2021年5月21日 (金)

『ふだん使いの言語学:「ことばの基礎力」を鍛えるヒント』

翻訳フォーラムシンポジウム2021の直前、帽子屋さんがこの本をブログで紹介したのでKindle版を買ってみました。ぱらぱらっと読んで……青くなりましたね。だって、これ読んだら、シンポジウムで私の話、聞く必要ないんですもん。そう言いたくなるくらい、かぶりまくりなんです。そんなふうですから、シンポでは、私も紹介する予定にしていました。時間切れでそこまで到達できませんでしたが。

ともかく。

翻訳者なら買いましょう。つべこべ言わずに、すぐ、買いましょう。全力でお勧めします。アマゾンの書評はいまいちですが、我々にはすごく有益な本です。

書かれているのは、文の部分同士がどういう関係になっているのかを解きほぐしていく手法。目の前にある文について検討したら、似て非なる文についても考えてみて、複数のケースを比較し、同じようになるのか違うのか、違っているならなにがどう違っているのかと考えを進めていくと、いろいろとわかることがあるわけです。今回のシンポジウムで私が語ったのがまさしくそういう話だったし、勉強会「日本語構文マラソン」でやっていたのも、要するにそういう話です。

検討する手法はたくさんあります。私がシンポで紹介したのはごく一部。本書には、もっといろいろ紹介されています。くり返し使って身につければ、「訳文をいじわるに読む」力が格段に上がること、請け合いです。

| | コメント (0)

2021年5月20日 (木)

翻訳フォーラム・シンポジウム2021~力のつけ方・のばし方~-参加御礼+α

翻訳フォーラム・シンポジウム2021~力のつけ方・のばし方~、300人超とたくさんの方にお越しいただきました。ありがとうございました。初めてのオンライン開催ということで、いろいろと不慣れな中、開催のお手伝いをしてくださったスタッフのみなさんも、ありがとうございました。

今回はオンラインだったので、人数の制約がない、遠方からでも参加しやすい(時差で大変だったようですが、海外から参加してくださった方も何人かおられました)などのメリットがある半面、スタッフ間の業務連絡も耳打ちですまず文章に書いて送らなければならないとか、参加者側の見え方が確認しにくいとか(スタッフ権限でアクセスしていると見え方が違ったりする)、思わぬところで手間がかかったりしましたが、大過なく終えることができたのではないかと思っています。

ツイッターに流れる感想を見ると、参加してよかったと多くの方に思っていただけたようです。主催者のひとりとして、ほっとしております。

たぶん、ツイートのまとめをどなたかが(^^;)作ってくださると思うので、それができたら、リンクなど、加筆しますね。

------2021/05/21加筆

ツイートのまとめ、mikoさんが作ってくれました。長大です(^^;) 最後のほうには、シンポについて書かれたブログ記事へのリンクも入っています。

翻訳フォーラム・シンポジウム2021 関連ツイートまとめ #fhon2021

------

この記事では、私が担当した部分を簡単に紹介しておきます。

» 続きを読む

| | コメント (0)

2021年5月 6日 (木)

翻訳フォーラム・シンポジウム2021~力のつけ方・のばし方~

昨年はコロナで開催をあきらめた翻訳フォーラムのシンポジウム、今年はオンラインで行います。今月16日の日曜日、朝10時から夕方5時まで、です。お題は「~力のつけ方・のばし方~」。ちなみに有料です。申し込みは(↓)から。概要もそちらに書いてあります。申込期限は5月13日です。

オンライン開催にはメリットとデメリットがありますね~。

メリットは、海外を含め遠くの人が参加しやすいこと。また、人数を制限する必要があまりないこと(すでに、例年ならとっくに満員御礼で締め切ってるはずの人数に達しています)。デメリットは、やはり、参加者間に距離ができてしまうこと。しゃべる側としては、会場にいろいろ尋ねて回答をもらいながらってやり方ができないところが気になります。

そんなわけで、開催する側もいろいろと初めての経験になりますが、鋭意、準備を進めています。

丸一日、頭が痛くなるくらいまで翻訳のことを考えてみましょう。参加をお待ちしております。

| | コメント (0)

2021年2月17日 (水)

『三行で撃つ』

「<善く、生きる>ための文章塾」と副題がついていることからもわかるように、文章の書き方の本です。対象読者として想定されているのは、一番にはプロのライターだけれど、ふつうに文章を書く人全般も視野に入っている、という感じです。

話はおもしろい。文章を書く人はこういうことも考えたりするんだなぁと勉強にもなります。

でも、翻訳に役立つかと言われると、微妙な気がします。

なにをどう切り取ってどう表現するのか。そこにかなりの比重が置かれているからです。たしかに、プロのライターをめざすならそこは大事。一番大事と言ってもいいかもしれません。でも、我々翻訳者の場合、そこは、原著者がすでにやってしまっている部分で、我々が手を出してはならないとも言える部分だったりします。

ライターさんは内容で勝負、我々は表現のみで勝負、ですからね。

こういうことを考えて原稿を書いてるんだと知れば訳文も変わる、という意味においては読んで損のない話ですし、だから、今回の記事も、一応は「お勧めする」側に入れているわけですが。

表現についても書かれています。書かれていますが、これまた、みずから書く人向けであり、我々は取り扱い注意かなと思うところもあったりします。

» 続きを読む

| | コメント (0)

2020年12月19日 (土)

「訳者あとがき」について

ふとしたことから「訳者あとがき」について人と話をする機会があり、そういえば、この話、あちこちでしてきているのにブログに書いていなかったなと気づいたので書いておきます。

ページ数やスケジュールの問題で訳者あとがきなしとなることも少なくないのですが、書いてほしいと編集さんに頼まれ、かつ、書く余裕があれば、書くようにしています。

書くときの方針は、「読者のために」です。

あとがきの場合、読者のためにといってもいろいろとありえます。私は、「この訳書を読もうという気になって、書棚からレジまで持って行ってもらえるように」ということのみを考えて書いています。

書籍が続くようになった2冊目で、最初に書いた訳者あとがきが、本文を読んでいないとわけがわからないもので(逆に、本文を読んでから読むならあれはいいあとがきだといまでも思うんですが)、編集さんから書き直しを求められました。「目次を見て、本文をぱらぱらとめくり、あとがきを読んで、買うかやめるかを決める読者がそれなりにいる。そういう人も念頭に置いてほしい」と言われて。

目から鱗でした。私にとってあとがきは、必ず「あと」に読むものでしたから。

以来、本文を読んでいない人に「これはおもしろそうだ」と思ってもらうことを目標に訳者あとがきを書くようにしています(自分がおもしろいと思っている本を読んでもらうのは、読者のためになることだと思うので)。

» 続きを読む

| | コメント (0)

2020年10月 1日 (木)

『Coders(コーダーズ) 凄腕ソフトウェア開発者が新しい世界をビルドする』

コードとかプログラムとか言われるものと無縁の生活をしている人はほとんどいないでしょう。職場でコンピューターを使う人や自宅にコンピューターを持っていて使っている人も多いですし、スマホでLineやFacebookを使っている人はもっと多いでしょう。いまだにガラケーという人も、ショートメッセージなどは使っているはずです。ゲーム機でゲームを楽しむのも、そのゲーム機に対応したコードがあるからできることです。

便利なアプリやおもしろいゲームにはまり、気づいたらびっくりするほどの時間を取られていた、なんてこともよくあります。ある意味、我々の生活は、いま、コードに支配されていると言ってもいいでしょう。

本書は、そのコード、コンピューターのソフトウェアを作る人々(コーダー)に焦点を当てたものです。

■Coders(コーダーズ)

話は、いまのようなデジタル式コンピューターが登場したころに始まり、どういう人がなぜコーダーになり、どうコーダーの世界を作ってきたのか、基本的に時系列で紹介されていきます。

当初、女性が中心だったのはなぜなのか。それがなぜ、どのような経緯で男性中心になったのか。ソフトウェアは規制と相性が悪いように見えるが、どういう経緯でそうなったのか。どういう人がコーダーに向くのか。実際、どういう人がコーダーになっているのか。ソフトウェア業界は能力主義で、実力だけが物を言う世界だと言われているが、それは本当なのか。などなど。

当然、たくさんのコーダーが登場します。こう言うとなんですが、わりと普通っぽい人から、一癖どころか二癖も三癖もあるような人まで。

そういう仕事をしている人や、そういう人が身近にいる人が読めば、ああ~、こういう人いるいる、こういうことあるあると思ってしまうこと、まちがいありません。

私自身、学生時代はプログラミングのバイトをしていて(某上場企業のシステム開発に携わったり)、ソフトウェア会社に就職するのだと学科の友だちに思われていましたし、いまも、翻訳に使うツール(それなり規模のソフトウェアです)を作って公開しているくらいなので、自分にも当てはまる話もいろいろと出てきて、楽しく仕事をすることができました。

ちなみに、翻訳者っていうのも、コーダーにわりと近い人種な気がします(^^;)

また、帯にも書かれていますが、いま、ヨノナカに広く提供されるサービスはコードという形を取ることが増えています。これをどういう人が作っているのか、そのせいでどういうサービスになりがちであるのか、そのあたりを知らなければビジネスが成り立たないとか、そのあたりを知っているか否かでビジネスの成否が分かれるといったことも少なくないでしょう。

■帯

 

コンピュータープログラムなんてわからなくても本書は読めます。プログラムそのものはほとんど出てきませんし、たまに出てくるときは、ちゃんと説明がついています。

現代を生きる基礎教養として、読んでおいて損のない1冊だと思います。

今回、訳者あとがきは書いていないので、裏話的なことだけ、少し。

» 続きを読む

| | コメント (4)

2020年9月12日 (土)

トークイベント「英日翻訳に役立つ日本語学習のヒント」

日本語教育の研究も実践もされている横田亜朱紗さんを迎え、駒宮俊友さんが行われたトークイベント「英日翻訳に役立つ日本語学習のヒント」を聞いてみました。

こういう話、大事です。日本語の勉強って大事なのにやってる翻訳者が少なすぎると私は思っているので、このブログでも、日本語の話ばっかりしていたりするわけです。私自身、ここ20年、英語より日本語の勉強をしている時間のほうがず~っと長かったりしますし。

内容としては、例として、似て非なる表現の違いをいくつか取り上げ、そのあたりが解説されている本などが紹介されたりしました(↓)。また、少納言・中納言などのコーパスも簡単に紹介されました。

この部分で紹介された本、とりあえず、持っていなかったものは買ってみました。類似表現の使い分け辞典みたいなものはあんまりなかったりするので、ちょっと楽しみだったりします。翻訳の現場でどこまで使えるか、届いたら使ってみたいと思います。


■『くらべてわかる日本語表現文型辞典』

『くらべてわかる日本語表現文型辞典』は類似表現の使い分け辞典という感じで、かなり使えるのではないかと期待しています。

■『基礎日本語文法』

こちらは、いわゆる文法書。すでに持っているものがあるなら、とりあえず、買う必要はないかもしれません。私は、一応、持ってますが……あんまり参照した記憶がありません(^^;)

ちなみに、Sakinoさんは、『日本語の文法 』をよく参照されてます。

 

» 続きを読む

| | コメント (0)

『知覚と行為の認知言語学:「私」は自分の外にある』

これはいい。おすすめです。私は、あとでまた読む本、くり返し読んで考える本の棚に置くことにしました。

■『知覚と行為の認知言語学:「私」は自分の外にある』

去年、翻訳フォーラムのシンポジウムで「日本語は人がにじみやすい」という話をしたら、目からうろこだったと言われたので、以来、そこここで語るようにしています。なのですが、みんな、意外に気がついていないということは、もしかすると、私の思い込みにすぎないのではないかという懸念も感じてきました。

どうやら、そういうことではなかったらしいと安心させてくれたのがこの本です。

というわけで、この「人がにじむ」とはどういうことなのかと興味を持った方がおられたら、本書を読んでみることをおすすめします。

» 続きを読む

| | コメント (0)

2020年9月 6日 (日)

翻訳フォーラム公開セッション@日本通訳翻訳フォーラム関連のまとめ

先日8月25日に行った翻訳フォーラム公開セッション@日本通訳翻訳フォーラム、ピークで600人近い方に聞いていただいたし、その後も、JITF2020のチケットを買ってある人はアーカイブで見られるので、ツイッターなどに感想がたくさん書かれています。そのまとめができたので(mikoさん作)、メモしておきます。

ブログ記事として感想などを書いてくださっている方も何人かおられます。

ふだんはリーチできない通訳系の人も含め、多くの方になにがしかの刺激を届けることができたようです。

| | コメント (0)

2020年9月 4日 (金)

明示的に書かれていること・暗示的に書かれていること ―― 補足

昨日のエントリー、「書かれていること・書かれていないこと vs. 明示的に書かれていること・暗示的に書かれていること」で書き漏らしたことがあるので、書いておきます。

なにを明示的に書き、なにを暗示的に書くのか、それを切り分けるポイントとなるのは、昨日のエントリーに書いた「読者が持っているはずの知識・常識」以外にもいろいろとありえます。なかでも我々翻訳者に大きく関わるのが、言語による違い、です。

(このあたり、なんどかブログで取り上げています。ただし、それらを書いた当時は、明示的・暗示的という書き方の違いだという認識はありませんでした。この記事と、ここからリンクを張っている過去記事とを読み比べると、いま、一般的に言われたりしていることが、明示的・暗示的という考え方で整理できるということがわかるのではないかと思います)

『わかるものを省略』と『必要なことを言う』の違い」では、日本語とは、もともと、「必要なことだけを表に出す」言語で、基本的な考え方が英語と大きく違うと指摘しました。

» 続きを読む

| | コメント (0)

«書かれていること・書かれていないこと vs. 明示的に書かれていること・暗示的に書かれていること