがないのだ。
基板取付タイプなら、スイッチとともに2.54mmピッチのユニバーサル基板に取りつける形として全体を固定できそうなのも○だ。
■ケース加工
次は、整形・穴開けなど。
●イヤホンジャックとぶつかる部分を削る
クラフトナイフでざっと削り、最後は彫刻刀(平刀)で底を平らに仕上げる。
●イヤホンジャックの穴を開ける
四ツ目のキリで穴をあけたあと、テーパーが付いた木工用ドリルを手で回して穴を広げた。最後はリーマ。これでイヤホンジャックの頭の丸い部分が入るようになった。なったのだが、その下のスイッチと並びがずれている。スイッチとイヤホンジャックは2.54mmピッチのユニバーサル基板に取りつけるつもりなので、これでは困る。仕方がないので、イヤホンジャック本体の形に合わせて穴をナイフで四角く広げる。ジャック側も、不要なでっぱりは削り落とす(下の写真の右側が削ったもの)。
●イヤホンジャックの加工
●イヤホンジャック取付穴の加工終了
現物あわせで少しずつ削り、スイッチとイヤホンジャックの足がほぼ一直線に並ぶようにした。
このほか、入力の2芯シールドが通る穴を開けた。ケース加工はこれで終了。
■電池用電極の加工
電極はケースについていたものを加工して使用。スイッチ部に近い電極にはスイッチにつながる金属板があったのでそれを流用。金属板は少し長すぎたのでカットした。
スイッチ部に近いところがマイナスとなるので、そこから順番にプラス、マイナス、プラスとなるように組み合わせる。重量バランスの関係から電池は両サイドに入れ、アンプを真ん中にするので、両側の電池間は配線で結ぶ。
■スイッチとイヤホンジャックの取付用基板の加工
スイッチとイヤホンジャックは2.54mmピッチのユニバーサル基板に取りつける。少し大きめにカットして、ナイフややすりで削って整形。ケースのスイッチ部にぴったりはまるようにする。ふたを止めるビスが刺さる支柱があるので、そこに当たる部分は丸く整形してこちらもぴったりはまるようにする。
■配線
これが大変だった……(T_T)
あっちこっちに線をつけていじり回している間に前に付けた線が切れるわ、ブリッジができてしまうわで……
最大の問題は、OS-CONを取りつける段階になってすぐ横にある抵抗のリードとショートする危険性があることに気づいたこと。基板配線図の右下、1μと10Ωの接合点とOS-CONのマイナス側が両方とも空中にリード線が浮くのだ。その隙間、取付部で0.75mm。しかもOS-CON側は空中に上がるにつれてリードが抵抗側に広がってくる(--;) OS-CONははんだ付け時にアルミのクリップではさんで熱を逃がしたいので、リードに被覆をしたくない。仕方がないので10Ωの片足をいったん取りはずし、配線の被覆に足を通してはんだ付けをやり直した。ここはどうしてもそういう処理が必要になる。10Ω抵抗を逆につけられれば(OS-CONに近いほうに抵抗本体を置いて基板の角に足をおろす)ショートの危険がなくなるのだが、抵抗本体をそう置くと0.1μとぶつかるのでダメなのだ。
単線のリードと違い、配線はより線。これがばらけたりするし(ねじってはんだ揚げしておいてもばらけるときはばらける。普通なら0.5mmあるランド間隔が0.1mm程度と目視ではすき間がわからないくらいしかあいていない。ちょっとばらけただけでとなりについてしまう)、他のリードに押しつけるようにして固定したくても力がかからないしでなかなかに面倒。手がせめて3本あればと思う場面も多々。そういうときは、小さな万力に基板をはさんで処理。もちろん力をかけたら基板が割れるので、ごくごく軽く押さえる程度にしめる。万力は机の上に転がしておいても、重さがあるのではんだごてをあてたくらいでは動かない。意外なほどに具合がいい。
そうそう、出力をジャックに配線しようとして、GNDの配線が足りないことにも気づいた。基板に穴はあるのだが、すでに付いている配線をいったんはずさないとGNDの配線を付けられない。そんなことをしていると、たぶん、またどっかに触ってブリッジができたりとややこしいことになってしまう。というわけで、GNDは電池側から持ってくることにした(手順を考えつつ、作業をしていたつもりなのだが、やはり、忘れてしまうケースがいくつかあって……)。
配線のポイントは、長さをギリギリまで切りつめること。スペースがないのだから、配線に余裕なんぞ作ったら空間が不足してしまう。現物あわせでギリギリを狙う。といっても、足りなかったら大変なので、神経を使う。配線の順番を間違えると、はんだごてが入らなくなりそうだし。
まるで3次元パズルをしている気分だった。
そうそう、OS-CONはリードを丸く湾曲させておき、回すようにさし込んで行く。リードがまっすぐなママではとなりの部品にぶつかって入らないからだ。固定すべきところまでさし込んだら、少し引っぱって基板とすき間を空け、アルミのクリップではさんでOS-CONに熱が行かないようにしてはんだ付け。その後、元の状態に戻す。
■完成!
途中、何度もどーなることかと思ったが、なんとか完成した。
●完成した携帯用ヘッドホンアンプ(内部の写真は画像クリックで大きくなります)
上側電池のプラスは、入力のラインの下、ケース底面を通り、ジャックの脇を抜けていったんOS-CON側へと回りこみ、スイッチへと配線(6Pスイッチの真ん中に付いている赤い配線)。
なお、この配線のすぐ上にはステンの細い針金がある。もともとのリード線が出ていた穴からわっかを出して、携帯ストラップでぶら下げられるようにするためのもの。私は、基本的に携帯オーディオを首から提げて使っているので、それと一緒にぶら下げられるようにしておきたかったのだ。
入力は細めの2芯シールド(OFC。2.5mmプラグがついていたラインをばらした)。ラインは左側OS-CONの下というか、丸いOS-CONと四角いスペースの角との間にできたすき間を通っている。そこからフタ側に上げてジャックとスイッチがついた基板の背面にそってふたのビス止め用の柱とケースのすき間にはめ込んで下に降ろし、ケース外に出す。はめ込んでいる部分がギリギリなので(けっこう力を入れて押し込んである)、ちょっと太いものにすると入らない(2.5mmプラグ付きで売られていたOFC2芯シールドは直径2.5mm、3.5mmプラグについていたのは直径3mmだった)。ここがはまらないとフタができない。
左側OS-CONの下側にあるすき間のもう片方はスイッチに向かう電源のライン、2本(赤・黒)を通してある。
右側OS-CONの下のすき間にはGNDラインが通っている。出力用を忘れたGNDラインは、下側電池のプラスから下側電池とケースのすき間を左に通して真ん中へと出した(白いライン)。
左側OS-CONの両サイドを通っている赤と白のラインは、右と左の出力。さすがにここまで下を通すのは無理だった。
OS-CONは倒しているが、これはもともと、ケースの高さが足りなかったからだ。2.5V 2700μだと本体だけでギリギリ。リード線を根元からすっぱり切らないと入らない(って、配線できなくしてどーする)。1000μに落としても、基板にぴったりつけたとして高さの余裕は0.7mm(ノギス大活躍のプロジェクトである)。基板背面の配線ができない。無理を承知でなんとか単四ケースに入れようと苦肉の策で倒したのだけど……そのおかげで上記のように配線をOS-CONとケースのすき間に通せたわけだ。しかもリードを湾曲させる関係で基板の外に向かってそれなりの長さのリードが出るのでクリップではさんで熱を逃がしつつはんだ付けができる(はんだ付け直後にOS-CONに触っても暖かく感じない)。結果として大正解だった。
スイッチの下、4つのホールの中央に見える黒いものは、もともと、スイッチ部のふたをとめていたプラの支柱。せっかくなので、少しでもがたつかないように活用させてもらった。
ケース反対側で両端の電池を結ぶ配線も、下手に余裕をもたせるとフタがしまらなくなる。なお、電池のマイナス側は根元ではなく、バネの先端近くにラインをはんだ付けしてみた。バネなんて、どう見ても抵抗が大きそうだったので(って、消費電流が2~3mAでバネの影響なんてあるのかよくわからないのだが)。
なお接着剤などはまったく使用せず、どこも単にはめ込んであるだけ(電池用の電極はもともとはさんで固定されるようになっているのできちんと固定されている)。それだけで固定されるというか、動いてしまうほどのスペースがないという状態。詰め込むのは大変だったが、詰めてしまえば意外にしっかりという感じでなかなかにいい。
●上面
●スイッチ部
もともとスイッチがついていたところなので、ON-OFFの表示がある(笑) もちろん、ON側でスイッチが入るようにしてある。
■その他
そうそう、基板が完成したとき、背面の写真を撮るのを忘れていた。
背面はこんな感じ。
●基板背面(画像クリックで大きくなります)
1.27mmというのはやはり狭い。3回ほどはんだでブリッジができてしまい、取りのぞくのに苦労した。こういう細かいものを作るなら、はんだ吸い取り用のラインを買ってくるべきだなぁ。
●LEDは付かなかった
最初の材料大集合を見るとわかるが、一応、LEDも用意した(その辺にころがっていただけなんだが)。でも結局、付けられるだけのスペースはなかった。つけるならここだろうと思っていた場所に置いてみたのが上の写真。完成品の大きな写真を見てもわかるのだが、ここは入力のコードが通っており、LEDが付くほどのスペースは残っていない。LEDっておっきいのね(^^;)
■音出し
完成したのでとりあえず音を出してみる。1箇所、付けるごとに目視と必要ならテスターも使ってよくよく確認してきたとは言え、試験もせずに全部組んでしまった一発勝負。接着剤などは使っていないのでバラすことは可能だけど、配線が極小パズル状態なので修正する気になんてとてもなれない。これで音が出なかったら、一から作り直すかあきらめるかの二者択一だろう。
携帯オーディオと何かに付属してきた安物のイヤホンをつなぎ、おそるおそるスイッチを入れてみる。
出た!
いや、なんというか、もう、ホッとしたの一言。あとはエージング。古い携帯オーディオを使って、しばらくかけっぱなしにしておこう。
今回、OS-CONに熱はかかっていないが、エージングというのは別にコンデンサだけでなく、はんだ付けとしたところとか、あらゆる部品、あらゆるところに影響するものなので。
●iRiver T60と完成した携帯用ヘッドホンアンプ
■製作に関する感想
作業中、頭に浮かんでいたのは、米粒にたくさんの文字を書く人の話(^^;)
なんと、米粒に文字とか絵を書いて売ってる人がいた。
正直な話、小さくするのがここまで大変だとは思わなかった。部品点数は少ないのだが、作業はやりにくいし順番間違えたら確実にアウトだし、遠くから見たんじゃこて先など細かい位置の調整ができないし近づいたら老眼で見えないしでかかる手間暇は膨大(^^;) 目のほうは、コンタクトをはずしておき、作業中はメガネもはずして対処。この状態なら10cmくらいでピントが合う。
なかなか具合よかったのが、先日たまたま見つけて買っていた拡大鏡付きスタンド、「ルミルーペ」。丸い蛍光灯の内側に大きめで拡大率低めのレンズと小さくて拡大率大きめのレンズがついているので、対象物を明るく照らしながら確認できる。ルーペで見ながらはんだ付けをするのはかえってやりにくそうだが、ブリッジの有無などはルミルーペで見ると簡単に確認できる。レンズの質は高くないが、照明と一体なのがいい。
●ルミルーペ
今回は歩きながらの使用を前提に「とにかく小さく!」が目標だったので単四3本用電池ケースに入れることを優先し、オペアンプ1発の簡易型にしたけど……単四4本用電池ケースならダイヤモンドバッファまで組みこむことも不可能ではなさそう。意外なほどスペースを食うのがスイッチとジャックだが、それは今回も組みこんである。つまり、単四3本用→単四4本用としたとき増えるスペース(単四1本の電池ボックス分+スイッチスペース幅×単四直径+単四電池間の仕切り板の厚み)は、すべて、ダイヤモンドバッファに使えるということ。直感的には、ギリギリ、なんとかなりそうに思う。今回のプロジェクトをスタートしたときの感覚と同じくらいなので、実際にやるといろいろ大変だろうし、最終的にダメかもしれないけど(今回も超ギリギリだったし^^;)
といっても、1.27mmピッチのユニバーサル基板で組むのはとうぶん、カンベンという気分。じゃあ、片面でいいから基板を自作? 1.27mmピッチで??? って、カンベンと言いつつ考えてどーする。だいたい順番としては、その前に据え置きでダイヤモンドバッファ付きのほうを作って音の違いを確認するんだよね。LME49721もまだ余っているし。ジャックなんかもちょっとよさげなのが余ってしまったし。
それにしても、今回、大変だった理由の一つに、30Wのはんだごてが30年以上前の年代物、つまりIC普及前のもので先端が太いってのもあったんじゃないかと。IC時代に入って登場した先細のはんだごては18Wしかなくて重なった部分だとはんだがうまく溶けないから(使ったオーディオ用はんだが少し融点高めらしいのも事態を悪くしたかも)配線をつける段階では30Wを主に使ったら、何回も、こて先がとなりに触れてブリッジができてしまった。20年以上、一度も使わない17Wのはんだごて、1本を捨てて(どうも使いにくいヤツで)、先が細い30Wのはんだごてを買おうかな。いや、別に単四4本用電池ケースプロジェクトを始めようっていうんじゃなくて、道具は大事だってことで。先日のUSB-DACもこの太いこて先にはちょっと悩まされたから。
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コメント
そういえば……LME49721が欲しいという方がおられるなら、1個500円(+送料)でお譲りしようかと思います。実はDigikeyから買ったとき、送料を払うくらいならと少し多めに買ったので(SOICなんて初めて使うので、はんだ付けで壊すかもと心配だったというのもあります)けっこう余るのです。Digikeyで1個417円なので、1個につき500円分の図書カードと80円切手を貼った返信用封筒を送っていただいたら、折り返し、LME49721をお送りするという形にしたいと思います。
欲しい方がおられたら、ブログ右側の下のほうにあるプロフィールからメールをお送りください。図書カードと返信用封筒を送っていただく住所をお知らせします。メールには、念のため必要個数をお書きください。もしかして複数の方から依頼があった場合、どなたかから2個分、3個分の図書カードをいただいてしまうと、最後のほうの方の分が足りなくなるおそれがありますので。
投稿: Buckeye | 2008年10月17日 (金) 19時40分
初めまして。ミリワットクラスのヘッドアンプを作ろうとしています。貴兄作製の本アンプはどの程度の出力でしょうか?また回路図のご提供は可能ですか?チップの在庫は未だありますか?
投稿: 沖永広海 | 2010年11月18日 (木) 23時18分
回路については、設計された方に聞かれたほうがいいと思います。この記事の最初、nabeさんの「高品質な低電圧ヘッドホンアンプ(単3×2本)」と書かれているところから飛べます。一応、飛び先のURLも貼っておきますが、たぶん、コメント欄はリンクが付与されないんじゃないかと……
http://nabe.blog.abk.nu/op-dbuf
LME49721は、たしか、まだ何個か余っていたと思います(今、仕事のほうが忙しくて探し出している時間がなく、確認できていません。週明けには少し余裕が出るはずです)。
必要なら、たぶん、お分けできると思います。最近はビスパさんあたりでも取り扱われるなど、国内通販でも買えるようにはなってるみたいですが。
投稿: Buckeye | 2010年11月19日 (金) 10時04分